プロローグ
初投稿です。
かなり拙いところがあるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。
「キタコレ!!!!!」
自分の現状を理解した途端、私は思わず大声を出してしまった。
幸い周囲には誰もいない、どころか自分の寝室。それも夜も明けきらぬほどの早朝である。
よってその声を聞いたものは誰もいないはずだ。多分。
私は声をあげた勢いそのままにばっと身を起こし、先ほどの夢の内容、そして今まで見て来た要領を得ないはずだった夢の内容を思い起こす。
夢で見たのはなんてことはない、自分の今までの人生を振り返るものだった。
そう、なんてことはないはず。
それがおよそ20年の時の流れであり、自分が若干6歳でさえなければ。
私、マリアはかつて「麻梨亜」であった。
住んでいたのは日本。しかしここはソルディア王国、の中のラダル村である。
この世に生を受けてたった6年という年月しか経っていないが、20年分の記憶、知識、経験を取り戻した私には、今の状況が理解できた。
理解できてしまった。
そして…興奮した。思わず気持ちが声に出てしまうほどに。
「え、え、え、ちょっと待って、これってあれ?あれなの?異世界転生ってやつ?まじで?ほんとに?この前世は特になんの取り柄もなく平々凡々と暮らしてきた私が?」
私は恐怖ではないらしい感情により打ち震える自らの身体を抱きしめて、さらに思考をめぐらせる。
今まで見てきた夢は、私が覚えている限りの幼い頃から徐々に成長していく、いわば自分の成長アルバムを見せられているようなものであった。さらに言えば、それはまだ自分のことであると自覚していなかったために、なんだこの見知らぬ世界とつまらん女は、とすら思っていた。
「我ながらなんて普通の生活をしてたんだ…いや普通であることが幸せなのか…?いやでもなぁ…」
自身を抱えていたその手を思わず頭に移動しつつ、さらに思考を重ねる。
そして今日、つい先ほどまで見ていた、全てを思い出すきっかけとなった夢はその人生の最後を映していた。
つまり、自らの死。
重く沈む身体。
苦しみもがく手足。
口から吐き出されるのは気泡。
心なしか動悸が激しくなり、息苦しくなってきたのを深呼吸することで落ち着かせる。
溺死なんて数ある死因の中でも苦しさでいったらかなり上位…のはずだ。それを思い出すことは苦痛以外の何物でもない。
つらい。苦しい。寒い。
しかし今はそれどころではない。
死の恐怖すら、今の私の前には瑣末な事。
過ぎ去った過去なのだから。
忍び寄る寒気を腕をさすることで誤魔化し、その先に思考を至らせた。
その先とは、「麻梨亜」ではなく「マリア」のこと。
これだけはっきりとした記憶があれば、やはりこれは異世界転生。そうだろう。きっとそう。絶対そう。
「きた、んだよねコレ…?」
そこで起きぬけの発言に戻るわけである。
私は昔からファンタジーというものが大好きだった。自分が住む世界にはない、剣と魔法、ロマンあふれる世界。そういった本や漫画を読むのが好きで、登場人物達に感情移入し、憧憬の念を抱くことは欠かせない。だからこそ、そういった世界が良い面ばかりではないことも分かっているのだが、私は期待に胸を膨らませざるを得なかった。
なぜなら――――
「これ、私が主人公フラグじゃね…いやそうでしょきっとそう絶対そう…!」
異世界転生といえば、その当人は何かしらのトラブルに巻き込まれたり巻き起こしたり時には首を突っ込むのが定番。
よって私は夢を見た。
というかむしろ野望。
すなわち、自分はこのファンタジーな世界において主人公になれるのではないかと。
ご読了ありがとうございました!