書籍化作家と不人気作家の決定的な違い(2)
さて昨日の内容を書いて仕事に行って、仕事中に「あれ私見と言っても不遜すぎやしないか?」などと思ってあわあわし始めたのですが、ここまで書いて今更引っ込めるのもアレなので、毒を喰らわば皿までの精神で続きを書こうと思います。
あくまでも私見ですからね!
考えの押し付けじゃなくて、使えると思った人だけ使ってもらえばいいやつです、はい。
というわけで、続きです。
「期待を煽る」とは、具体的にどういうものか。
これは『火村くん』にも書かれている通り、読者に「面白そう」と思わせることだと考えています。
「面白そう」が期待を煽るで、「実際に読んで面白い」が期待に応える。
一般に小説を書く人は職人気質なので、「実際に読んで面白い」ばかりを意識して、「面白そう」を軽視する傾向にある。
まあ、ここまではいいでしょう。
……いや、この「面白い」という単語を使うことにも問題はあると思うのですが、ひとまずここではこの単語を使っておきます。
で、もう一歩踏み込みます。
「面白そう」って何だ。
どうしたら「面白そう」と思ってもらえるのか。
僕はこれは、「読者に内容を妄想させること」が要件であると、ひとまずは結論付けています。
そして、その「読者が妄想した内容がすでに面白い」というのが、「面白そう」です。
こんなエッセイなんぞを見ている作者さんは、「小説家になろうでは『タイトル』と『あらすじ』が大事」というのは耳にタコができる、いや目にタコができるぐらいによく目にしていることでしょう。
この話はその派生で、「タイトルをパッと見ただけで読者が反射的に作品内容を妄想してしまい、その妄想した内容がすでに面白い」という話になります。
例を出してみます。
『勇者と魔王』というタイトルの作品があったとしましょう。
僕らが読者であったとして、この作品タイトルから、どういう作品内容を連想するでしょうか。
もちろん、人それぞれ想像するものは違うと思います。
それまでその読者がどういう人生経験を積んできたかなどでも、このタイトルから想像する内容に違いは出てくるでしょう。
この点で、小説家になろうの読者の多くが「どういう人なのか」という把握が必要になってきます。
僕はなろうでウケている作品の傾向から、なろう読者の多くはRPGゲーマーであり、アニメ・漫画・ゲームオタクに分類される人たちなのではないかと予想しています。
僕もこの分類に属する人間なので、把握は比較的楽です。
自分を基準に考えられます。
僕だったら、『勇者と魔王』というタイトルから、まずドラクエ的な格好をした男勇者と、頭に角の生えた顔色の悪い美形の人間型男魔王とを連想します。
そしてこの二人が目の前で対峙している絵が浮かび、話の内容としては、この二人が衝突するシリアスな話を連想します。
次、二個目です。
『女勇者と魔王』というタイトルだったら、どうでしょう。
こうなってくると僕は、途端に恋愛方面の話を連想しはじめます。
すったもんだした挙句、最終的に女勇者と魔王が結ばれそうな気がします。
三個目。
『女勇者に襲われる魔王』だったらどうでしょう。
こうなると僕は、一気にコメディ系の話を連想します。
善良で大人しい魔王が、はっちゃけた女勇者に追い回されるような、ラブコメ系のドタバタな話を妄想します。
四個目。
『女勇者と魔王が結婚して武器屋を始めるようです』ならどうでしょうか。
このタイトルだと僕は、なんやかんやあって女勇者と魔王が結婚して仲睦まじい夫婦となって、どこかの街でひっそりと素朴な武器屋を営んでいる絵が浮かびます。
正直、話の筋が浮かびませんが、それゆえに「これ一体どういう話になるんだ?」という興味と期待感が湧いてきます。
でも勇者と魔王なのですから、普通の武器屋の店主のそれとは一味違った物語が展開されるんだろうなぁとは思いますし、それを期待します。
トラブルに巻き込まれて主人公TUEEEE!するようなワクワク感もあります。
さて、以上四つ見てきましたが、皆様はこれらのタイトルから、どのような物語を妄想したでしょうか?
どのタイトルの作品を、一番読みたいと思いましたか?
僕の見立てでは、こういった部分の重要性を強く意識している方が、書籍化作家さんには多い気がします。
「読めば面白い」じゃなくて「読む前から面白い」を意識しているわけです。