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RPGとなろうファンタジー

 RPGツクールを使ってフリーゲームのRPGを作った経験のある身からすると、なろうファンタジー的なRPG風の物語って、最も理想的な展開をしたときのゲームの面白さを疑似体験的に伝えられるという点で、優れているなと思ったことがある。


 RPGのゲーム的な面白さを考えていくと、プレイヤーがこういう行動を取って、こういう展開になったときに一番面白くなる、というような面白くなるパターンみたいなものに集約するようにゲームバランスを組んだりということを考える。


 例えば、ダンジョンの途中でMPが切れそうになって、ほうほうのていで街に逃げ帰るとか、あるいは油断してノリノリで進んでいたら不意打ち的に大ダメージを受けて死にそうになってひやひやするとか、とにかく「プレイヤーの心が動く」ようにバランス設計を考えたりする。

 プレイしているときに「うわっ」とか「よしっ」とか「頼むっ……!」とか、プレイヤーが無意識的に口に出してしまうようなゲームは、プレイヤーの心を動かしている証左で、優れたゲームだと思っている。


 ところがこのバランス設計が紙一重で、ひやひやしてほしいだけのところが、実際には間違って死んでしまったり、ギリギリで街にたどり着いてほしいところが、たどり着く前に死んでしまったりとか、そういう計算ミスとも言えない、プレイヤーの技量とかその時の運によるものとかで、デザイナーの想定設計通りに展開が進まない可能性があり、まあそういうものも含めてゲームの面白さではあるんだけど、やっぱり本来の想定通りに進んでくれるパターンが一番ゲームを「楽しめる」ようになっている。


 ことに、これを一筋の物語にしてしまえば、プレイヤーの行動も乱数もすべてをデザイナー(作者)が支配できるわけで、「一番面白いパターン」をダイレクトにプレイヤーもとい読者に疑似体験させることができる。


 ただ、どうしてもヤラセ感が拭えないとか、読者が意思決定をしているわけじゃないから実際にゲームをやっている場合とは受け手の感触も違ってくるだろうし、それに小説という媒体は、細かい数字を扱うのに向いていないというのは、以前に何作か失敗してよく分かったこと。


 RPG風の物語をやる際に、数字をガチで扱うのは、相当難しいと思う。

 できないとは言わない。やり方次第という気はする。でも確実に、それ専用のテクニックが必要になる。

 例えば『なれる!SE』でIT関連の用語が全く分からなくても、何となくその部分を読み飛ばしつつストーリーの本筋を読めてしまうみたいな、ああいう構造が必要なんだと思う。


 それよりも、RPG風の物語でもっとシンプルに受けやすいと思うのが、ビジュアル、絵的な表現を前面に押し出したもの。

 小説はビジュアル表現に向いていないというけれど、でもその場面の絵が想像できない文章って、それこそ文字や概念を追いかけているだけになって、ライトノベルとしてはしんどいのだと思う。

 読者のタイプにもよるのかもしれないが、左脳(言語脳、論理脳)に働きかける文章よりも、右脳(イメージ脳)に働きかける文章のほうが、受け入れられやすいような感触。


 ファンタジーRPG好きの世代にとって、自分がファンタジー世界の中に入ったような体験ができるというのは、それだけでワクワクするもの。

 剣を振るう、魔法を使う、モンスターと戦う──自分がそれをやっているのだと想像すると、すごくテンションが上がる。

 多分、ファンタジー作品の面白さって、そういう憧れ的なものが強いんだと思う。


 あと、『スカイリム』のような超ビジュアルのファンタジーRPGが発達しても、物語作品の強みっていうのはあって、それはゲーム内キャラクターとのインタラクティブ性というか……インタラクティブというのは正しくないんだけど、こちら(主人公=読者)がかけた言葉に、ゲーム内もとい物語内のキャラクターがそれに応じたオリジナルな反応を返してくれるところ。

 これはMMORPGのようなゲームでは不可能(NPCの向こう側に中の人を常備するとかしないと)。


 つまり、可愛い美少女キャラクターがあなたの言葉に対して、あなた一人のために反応を返してくれますよ、というのが売りの一つになる。

 本当はあなた一人のためにっていうのは全然正しくないんだけど、主人公に感情移入している読者の受け取り方としては、そんな感じになると思う。


 あと、これもRPGとの親和性なのだけど、RPG(MMO的なものは除く)って根本的に接待的なゲーム。

 最終的には、プレイヤーが気持ちよく勝たせてもらえるように組まれている。

 まあRPGに限らず、非対戦型のゲームってだいたいそうなっているはず……クソゲーでなければ。


 難易度っていうのは、プレイヤーの技量によってどのぐらいが「気持ちよく勝てるか」っていうのが違ってくるので、誰に向けたゲームかというだけの話で、接待的という本質は変わらない。

 難易度が緩すぎるゲームは、技量の高いプレイヤーにとっては退屈で面白くないものになる。

 ちょうどよく、気持ちよく勝てるバランスっていうのが、個々のプレイヤーによって変わってくるという話。


 で、これがなろうテンプレとよく似ている。

 主人公が気持ちよく勝てるという構造が、読んでいての気持ちよさの本質になっている。


 だから、バトルしているからといって主人公最強モノをバトル物(=ピンチが必須)として捉えると、大きな勘違いになる、と思っている。

 主人公最強モノは、とにかく主人公が気持ちよく勝つことが大事、だと思う。


 そんなの面白いのか、というと、毎日1話3000文字ぐらいを読む想定なら、ファンタジー世界に疑似体験的にトリップするワクワク感と相まって、面白いと言って差し支えないと思う。

 ただ、書籍とか途中から読み始めたとかで十万文字規模を一気読みとかなると、食傷する気はする。


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