表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/98

四月六日――――朝~階段~

 ピピッ――ピピッ――ピ――目覚まし時計のアラームを止めて目を明けると、いつもの見慣れた天上が在った。……が、電気は付けっ放し。そっか、昨日電気消す気力すら残ってなかったもんな。

 寝すぎた為でか、少し痛む体を起こしてリモコンで部屋の電気を消した。首を左右に軽く倒すと、コキコキという音が鳴る。

 正直起きているのがだるかったのでもう一度ベッドに横になった。


 コンコン。


 すると、扉の向こうから控えめなノックの音。また飛鳥あすかさんかと思っていたが、扉の隙間から顔を覗かせたのは、


圭兎けいと君、朝ですよ」


 稟香りんかさんだった。

 昨日の事が、頭の中を支配する。忘れたくても忘れられない思い出になりそうだ。……いや、忘れたくは無いけどさ。

 あんなに可愛くて色っぽい稟香さんは、初めて見たから。初めて見せてくれた表情だったから。


「圭兎君?」


 おっと、返事をするのを忘れてた。

 上体をバッと起こし、「今行きます」と言ってベッドから降りた。……が、稟香さんは部屋を出て行く様子は無い。


「圭兎君……昨日の事、本気ですから」


 面と向かって、そんな事を言われた。その件についてはあまり触れたくなかったが、そういう訳にも行かないのだろう。


「……俺を振り向かせるんですよね? 頑張って下さい」


 俺が言うのもどうかと思ったが、それは置いておいて、稟香さんの頭の上に軽くポンっと手を置いて部屋から出た。稟香さんが後ろから小さな溜め息を吐いていたが、気にしない事にしよう。

 階段を下りていると、不意に「圭兎君」と呼び止められた。


「はい?」


 振り向こうとしたが、それは不可能だった。


 稟香さんが、抱きついて来た。


 階段の上で。


「はっ、えっ!?」


 当然の様に動揺する俺に、稟香さんは一段上から俺に抱きついて優しく言う。


「本当に、大好きですよ」


 不覚にも、顔が赤くなってしまったかもしれない。ただでさえこんな事を言われたのに、それに加えて……俺の背中に押し当てられた女子特有の『アレ』がヤバい。

 これは危ないぞ。いろいろな意味で。

 後、ここが階段っていうのが危ない。一歩間違えれば落下。


「……ちょ、待って下さい。一旦落ち着い――」


 落ち着いて離れましょう、と言おうとしたところで気付く。稟香さんに口で何を言おうと、意味は無いのだ。こうなったら強硬手段しか……。


「り、稟香さん……」


 少し無茶だが、後ろを向こうと思って体を反転させた――


 ――かった。


 俺が振り向くと同時に稟香さんが腕を離したので、意表をつかれた俺はかかとを階段から踏み外してしまい……そのまま頭から落下。


「け、圭兎君!?」


 驚き狂った声が上の方から聞こえた。

 くっそぉ、俺がイヤラシイ事を考えたからか! 天罰なのか! ……だが、これだけは言える。


 我人生に、一遍の悔い無し!!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ