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四月六日――――深夜

「……っ!」


 慌てて稟香りんかさんを引き剥がした。失礼な行為だったかもしれないが、それ以前に今の状況に頭がついて行っていないのだ。


圭兎けいと君……私……圭兎君の事が……」


 稟香さんはベッドの上にへたり込んで、俺と目を合わせた。こんなに魅力的な表情を見るのは初めてだったので、否が応でもドキドキしてしまう。

 反則だ……いつもは冷たく接するくせに……こんな事されたら嫌でも意識しちまうだろ……。






「圭兎君の事が……………………………………好きです」






 人生で初めての告白は、姉弟からだった。

 姉弟とは言っても、血の繋がっていない義姉ぎし。それでも、告白と言うものは……予想以上に、ドギマギした。


「ちょ、ちょっと待って下さい。俺達は……姉弟ですよ? それに、何で俺なんですか?」


 もう頭が真っ白になって、何を言えば良いのかも分からなくなって……咄嗟に口をついたのがそんな言葉だった。


「……それは失礼ですよ、圭兎君。……でも特別に教えてあげます。

 私が圭兎君を好きな理由は……何にでも一生懸命なところです。今回の私の件に関しても……今までの事に関しても」


 い、今まで? 俺何かした? それに、今回の件だって俺はあの人にムカついたからそうしただけで……。


「圭兎君は……いつも、私達に優しくしてくれて……。好きになるなって言う方が無理な話なんですよ?」


「稟香さん…………俺は…………」


 何とか搾り出す様にして出た声が、稟香さんの指に制止されてしまう。

 稟香さんが自分の右人差し指と中指の腹を俺の唇に押し当てたのだ。たったそれだけの事で、こうも心臓が高鳴るのは何故なんだ……。



「返事はしちゃダメですよ……まだ。圭兎君が何を言おうとしているのか、姉弟だから分かってしまうんです……だから、まだ言わないで下さい。

 いつか……近い内に絶対、私の事を好きにさせますから」



 稟香さんは見る者を虜にしてしまうかの様な笑顔を浮かべて、俺の唇から手を離してベッドから降りた。

 クルリと身を翻して、部屋から出て行こうとする稟香さん。不意に「圭兎君」と、名前を呼ばれた。


「責任取って下さいね? ファーストキスだったんですから……」


 振り返らずにそう言って、稟香さんは俺の部屋から出て行った。パタンという音だけが部屋中に響き渡る。


(何で……何でこんなにドキドキしてんだよ……あの稟香さんだぞ? きっと明日になったら「冗談です」って言ってくれるはず。

 ……いいや、冗談でキスなんてするか……。じゃあ、本気なのか? 本気で俺の事が………………好き?)


 大きく首を横に振って、そのままベッドの上で仰向けになった。右腕を顔の上に置いて、光を遮る。もう電気を消す気力すら、残っていない。


「どーしてこーなったんだか……」


 静かに目を閉じると、眠気はすぐに俺を襲って来た。

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