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四月九日――――夕方~屋上~

「圭兎……アレは……」


 飛鳥さんが大観覧車の電光掲示板を見て、目を丸くしている。まぁ、それもそうだろう。企画した俺ですらメチャクチャな程に驚いているんだから。

 まさか、ここまで凄い物だとは思っていなかった……。


「俺達からの、誕生日プレゼントです。……飛鳥さん、お誕生日おめでとうございます」


 飛鳥さんに向き直ってそう言うと、彼女は一瞬だけこちらをチラッと見て、すぐに俯いてしまった。……うっ、やっぱりこういうの嫌いなのか。

 流石に俺も自分の誕生日にここまでされたら嬉しさ通り越して引くかも――



「圭兎ぉぉ~♥」



 ――しれないってえええええええええええ!!!???

 俺が今回のサプライズを悔やみ始めていたら、飛鳥さんが急に抱きついて来た。待て……何だこの状況は……!


「あ、あ、あ、飛鳥さぁん!? ななな、何をっ!?」


 上ずった声で必死に呼びかける。何だこの胸に当たる柔らかな膨らみは……! 決して人体の物とは認めない!


「やっぱり、圭兎は分かっててくれたのかぁ……アタシが本当はこういうサプライズが大好きだって事♥」


「……へ?」


 だ、大好き? 何だそれ?


「もう……今更隠さなくても良いんだぞ♥アタシがこういうの好きって言ったら何かガラじゃないから隠してたのも、圭兎はお見通しだったんだろう?」


 ガラじゃ……ない……だと? 待て。それを言うならいつもの凛としている飛鳥さんはどこだ。こんなに……その……なんて言うか……か、可愛い飛鳥さんは飛鳥さんじゃない!


「いや、ちょっと! 俺は別にそんな事情は知らなかったですよ!」


 慌てて引き剥がすと、飛鳥さんは一瞬だけ驚いた顔をして、すぐにまた幸せそうな笑みを浮かべ――、



「運命だなっ♥」



 ――抱きついて来た。

 待てええええええええええええええええ! 何だこの展開は! 何でこんなラブラブシチュエーションを病院の屋上でやっているんだ俺達は! 落ち着け! 何でこうなったのか、冷静に分析してみろ、橋﨑圭兎っ!


 飛鳥さんの誕生日を祝った→飛鳥さんが壊れた。


「俺の所為だあああああああああ!!! もう良い! いっそ殺せ! こんな飛鳥さんにさせてしまった俺をいっそ殺せええええええ!!!」


 大絶叫の俺を前に飛鳥さんは、さもこれがいつも通りとでも言わんばかりの表情で、


「??? 何をそんなに騒いでいるんだ? ……それより圭兎っ、ハネムーンは――」


「――嫌だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 何でもうハネムーンの話してんの!? 俺達まだ付き合ってすらいないよね!?


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 飛鳥さんが大分(と思いたい)いつも通りに戻ってくれた(と思いたい)ので、とりあえず話を聞く事にした。


「さっきのは全部冗談ですよね?」


「ハネムーンはどこに行きたい?」


「サプライズに驚いちゃっただけですよね?」


「アタシはハワイが良いんだが、圭兎はどうだ?」


「一瞬の気の迷いですよね?」


「式はどこで挙げようか?」


 会話に……なってない……っ! 質問に質問で返されてる……!


「何で……俺なんだ……!」


 苦々しげに一言呟くと、飛鳥さんは俺の手を握って、優しく言った。


「圭兎、そんなに自分を卑下するな。お前の良さを、アタシは知っている……だからアタシ『達』はお前が……圭兎が好きなんだ」


「っ!?」


 突然の事に、頭が追いつけない。好き? アタシ……『達』?


「ま、待って下さい……。俺は飛鳥さんに何かした覚えは――」


「そこだ」


「――え?」


 飛鳥さんが手をキュッと少しだけ強く握ったのが伝わる。


「お前は自覚の無い内に、アタシ達に多くのものを与えていたんだ。それにアタシ達は気付いているから、だからこうして自分の想いを伝えているだけなんだ」


 そして一呼吸、間を取ってから――




「圭兎、三年前の『あの日』からずっと好きだった」




 ――自分の想いを口にした。


 ちゅっ。


 頬に、柔らかな感触が伝わる。


「覚えておけ――」


 飛鳥さんは俺の頬から唇を離し、恥ずかしそうにはにかんで、


「――アタシは優しくされると落ちる……単純な女の子だ」


 と。

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