四月九日――――夕方
時刻は十六時。丁度飛鳥さんが部活を終えた頃だろうか。こちらの準備は万全。後一つ……心配点を強いて挙げるとすれば……。
「嫌い……なんだよなぁ」
そう、飛鳥さんはこういった大きなサプライズを好んでいないのだ。前に一度……去年だったかな。稟香さんや咲紀さん、千春と一緒に飛鳥さんの誕生日をサプライズでクラッカーとかを用意して祝ったところ、あまり好感触ではなかった。
それに、後々聞いてみたところ、はっきりと「嫌いだ」と言っていた。
「いやいや、大丈夫。喜ばせる事が目的じゃないだろう橋﨑圭兎。今回の目的は気持ちを伝える事だ」
自分の気持ちを説得して、何とか納得する。そうだ。別に喜んでもらう為にやってる訳じゃないんだ。自分の気持ちをきちんと伝えて、それで喜んでもらえたらそれは飽くまでもオマケ程度。もちろん、喜んでる顔は見たいけどさ。
それじゃ、いっちょやってやりますか――!
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それから数十分後、病室の窓から外を眺めていると、長い髪を後ろで結わえて爆走しながら院内に侵入……いや、突入している女子高生がいた。
「………………」
まさかとは思いつつも、少しだけ待ってみる。玄関から俺の病室までは走ったら一分もかからない。つまり、一分以内にこの病室の扉がノックされれば――――コンコンッ――――爆走・飛鳥さんがやって来てしまった。
少し強いノックの音が聞こえて来た瞬間、何とも言えない緊張に包まれる。上ずった声で「ど、どうぞ」と言うと、勢いよく扉が開いた。
「ちょ、調子は……はぁはぁ……どうだ?」
「お、おかげ様で大分良くなりました」
まるで変質者……いや、走り疲れたマラソンランナーかの様にして病室にやって来たのは、案の定飛鳥さんだった。
「そ、そんなにアタシと……はぁはぁ……一緒に、はぁ……居たかった、のか?」
息も絶え絶えにちょっとニヤけながら訊いて来る飛鳥さんに、少しばかり恐怖を覚えた。
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「で? 屋上になんて連れて来てどうしたんだ?」
「い、いえ……えっと……その……」
「何だ、はっきりしない男だな」
うぐっ……何かそれこの間咲紀さんにも言われた気がする。意外に傷付くんだよね……それって。
「まぁまぁ……」
もうここまで来たら隠す必要は無い――もったいぶって、ちょっと様子を見てみよう。
俺は大観覧車の方に体ごと向ける。
「ん? 何だ? 向こうに何か在るの――っ!」
『飛鳥さん、お誕生日おめでとうございます。いつも家族を支えてくれて本当に有難うございます。 家族一同』
大観覧車の電光掲示板には、はっきりとそう流れていた。




