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四月七日――――朝

 ピピッ――ピピッ――ピ――。

 翌日、目覚ましが鳴る前に目が覚めた俺は、ベッドの上で天上を見詰めながら考え事にふけっていた。


『あのさ……圭君って、稟香ちゃんの事――――好きなの?』


 繰り返される、昨日の咲紀さんの言葉。結局昨日はすぐに飛鳥さんと千春が降りて来て、俺に謝ってうやむやに出来たから助かったけど。


「好き……か」


 正直、自分でも分からない。『好き』という感情が今のこの気持ちに当てはまるのか……。

 もちろん、姉弟としては好きだ。だが、咲紀さんの言った『好き』はきっと……恋愛感情。


 コンコン。


 そんな時に響く、扉を叩く音。


「どうぞ」


 上体を起こして返事をする。誰だろう……。


「圭兎君、起きてますか?」


 稟香さんだ。……顔が赤くなってる様な気がするけど……気のせいだという事にしておこう。


「あ、はい。今行きます」


 きっともうご飯が出来ているから呼びに来てくれたんだろう。……確か今日の朝食の当番は千春だったっけか? ……朝からどんなボリュ―ミーなものが食べられるんだろう。


「……あの」


 ベッドから出て制服に着替えようとワイシャツに手を伸ばすと、稟香さんがトコトコと近寄って来た。……てっきりもう下に降りたかと思ってた。


「――――っ!?」


 そして俺の正面までくると、いきなり抱き付いて来た。



「昨日は本当に……ありがとうございました」



 シャンプーとリンスの香りが鼻腔びこうをくすぐる。いつもは意識していなかった、稟香さんの体の柔らかさがはっきりと分かる。


「あっいや! べべべ別に、俺はなっ何も……」


 所々、声が裏返った。ヤバい……完全に意識してる。稟香さんを、異性として認識してる……。


「ふふっ――それじゃあ、下で待ってますね」


 俺の心中を察したのか、稟香さんが俺から離れて悪戯っぽく微笑む。くっ……何でこんな可愛い顔すんだ……反則だろ。

 部屋から出て行こうとした稟香さんが、少しだけ振り返り、囁く。


「ダーリン♥」


 ぐぼぁ!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おはようございます」


 リビングに入ってすぐに挨拶をする。それがこの家のきまりだから。


「あ、おはよう圭君」


「おっそ」


「まだ寝ていたのか」


 みんながいつも通りの挨拶を返してくれる。それだけで、家族が戻って来たみたいで安心する。やっぱりこの家族にはこういう温かさが大切なんだよな。

 そして、稟香さんは……、


「おはようございます」


 ……いつも通りの席に座り、いつも通りの挨拶を返してくれた。


 くそっ……さっきの「ダーリン」発言が忘れられねぇ……!

 気持ちを落ち着かせる為に、顔を洗う。


 今日も一日、邪念に犯されずに頑張るぞ!



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