四月六日――――稟香の部屋
「圭兎くぅ~ん?」
人間の皮を被った鬼が、笑顔を浮かべて近付いて来る。このまま俺の人生が幕を閉じるのかと思うと、色々と思うところがある。
そういえば、中学の時に仲良かったアイツと仲直りしないで卒業したよな……あの時、素直に謝っとけば良かったな。
「圭兎く~ん」
そうだ、折角だから稟香さんの身体でも観察しておこう!
いつもの制服姿で見慣れてい「圭兎く~ん」る足は改めて見てみても、やっぱり綺「圭兎く~ん」麗で見蕩れてしまう。そして制服の上からでは分からな「圭兎く~~ん」い身体のライン。柔らかな膨らみが二つに、程好いくびれ。整った「圭兎くぅ~~ん」身体で、凄くスタイルが良いし何より――。
「圭兎!」
「はいぃ!」
――いつもとは違う名前の呼び方に、思わず過剰反応を示してしまう。ビックリしたぁ……。
「この行為……万死に値するわ」
「ごめんなさいいぃ!」
「……と言いたいところだけど、今回は見逃します」
「えっ?」
部屋着に着替え始めた稟香さんが、俺に背中を向けてそう言った。見上げる様にしてそちらを向くと、もう着替え終わった稟香さんの後ろ姿。……何だろう、この敗北感は。
「私の事を心配しての事だったみたいなので……許します。……でも、レディーの部屋に入る時はノックくらいして下さいね」
「は、はい」
良かった……今回だけは許して貰えそうだ。
「……それより、私の鞄からお弁当箱を出しておいてもらえませんか?」
稟香さんが俺の手元を指差してそう告げる。鞄って……あれ? 何で俺が持ってるんだ? ……もしかして、慌ててここまで来る時にそのまま持って来ちゃってたのか?
「はい。……じゃあ、失礼しますっと」
部屋に入らせてもらって、鞄を机の上に置く。それから鞄の口を開けて弁当箱を取り出すと――――、
ヒラッ。
鞄の中に入っていた一枚の封筒が、床に落ちる。
白い封筒。裏には名前が書かれている。
「…………………………」
「圭兎君、どうしたんですか? ……って、ソレですか」
俺の異変に気付いた稟香さんが、封筒を拾い上げて机の上に置いた。何だか凄く困った様な顔をしている。もしかして、ラブレターか何かだろうか。
「ラブレターですよ」
ベッドに入りながら、稟香さんがそう言う。
「……返事、は」
「もちろん、お断りさせて頂きました」
何故だか、その言葉を聞いた途端に、ホッとした自分が居た。