四月六日――――自室
稟香さん達は今頃学校で何をしているんだろうか……なんて考えながら勉強を進める。
……そういえば、フレンチトーストの感想くらいは伝えておいた方が良いだろうか?
ポケットから携帯電話を取り出して一人一人にメールを作成する。……まずは飛鳥さんからにしようか。
『フレンチトーストありがとうございました。
とてもアレンジの利いている際どい味がしました。
多分俺の記憶が正しければ、フレンチトーストに青汁の粉末は入れなかったような気がします』
送信っと。次は千春にしようか。後の二人にはいろいろと言っておきたいこともあるし。
『フレンチトーストありがとうございました。
千春のフレンチトーストを食べると、何だか泣けて来ました。それに、牛乳だって五杯飲めましたし。
P.S.
台所に在ったタバスコはもう手が届かないように俺が厳重に保管しておきます』
次は……咲紀さんだな。
『フレンチトーストありがとうございました。
もう本当に美味し過ぎて涙が出ました。これからも一緒に御飯作りましょう! いや、作って下さい。
ところで、今日の晩御飯なんですが、カレーが良いかなって思ってます。材料も家に在るので、カレーで良かったらメール下さい。後で下準備は済ませておくので』
最後は稟香さん。この人にはいろいろと言いたい事が有るからな。
『フレンチトーストありがとうございました。
塩と砂糖を間違えるとは、流石だなと思いました。どちらかと言うと、俺は甘党です。
今度俺の目の前でフレンチトーストを作って下さい。
P.S.
手紙もありがとうございました。大切に取っておきます』
送信完了! 一斉送信にしなかった理由は、まぁ……それぞれに言いたい事が有ったっていうのと、俺が一斉送信嫌いってところかな。
何か、一人ずつ送った方が気持ちこもってるって言うか何て言うか……まぁ、そんなところだ。
(――――Asuka Side――――)
PPPPPPPPPPPPP♪
友人二人と机を取り囲んで昼食を摂っていると、アタシの携帯電話がメールの着信を知らせた。
「あれ? 飛鳥のケータイか。アタシのと似てるんだよね~」
友人の一人が自分の携帯電話を取り出してそんな事を言っていた。まぁ、アタシが悪い訳では無いのだ。ただ、携帯電話の操作が難しいんだ。
「誰から~?」
携帯電話の画面を確認しているアタシに、もう一人の友人が声を掛ける。
「……弟からだ」
「弟? えっと、圭兎君だよね? あの子カッコイイよね~!」
「ね~!」
アタシがメールの文章を確認していると、勝手に盛り上がっている友人。圭兎がカッコイイ? 顔か?
「良いよね、飛鳥は。圭兎君と毎日会えるんだから」
ミニトマトを手で摘んで、そう言っているのは先程携帯電話を取り出していた方の友人、岩崎愛美だ。
「別に毎日会っても良い事は無いと思うぞ?」
「カッコイイのよ、圭兎君は。すっごいモテモテ」
ジャムパンにかぶりつきながら言うのは、もう一人の友人の田口真奈だ。
二人共圭兎の事をカッコイイと言っているが……本当に分からない。
「そうか……」
あまり釈然とはしないが、人の趣味をそう否定するのも良くないだろう。ここは黙っているのが吉だ。二人の会話を横目に、ちゃちゃっと返信を書いて送信する。
(――――Keito Side――――)
ピロリロリンッ♪
再び勉強を再会させようとしたところで、携帯電話が鳴った。メールを送信した順番から言って、飛鳥さんだろうなと思いながら相手を確認すると、やっぱり飛鳥さんからだった。
『青汁の粉末は隠し味だ』
……隠せてねぇ。




