星を救った英雄の話
星を救った英雄、それは、誰なのか?
予想しながら読んでみてください。
「ねーねーお母さん、あのお話をして!」
子供にせがまれて、母親は、自分達に伝わる話を話し始める。
「これは、星を救った英雄のお話よ」
一人の男がいた。
彼は高い能力と誠実な精神を持った男であった。
彼の名はジャスティーと言った。
その名の通り、正義心が強い男だった。
いくつもの事件をその能力と強い意思で解決していった。
そして、ジャスティーの所にまた一つ事件の知らせが届いた。
ジャスティーが急行した先は、核ミサイル施設。
そこに拳銃を持った男が子供を人質にとり、入り込んだのだ。
「人類は滅びるべきなのだ! 例えこの身が滅びようとも地球を救う!」
そう宣言した男は、核ミサイルの発射ボタンに向って進んでいた。
男は、天才的なハッカーで、この施設のセキュリティーを解除して居た。
事前に手に入れていたマップを片手に、施設内を進んでいく男。
警備の人間も子供を人質に取られていた為、上手く行動を起こせなかった。
これが明確なテロや、もっと凶悪な犯罪者だったら、子供の命は無視され、男が殺されて居ただろう。
男の拳銃しか持たない、いざとなったらどうにでもなる状況が、逆に事件を難航させて居た。
ジャスティーは今までと同じ様に男の前に勇敢に立塞がった。
「大人しく人質を解放するのだ!」
その言葉に男が苦笑する。
「どうしてだ?」
ジャスティーが男を睨み宣言する。
「子供を人質にとるなど、人の道を踏み外した行為だからだ!」
男は高笑いをあげる。
「笑わせてくれる。人の道など最初から気にもしていない。私はこの星を救う為、人類を滅ぼすのだからな」
「そんな事が許されると思っているのか!」
ジャスティーの言葉に、男が聞き返す。
「ならば逆に尋ねる。人の愚行によって滅びた動植物は人間を許してくれるのか?」
ジャスティーは言葉に詰る。
「つまり、許されるかどうかの問題では無い。それを行う事によって自分が何をしたいのかが大切なのだ!」
男の言葉にジャスティーが怒鳴る。
「どんなお題目をあげようと、人類を滅ぼそうとする悪人だと言う事は代わらない!」
そんな会話の間にも、男は何かをしていた。
「ならばお前の覚悟を示せ!」
そう言って人質の少女に何かを飲ませる。
「いま小娘に飲ませたカプセルに、核ミサイル発射解除用チップが入っている。一度口から入れたら最後、腹を開かない限り取り出せない。そして、核ミサイル発射までのタイムリミットは10分だ。急ぐのだな」
言い終わると、男は自らの頭を打ち抜いた。
ジャスティーは言葉を無くす。
そして、核ミサイルの発射シーケンスが開始される。
「早く止めるんだ!」
「止まりません。強固にロックされています」
周りの軍人達の視線が少女に向けられる。
ジャスティーは少女の前に、立塞がり言う。
「核ミサイルを止める為に少女を殺すなんて許しません!」
「全人類の命がかかっているのだぞ!」
軍人達は、ジャスティーに襲い掛かった。
「止めろ!」
ジャスティーが手加減して相手した為に、押さえ込まれる。
軍人の一人が、少女の腹にナイフを突き立てた。
「これで世界は救われる!」
その様子を見ていたジャスティーが呪詛の様に叫ぶ。
「少女を犠牲にしなければ生き残れない人間など滅びてしまえ!」
その声は虚しく響くだけであった。
「それで、人間は自らパンドラの箱を空けたんだよね?」
母親の決め言葉を奪った子供に苦笑をしながら母親、知能が発達した虫が答える。
「そうよ、その自分を殺してまで、邪悪な人達を騙したの。その人の真の目的は、行動力がある、ジャスティーって人に遅効性で死亡率100%の空気感染するウィルスを感染させる事だったのよ」
「でも人間って馬鹿だね、子供殺してまでそんなウィルスが詰ったカプセルを開放しちゃうんだから」
子虫の言葉に、母親が頷く。
「そうね、だから滅びたのよ。さー星を救った名のりもしなかった英雄様に感謝を捧げて眠りましょう」
「はーい」
母虫の言葉に素直に返事をする子虫であった。
正義って時には、酷く残酷です。
因みに語り手の親子が話している英雄っていうのは、子供を人質にして自殺した男の事を指してます。




