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ネクストライフ  作者: 相野仁
おまけ・番外編
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問題も生まれたよ

 ボルトナーの王女キャサリンがロヴィーサとバーラの出産祝いにやってきた。


「おめでとうございます」


 持ってきた花をそれぞれ花瓶に入れ、キャサリンは笑いかける。


「ありがとうございます」


 好みの花の香りをかいで嬉しそうな二人に、あどけなさの残る王女は興味津々といった顔で尋ねた。


「それで子供を産むのってどんな感じなのですか?」


「そうねえ」


 二人の元王女は考え込む。

 将来的にライバルとなりそうな相手ではあるが、意地悪をするにはまだ幼い。

 それにキャサリン個人はむしろ好ましい相手だ。


「痛くて苦しいかな」


 バーラがそう言うと、キャサリンは怪訝そうな顔になる。

 出産の際の痛みに関して、キャサリンは一応知識があるのだが、具体的な感覚が知りたかったのだ。

 そうと察したロヴィーサが困り顔になる。


「具体的にと言われても……言葉にすると痛い、苦しい、辛いって感じになってしまうわね」


 筆舌に尽くしがたいというのもあるが、あまり本当の事を言うとこの幼さの残る王女が、怯えてしまうのではという危惧もあった。


「は、はあ?」


 年長者の配慮もキャサリンには今一つ伝わらない。

 頭を使う事が苦手なボルトナー人というのもある。


(言葉では伝えきれないほど凄いのかな……?)


 そして伝えない方がいいと思われていた事が伝わった。

 ただ、その後の反応は予想とは違っていて、


(で、でも痛みなら根性で!)


 とボルトナー人らしい決意をしたのである。

 キャサリンはその後マリウスにお祝いを言いに行った。


「この度はおめでとうございます」


「ありがとう」


 微笑ましさを気恥ずかしさを覚えながらマリウスは受け止める。

 そしてキャサリンはまっすぐに慕う男を見つめて言った。


「私はもう、子供を産める年です」

 

「そこのボルトナー人、ちょっと来い」


 マリウスはこめかみをひくつかせ、キャサリンに同行していた者を呼びつける。

 これには従者より王女が焦った。


「これは決意表明でして、別にこの者に何か言われた訳では……」


「ああ、そうか」


 「そう言えばこの子も脳筋だったな」とマリウスは思い返す。

 思い立ったから一直線に来たのだろう。


「話はボルトナー王と進めるので」


「は、はい」


 キャサリンは頬を染め、声を上ずらせてお辞儀して走り去って行った。


「おい、皆妊娠したらオレは誰を鍛えればいいんだ?」


 一連の流れを見ていたアウラニースが、今更な事を言い出す。


「自分を鍛えればいいじゃないか?」


「何だとー」


 アウラニースはむくれたが、何やら急に考え込む。


「そう言えば、神の力の残滓はまだあるかな。神の力だから、簡単には消えないはずだよな」


 独り言をつぶやきながらどこかへ歩き出した。


「ちょっと待て、アウラニース。お前何を考えた? どこへ行く?」


 マリウスは何やら激しく不吉な予感に襲われ、慌てて呼び戻そうとする。


「オレ自身を鍛える為だ。そしてオレも神になる!」


「ちょっと待て、お前まで神になったりしたら……」


 アウラニースの姿はあっという間に見えなくなった。


「やべ。致命的なミスをやらかしたかもしれん……」


 マリウスは真っ青になる。

 そして全力で駆け出す。


「助けて、エルえもん!」


 最早おなじみになりつつ展開に、


「はい。どうしました?」


 エルは嫌な顔をせずに出迎える。

 マリウスは事情を説明した。


「アウラニース、絶対神の力を手に入れに行ったよな?」


「まあ、アウラニースの性格を考えるなら、間違いなくそうでしょう。そしてご主人様に勝負を挑んでくるでしょうね。遊べって」


「ですよねー」


 マリウスは意気消沈しながらもエルに縋る。


「どうすればいい? 何か打開案はないか?」


「他の人ならともかく、アウラニースじゃ無理ですよ。勘だけで神の力の残滓探しとか、効率的な鍛錬法とか、全部解決できるんですから」


「だから聞きたかったんだが……」


 アウラニースの恐ろしさ、理不尽さは身をもって知っている。


「アウラニースともう一回戦わなきゃいけないのか? 神と神の力がぶつかったら、この世界はどうなるんだ?」


「むしろ、よく今まで無事でしたよね、この世界」


 主従コンビは揃ってため息をついた。

 もちろん、アウラニースに世界を滅ぼそうというつもりは全くない。

 でなければとっくに滅んでいるだろう。

 今回、神同士の対決になるという事さえ忘れていなければ、大事にはならないはずなのだが……。


「でも、アウラニースだからな」


「アウラニースなんですよねえ」


 楽しんでいると「うっかり」やらかしかねない。

 それが恐ろしかった。

 エルはしばし考えてから言う。


「ご主人様から勝負の内容を決めるのはどうですか? アウラニースの性格だと、挑発はあえて乗ってくるでしょう」


「そうなると、アウラニースが楽しめる内容を考えないといけないな」


 マリウスは考え込む。

 内容次第では充分ありだろう。

 アウラニースは楽しければそれで満足する、扱いやすい性格である。

 ただ、つまらないと確実に暴れるだろうが。


「アウラニースは美味しい物が好きですよね」


「後、掃除好きだったりするし、物作りも嫌いじゃないな」


 「贈り物をしようと思ったら相手が多趣味すぎて困る」ようなパターンになっている。


「楽しければ何でもって逆に困るな」


「そうですね。現状でご主人様がおできになる事の方がよいとは思いますが」


 エルがそんな事を言い出す。


「俺ができる事……?」


「はい。アウラニースは負けるとムキになるでしょうから。そう簡単に遅れを取らないものがあれば、その方がよいでしょう」


「確かにな……」


 一旦ムキになると他の事は吹っ飛ぶだろう。

  

「アウラニースより俺が得意な事か。料理は基本的に俺の方が上だな」


「では料理勝負が一つ目ですね」


 エルが人差し指を折り曲げる。


「後はそうだな。将来、人口の増加に備えて大陸を一つ作るっていうのはどうだろう。どっちが住みやすい大陸を作れるか勝負」


「作った後、具体的にどう利用するんですか?」


 質問されてマリウスは返答に困った。


「考えてなかったな。じゃあボツか」


「いいえ」


 エルは笑う。


「作りたてで何もない大陸ならば、色々と利用できそうです。アウラニースが暴れる舞台にもなりますし」


「それはそうだが……エルに任せていい?」


「はい」


 忠実な召喚獣に丸投げする事になった。


「それでは創り出した人形同士を戦わせるというのはいかがですか?」


「……代理同士で戦わせるのか?」


「はい。肉弾戦のみでルールも定めれば、大陸が消し飛んだりする可能性は低いでしょう」


 マリウスはなるほどと頷く。


「そうだな。攻撃力の上限を設定すれば何とかなりそうだ」


「自分が創って操る人形が、他者に負かされると悔しいと思うのですが」


「ああ、俺ならかなり悔しいな」


 これはマリウスが元はゲーマーであるという事もあるだろう。

 興味がない人にしてみればどうでもよいはずである。

 もっとも戦いが大好きなアウラニースが、全く興味を持たないというのも考えにくい。


「真剣に考えてみるか」


 さすがのアウラニースも、神の力をそんな簡単に制御できないだろう。


(できないといいな)


 願望がこもっていた。

(突然の読者参加型企画)

マリウスVSアウラニースの第2Rの対決内容を予想しよう。

アンケート結果でドヤ顔ニース、ヤンチャニース、しょんぼりニースが見られるぞ。


(1)料理勝負

(2)物作り勝負

(3)作った物での決闘

(4)まさかのガチンコ戦闘


1から4の番号を感想欄の一言に書いて下さい。

他の場所に書かれた場合はカウントしません。

締め切りは5月29日23時59分とします。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

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