第9話
「小説家になろう」投稿一周年記念作品
翌日、登校途中・・。
沙織と由香が一緒に学校に向かっていた。
「・・・でさ、夢のなかで出てきたのはどう見ても王女様って感じじゃなく、たよりない妖精だったのよ」
沙織は昨日見た羽を生やした少女の話をしている。
「それって、あんたの周りをうろちょろ飛び交っているハエのこと・・。どうでもいいけど、なんで今日学校なのよ・・。土曜日でしょ」
由香はあくびをしながら眠たそうに気だるい声で答えた。
「何言っているのよ!来週の月曜日は『文化の日』でうちの学校も文化祭でしょ。・・もしかして忘れてたの!その準備よ!」
沙織が立ち止まり由香に向って言った。
「えっ、来週の祭日休みじゃないんだ!」
由香はすっかり知らなかったようだ。
「ほとんど私たち帰宅部同然だけどオカルト研究会よ。出展の準備しなきゃ」
沙織は握りこぶしを作った。
「四人だけの同好会ね・・」
由香は遠くを見つめぼそっとつぶやいた。
「このまま私たちが卒業してしまったら部員がいなく廃部になっちゃうわ。継続させるために部活に入っていない後輩を作らなくちゃ」
沙織は力強く言った。
「あんた以外に考えているわね」
由香は感心した。そして・・、にんまりして制服を広げた。
「これ見て・・・」
なかに着ているブラウスの胸元にブローチのように加工された幸福のクローバーがあった。
「あっ!何これー!どこで見つけたのよ!!」
沙織は指を指し大げさにびっくりした。
「輔清がくれたのよ」
由香は自慢げに言った。
「すけきよ・・?ところで何で最初に言ってくれなかったのよ!」
沙織はむすっとした。
「あんたの妖精の話がスタートを切ったんじゃない。それで止め処と無くマシンガントークが始まったでしょ。言う暇なかったのよ」
由香はため息をついた。
「わたしにも頂戴!」
「ダメよ!」
「おはよー!」
沙織と由香がたち問答していると綾乃が走ってやってきた。
「見て!みて!じゃーん!」
綾乃が由香と同じように幸福のクローバーが胸に光っていた。
「なによ!二人とも!」
沙織はまたむすっとした。
「綾乃もみつけたんだー」
由香は綾乃の幸福のクローバーを撫でた。
「あっ!さっきメールあったんだけど今日、翠休みだって。やっぱり昨日の今日だからね・・」
綾乃が二人に伝えた。
「えーん、わたしだけ無いんだー」
沙織は綾乃の話も聞かず、しゃがみ込み泣いていた。
「さっ、気を取り直して!」
由香が沙織の肩にそっと手を乗せ応援した。
「よしっ!後輩の勧誘は私たちに託されたわけね!」
沙織の立ち直りは早かった。すくっと立ち上がりもう一度握りこぶしを作った。どうやら話は聞いていたようだ。
「それでテーマは何にするのよ」
由香はもう一度あくびをした。
「決まっているじゃない!『幸福のクローバー恋の伝説』よ」
沙織はそれでも根に持っているようだ。三人は一緒に学校へ向って歩き出した。
「・・・それでその妖精がさぁ、二人の夢のなかには出てこなかった・・?」
沙織はまた昨日の出来事のおしゃべりを始めた。
学校に着くと大勢の生徒たちが正門の前でがやがやしている。
おまけに警官、救急車、消防車まで来ていた。
「これは何やら事件ですよ」
綾乃が呆然と立ち尽くす二人に声を掛けた。
「あっ!あれ!!」
沙織が事件の源に指を指した。それは学校の塀から見えるほど大きく育ったもみの木だった。
「この木なんの木?」
「昨日までこんなの無かったのに!」
「まさに事件です!」
三人はポカーンと口をあけ見上げた。
「たすけてー」
「いま何か聞こえた?」
沙織が二人に聞いた。
「たすけてー」
「昨日の沙織の夢の妖精がいるんじゃない」
由香が見上げたまま答えた。
「ここよ!たすけてー」
「あそこですよ!沙織の友達の妙子さん!」
綾乃がそのもみの木を指差し言った。指差す遠く上のほうにこれまた大きな枝にしがみついた妙子の姿が小さく見えた。
突然沙織の携帯電話が鳴った。
「もしもし・・妙子!何やってんのよあんた!!」
沙織が電話を取りびっくりした。
「・・・でも、まだぶら下がったまま電話掛けるくらい余裕があるようね。でも、しっかりしがみついてなさい。今助けに行くわ!」
沙織は電話を切り二人の腕をつかんだ。
「裏に回りましょう。私たちで助けるのよ」
「えっ!えぇー!」
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