第4話
「小説家になろう」投稿一周年記念作品
翌日昼休み・・。
「・・・で、夜遅く帰って睡眠不足なの?」
目の下に隈を作った翠が聞いてきた。
「そう言う翠だって眠そうじゃない」
由香がよりいっそう気だるい声で聞いた。
「私は・・、じゅ、受験勉強で遅くまで起きていたのよ」
翠があせった。
「それにしては沙織は元気ね」
綾乃が力なく言った。
「昨日のドラマ観たー。どうだった」
沙織はクラスメイトに聞きまわっている。
「ところで二人とも今日のお弁当は松茸づくしなの」
翠が由香と綾乃に不思議に聞いた。
「昨日のお土産よ!」
由香と綾乃が一緒に答えた。
「それって泥棒じゃない!その山、マツタケ山よ」
翠が呆れ顔で言った。
「やっぱり。私も後から思ったんだけど、フェンスで立ち入り禁止で松茸だから=(イコール)人の持ち物なのよね」
綾乃がそう小さく言いながら一口くちに入れた。
「これって綾乃の言うように月のエネルギーで最高に美味しいわ」
由香も一口二口食べている。
「知らないんだから!」
翠が他人事で言った。
「だけど・・あの山いろんな噂話あったじゃない・・」
綾乃が食べながら言った。
「そんなの松茸を盗まれないよう持ち主の作り話じゃない!・・・。だけど・・、そういえば私も聞いたことあるわ。あの山は人を食べるの・・。濃い深い霧が出てきて人を誘い込むのよ・・」
翠が怖そうに言ってきた。
「やだー、昨日も帰りに霧が出てきたのよー」
綾乃が食べるのをやめた。
「なーんてね。嘘よ。なに怖がっているのよ」
翠がにこやかに笑った。
「そんなのやめてよね・・」
由香の箸がとまっている。由香は怖い話が大の苦手だ。
「なになに何の話しているの」
沙織がやってきた。
「あなたドラマ帰って観たんじゃないの!」
由香が食べながら聞いた。
「おあいにく様!録れてなかったのよ!」
沙織が露骨にふくれっ面で言った。
「・・・であなたも松茸泥棒」
翠が聞いてきた。
「松茸泥棒??」
「あの山、人の所有地だったの!」
綾乃が沙織にいつもより小声で言った。
「私は松茸は盗っておりません!ですが、きれいな花を咲かせたさつま芋を盗りました」
沙織は法廷の被告人が喋るように言った。
「さつま芋・・?」
他の三人が声を合わせて言った。
「そう、それがさあ、変な芋で人の形してるのよ」
沙織が説明した。
「それって!マンドラゴラの花じゃない!!」
翠がびっくりして言った。
「マンドラ・・ゴン・・?」
沙織が首をかしげた。
「そんなの・・どうでもいいわ・・。引っこ抜いたときあんた大丈夫だった」
翠が驚きを隠せず言っている。
「特に異常なし」
「ところでそれどうした・・」
翠が恐る恐る聞いた。
「芋はふかして美味しかった!花は園芸部にやった」
翠は慌てて出て行った。
「どうしたの?なにあの慌ってぷり」
三人は走っていく翠の後姿をみていた。
「そんなの食べてお腹大丈夫?」
綾乃が心配そうに沙織に聞いてきた。
「大丈夫、大丈夫。ところでお二人さん。昨日のドラマとってない(盗ってない)?」
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