第11話(最終話)
「小説家になろう」投稿一周年記念作品
数日後・・。
秋の夕暮れが近ずいた放課後。少し肌寒さを感じる教室の片隅で四人はひとつの机を前に顔を見合わせていた。
「とにかく無事妙子も助かったし、文化祭も程よく終わったわ」
沙織がガーゼの絆創膏を張った顔で話し出した。
「私たちは病院で参加できなかったけどね」
由香が同じく絆創膏を張った顔で気だるく言った。
「だけど良かったじゃない。妙子さんの協力でうちの部の出展もできたし」
今度は頭に包帯を巻いた綾乃がほのかな笑顔で言った。
「あっ!『恋の幸福のクローバー大作戦』ね!」
沙織が立ち上がって大きな声を上げた。
「ちょっと!集中しなさい!それにそんな名前だったかしら・・」
包帯だらけの翠が低い声で言った。
「売り上げはいくらだったのかしら!」
沙織の目が垂れ下がり宙を浮いた。
「馬鹿ね。無償に決まってんじゃない。これが出来たのも園芸部と理科研究部の共同実験の成功のおかげよ。それがなくっちゃ、そんな手の平サイズの大きな四葉のクローバーがあんなにたくさん出来る訳ないじゃない。これは奇跡に近いのよ!だけど新入部員は来なかったみたいだけどね」
包帯だらけの翠が落ち着いてまた低い声で言った。
「なぁ~んだ。がっかり・・」
沙織は落ち込み下を向いた。
「いいじゃない。あの大きなもみの木だって町の名物になったし。来月のクリスマスにはデコレーションされてライトアップするみたいよ。恋人たちの新しいデートスポットになるわ」
綾乃がロマンチックに語った。
「いいなぁ、幸福のクローバーを持ったカップルが集まるのね・・」
沙織が落ち込んだまま力の無い声で言った。
「まぁ、イベントごとの多い12月はこれからだし、まだ私たちには卒業まで時間はあるわ」
沙織の目がまた垂れ下がり顔を上げた。
「何言ってんのよ!私たちこれから受験が控えているでしょ!」
翠が落ち着き払った低い声で言った。
「また、黒マジックで裏入学するつもり」
沙織がぼそぼそっと言った。
「失礼ね!ちゃんとお勉強します!それに黒魔術よ!もうそれはしていませんから!」
翠が包帯の奥から鋭く沙織を睨んだ。
「ちょっと・・」
由香が包帯をした手を上げた。
「わたしこの前思ったんだけど、もうちょっとみんなと一緒にいたいの。だから同じ高校を受けない?」
「わたしも同じ事を思っているの・・」
綾乃も同じく包帯をした手を上げて言った。
一瞬周りの空気が静まった。誰しもが言葉を呑んだ。
「もう少しだなんて、ずっと一緒にいればいいじゃない!」
沙織が先手を切って場の空気を破った。
「そうよ!一緒に同じところ受験しましょ!」
翠も声が高らかになった。どうやら沙織も翠も同じ事を思っていたらしい。
「これからみんなが受かるように必死に勉強するのよ!そして高校に入ってから男探しのスタートよ!」
沙織が立ち上がって包帯だらけの両手を上げた。
「彼氏っていいなさい!結局、沙織の頭のなかはそればっかりね・・」
翠が包帯だらけの手で肘を付いた。
「だけどもし・・、誰か一人でも受からなかったらどうしよう・・」
綾乃が包帯の手で口を押さえ目が潤る潤るとした。
「大丈夫!」
沙織が立ったまま自信ありげに胸を張って高らかに声を上げた。
「わたしたちには幸福の王女様がついて(憑いて)いるわ!わたしたち自身四人がクローバークィーンズよ!」
四人が囲んだ机の真ん中には幸福の四葉のクローバーが置かれ彼女たちに微笑みかけていた。
お・わ・り
短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。




