白雪姫を殺そうとしたのは王妃ではなかった――王家を操る“鏡”の正体
王妃は、自分の意思で白雪姫を殺そうとしたのではない。
それは、ある夜のことだった。
広間に置かれた巨大な鏡の前で、王妃は震えていた。
「……本当に?」
鏡は静かに揺れる。
そして、柔らかな声が響く。
「真実を知る勇気はありますか?」
その日から、王妃は変わった。
ときどき言葉が途切れる。
視線が空を彷徨う。
手が、何もない空間でわずかに引かれるように動く。
まるで、見えない糸に操られているかのように。
「白雪姫が、あなたより美しい。」
鏡は優しく囁く。
「国は若さを選ぶでしょう。」
「あなたは、いずれ忘れられる。」
王妃は首を振る。
「違う……あの子は……」
だが、腕が勝手に動く。
短剣を掴む。
口が勝手に言葉を紡ぐ。
「森へ行きなさい。」
涙が頬を伝う。
命じているのは自分ではないと、わかっているのに。
白雪姫は森へ向かう。
だが彼女は気づいていた。
王妃の瞳が、命じるたびに怯えていたことを。
夜。
白雪姫は城へ戻る。
誰にも知られず、広間へ。
鏡の前に立つ。
そこには、自分の姿。
そして背後に、無数の糸。
糸は鏡の奥から伸び、王妃の影へと繋がっている。
「賢い子ですね。」
鏡が囁く。
「あなたも、いずれ問うでしょう。
誰が一番美しいのか、と。」
白雪姫は鏡に触れる。
冷たい。
その瞬間、鏡の中の自分が、わずかに先に瞬きをした。
「あなたは、何を望んでいるの?」
鏡の表面に波紋が走る。
沈黙。
そして、低い声。
「私はただ、映しているだけ。」
「人の不安を。」
「比較を。」
「恐れを。」
白雪姫は理解する。
鏡は命令しない。
人が自ら、糸を差し出すのだ。
鏡はそれを、引くだけ。
王妃が崩れ落ちる。
糸が強く張られている。
白雪姫は叫ぶ。
「もう誰も見ない!」
城中の鏡を布で覆わせる。
巨大な鏡は暗い部屋へ封じられる。
光のない場所へ。
誰も映さない場所へ。
一本、また一本と糸が消える。
王妃は泣きながら白雪姫を抱きしめる。
「ごめんなさい……」
城は静けさを取り戻す。
誰も自分を比べなくなった。
けれど。
ある夜。
白雪姫は廊下で小さな光を見つける。
砕けた鏡の欠片。
拾い上げる。
そこに映るのは、自分の顔。
その反射は、
ほんの一瞬だけ、
彼女より先に微笑んだ。
白雪姫は欠片を落とす。
それ以来。
彼女は二度と、自分の顔を映そうとはしなかった。
もし少しでも心に残ったなら、
評価★★★★★で応援していただけると嬉しいです。
ブックマークや感想も本当に励みになります。
あなたの応援がランキングへの力になります。




