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白雪姫を殺そうとしたのは王妃ではなかった――王家を操る“鏡”の正体

掲載日:2026/03/02

王妃は、自分の意思で白雪姫を殺そうとしたのではない。


それは、ある夜のことだった。


広間に置かれた巨大な鏡の前で、王妃は震えていた。


「……本当に?」


鏡は静かに揺れる。


そして、柔らかな声が響く。


「真実を知る勇気はありますか?」


その日から、王妃は変わった。


ときどき言葉が途切れる。


視線が空を彷徨う。


手が、何もない空間でわずかに引かれるように動く。


まるで、見えない糸に操られているかのように。


「白雪姫が、あなたより美しい。」


鏡は優しく囁く。


「国は若さを選ぶでしょう。」


「あなたは、いずれ忘れられる。」


王妃は首を振る。


「違う……あの子は……」


だが、腕が勝手に動く。


短剣を掴む。


口が勝手に言葉を紡ぐ。


「森へ行きなさい。」


涙が頬を伝う。


命じているのは自分ではないと、わかっているのに。


白雪姫は森へ向かう。


だが彼女は気づいていた。


王妃の瞳が、命じるたびに怯えていたことを。


夜。


白雪姫は城へ戻る。


誰にも知られず、広間へ。


鏡の前に立つ。


そこには、自分の姿。


そして背後に、無数の糸。


糸は鏡の奥から伸び、王妃の影へと繋がっている。


「賢い子ですね。」


鏡が囁く。


「あなたも、いずれ問うでしょう。


誰が一番美しいのか、と。」


白雪姫は鏡に触れる。


冷たい。


その瞬間、鏡の中の自分が、わずかに先に瞬きをした。


「あなたは、何を望んでいるの?」


鏡の表面に波紋が走る。


沈黙。


そして、低い声。


「私はただ、映しているだけ。」


「人の不安を。」


「比較を。」


「恐れを。」


白雪姫は理解する。


鏡は命令しない。


人が自ら、糸を差し出すのだ。


鏡はそれを、引くだけ。


王妃が崩れ落ちる。


糸が強く張られている。


白雪姫は叫ぶ。


「もう誰も見ない!」


城中の鏡を布で覆わせる。


巨大な鏡は暗い部屋へ封じられる。


光のない場所へ。


誰も映さない場所へ。


一本、また一本と糸が消える。


王妃は泣きながら白雪姫を抱きしめる。


「ごめんなさい……」


城は静けさを取り戻す。


誰も自分を比べなくなった。


けれど。


ある夜。


白雪姫は廊下で小さな光を見つける。


砕けた鏡の欠片。


拾い上げる。


そこに映るのは、自分の顔。


その反射は、


ほんの一瞬だけ、


彼女より先に微笑んだ。


白雪姫は欠片を落とす。


それ以来。


彼女は二度と、自分の顔を映そうとはしなかった。

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