第22話 王都の風
第22話です。
「王都の風」では、ついにシン=アルバート一行が王都へ。
風を恐れる王と、自由を求める導き手――
“風と権力”の衝突が幕を開け
王都グラディエル――
かつて“風の中心”と呼ばれた都市は、
今や高い城壁と重い空気に包まれていた。
「風が……流れていません。」
エリシアの声は震えていた。
「まるで、空気そのものが“閉じ込められている”ようです。」
レオンが頷く。
「風向計も完全に狂ってます。
外では南風、でもここでは北風が逆流している。」
「つまり、王都全体が“風の牢獄”か。」
シン=アルバートは口笛を鳴らして言った。
「さすが王様、空気まで支配したいらしいな。」
ミレイアはフードを深くかぶり、
小声で言った。
「“導き手狩り”が本格化しています。
王は“風の羽根”を奪われたことで、
導き手の存在を“反逆の象徴”と見なしているんです。」
「反逆ね。」
シンは肩をすくめる。
「会社でもいたよ、“反逆者”扱いされた奴。
だいたい、現状を変えようとしただけなんだけどな。」
彼らは城下の市場を歩いた。
露店の人々は皆、風鈴を外し、窓を閉ざしている。
風の音を出すことすら禁じられた街。
「静かすぎる。」
レオンが呟く。
「まるで、風そのものが処刑されたみたいだ。」
エリシアが目を伏せた。
「この街で風を感じることは、“罪”とされているんです。」
「風を罪にした時点で、もう人間の方が病んでる。」
シンは冷たく言った。
「だが、治療法はある。
――風を思い出させりゃいい。」
ミレイアが顔を上げる。
「……王に、会うおつもりですか?」
「会わなきゃ風が腐る。」
シンは淡々と言った。
「それに、“導き手狩り”の理由を直接聞いておかねぇとな。」
⸻
その夜。
四人は宿屋の裏手にある古い塔へ向かった。
そこには、王国の記録官たちが隠れて集まっているという。
「風律法の改定を止めた連中です。」
ミレイアが囁く。
「彼らはまだ、“自由な風”を信じている。」
扉を叩くと、
中から老いた男の声が返ってきた。
「合言葉を。」
ミレイアが小さく答える。
「風は吹き、心は巡る。」
扉が開く。
中には、十人ほどの老人が集まっていた。
その中心に、白髪の書記官が座っている。
「おお……“導き手”殿。
風が、再び姿を見せてくれたか。」
シンは軽く頭を下げた。
「“姿を見せた”っていうか、勝手に吹いてるだけだ。」
老人は微笑んだ。
「王は恐れておるのです。
かつて“風の戦争”を終わらせた導き手が、
再びこの地に現れることを。」
「なるほど。歴史が繰り返すのが怖いわけか。」
「いいえ――“真実”が明るみに出るのが怖いのです。」
老人は古びた巻物を差し出した。
「これは、“初代導き手”が残した記録。
そこにはこうあります――
> 『王は風を恐れ、風は王を嫌う。
> しかし、両者はひとつである。
> 風なき王国は、ただの墓標。』」
静寂。
その言葉が部屋に風のように流れた。
「王はこの記録を封印し、
“風の羽根”を国家の象徴として奪った。
だが、本当は――
羽根は“王ではなく導き手の証”だったのです。」
「つまり、王は“導き手の座”を奪ったってことか。」
「はい。そしてその奪還こそ、風の真なる使命。」
ミレイアが強く頷いた。
「だからこそ今、あなたが必要なんです。
“導き手の再誕”が、風に秩序を取り戻す唯一の道。」
シンは少し黙り、
やがて静かに笑った。
「再誕、ね。
まぁ、“再就職”みたいなもんか。」
老書記官たちが困惑する中、
エリシアだけが小さく笑った。
「きっと、その軽さがあなたの風なんですね。」
「風は重くなっちゃ吹けないからな。」
その時、塔の窓が震えた。
遠くで鐘が鳴る。
ミレイアが蒼白になる。
「……見つかりました。王国警備隊です!」
レオンが叫ぶ。
「どうします!」
シンは笛を握り、口角を上げた。
「逃げる風もあれば、抜ける風もある。
――俺たちは後者だ。」
笛の音が鳴る。
塔を包む風が逆巻き、四人の姿が掻き消えた。
窓の外、王都の空を裂くように光の筋が走る。
その中を、ひと筋の風が自由に駆け抜けていった。
お読みいただきありがとうございます。
第22話「王都の風」は、“導き手狩り”の背景と、
王が“風を封じる理由”の一端が明らかになる回でした。
いよいよ王国編が本格始動です。
次回、第23話「沈黙の玉座」――
風を恐れる王、その王座に潜む“もう一人の導き手”の影。
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