第21話 風の羽根
第21話です。
「風の羽根」では、王国の使者が登場し、
“風を誰が支配するのか”という新たなテーマが浮かび上がります。
丘の上に立つと、風がやわらかく頬を撫でた。
その風の中心に、白く輝く“羽根”が静かに浮かんでいる。
「これが……“風の羽根”。」
エリシアが息を呑む。
「神殿が認めた導き手だけが触れられる、純粋な風の結晶。」
シン=アルバートは手を伸ばし、ゆっくりと羽根を掴んだ。
指先に伝わるのは、心臓の鼓動に似た“風の脈動”。
「不思議だな。まるで、誰かが生きてるみたいだ。」
「それが“風の記憶”です。」
ミレイアが頷く。
「神殿の封印が解かれたことで、風が再び“意志”を取り戻した。」
レオンが装置を操作しながら言った。
「この羽根の中には、まだ解析不能な波長があります。
もしかすると、“風の源”と直接繋がっているかも。」
「風の源……。」
シンが呟いた瞬間、
遠くで馬の蹄の音が響いた。
「来たか。」
風がざわめく。
やがて、鎧に身を包んだ一団が丘を登ってきた。
先頭の男は、赤い外套に王家の紋章を刻んでいる。
「王国騎士団……!」
レオンが構える。
男は馬を止め、ゆっくりとヘルムを外した。
「導き手殿。王国の命により、貴殿が手にした“風の羽根”を預かりに参った。」
「預かる?」
シンが眉を上げた。
「悪いが、拾ったばかりのもんをそう簡単に渡す趣味はない。」
「それは、個人の所有物ではない。」
男の声は冷たい。
「風はすべて、王国が管理すべき資源。
“風律法”第七条――風を持つ者、すなわち国家の臣民たること。」
ミレイアの顔が怒りに染まった。
「それは千年前の禁法です! 風を封じた結果、世界が荒廃したのを忘れたのですか!」
「荒廃を止めたのも王国だ。」
男は冷ややかに言い返す。
「導き手がもたらした混乱を鎮めたのは、我らの祖先。」
「なら、その祖先が風を殺したってことだな。」
シンが一歩前に出た。
「風は人の下に置くもんじゃない。
――風があって、人が立つんだ。」
男の目が細まった。
「貴様、神聖なる律法に背く気か。」
「律法? ああ、古いマニュアルだろ。」
シンが笛をくるくると回しながら笑う。
「会社でもいたんだよ。
“昔のルールがすべて”って言う奴がな。」
「貴様……!」
男が剣を抜いた瞬間、風が吹き荒れた。
羽根が淡く光り、シンの掌から浮かび上がる。
空気が震え、風が剣を押し戻した。
「何だ、この風は……!」
騎士たちが後退する。
ミレイアが叫ぶ。
「“風の羽根”があなたを守っています!
導き手に危害を加えようとする者を、拒む風です!」
「へぇ……忠実な護衛だな。」
シンは笛を構え、風を鎮めた。
「忠告だ。風を国の所有物にしようなんて考えるな。
それは、“呼吸税”を取るようなもんだ。」
「風は誰のものでもない。
ただ、吹くべき方向を選ぶだけだ。」
男は顔を歪めた。
「覚えておけ、“導き手”。
貴殿の存在は、いずれ“国家反逆”と見なされる。」
「そうか。じゃあ俺は、風の反逆者だな。」
風が吹いた。
男のマントがはためき、彼は何も言わずに去っていった。
沈黙のあと、レオンが呆れたように言った。
「また敵を増やしましたね。」
「俺の人生、だいたいそういう風にできてる。」
エリシアが小さく笑った。
「でも、風はあなたを選びました。
それがすべての答えです。」
シンは風の羽根を見つめ、ゆっくりと呟いた。
「なら、この羽根は――“自由”の象徴だ。」
風が丘を駆け抜け、羽根が淡く輝いた。
その光は、遠くの王都の空にまで届いていた。
お読みいただきありがとうございます。
第21話「風の羽根」は、“導き手 vs 国家”の幕開けです。
この回で物語は再び政治と宗教の軋みへと踏み込み、
風の自由を巡る戦いが本格化していきます。
次回、第22話「王都の風」――
王国が動き出す。
“導き手狩り”の影と、風を恐れる王の真意が明らかに――。
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