表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/25

第18話 風の遺産

第18話です。

「風の遺産」――ガルズの残した“風の断片”を通じて、

ついに“風の起源”と“導き手の予言”が明らかになります。

哲学と神話が交わるこの章は、物語の第二幕を開く重要な節目です。

夜が明けた。

戦いの名残が残る南の街レシアに、穏やかな朝風が吹いていた。


「……静かだな。」

シン=アルバートは、教会の瓦礫に腰を下ろし、笛を膝に置いた。

「風が、落ち着いてる。」


エリシアは祈るように手を胸に当てた。

「怒りも悲しみも過ぎ去って、今は“眠っている”風ですね。」


「戦いが終わって、やっと呼吸が戻ったんだろ。」

シンが微笑んだ。

その時――レオンが駆け寄ってくる。


「シンさん、これを!」

彼の手に握られていたのは、黒く光る“欠片”だった。

それは、ガルズが消滅したあと、風に乗って残されたもの。


「……これが、“風の断片”か。」

シンはそれを手に取り、目を凝らす。

欠片の内部には微かな光が渦を巻いていた。

まるで、風そのものの記憶が封じられているように。


「これ、ただの魔力じゃありません。」

レオンの声が震える。

「風の記録……“風の中の映像”です!」


「風が……記録を持つ?」

エリシアが息を呑む。

「まさか、風が“過去を覚えている”なんて……!」


「それを確かめるには、吹かせてみるしかないな。」

シンは笛を構えた。


風の断片を掌に乗せ、ゆっくりと音を吹く。

“ピィィィ――”


音が共鳴し、欠片が光り始める。

風が三人の周囲に渦を巻き、

やがて空気の中に“映像”が浮かび上がった。



そこに映し出されたのは、

青空と、無数の塔が立ち並ぶ古代都市。

風車が回り、空を渡る橋を人々が歩いている。


「これが……この世界の昔?」

レオンが声を失う。


エリシアは息を詰めた。

「風が、人と共に生きていた時代……!」


その光景の中央に、

一人の青年が立っていた。

白い外套、腰に笛。

どこか――シンに似ていた。


「……俺?」


青年は空を見上げ、

微笑みながら風に手を伸ばした。


『風は神ではない。

 風は、人が信じる限りで生きる。

 だからこそ――人の傲慢が、風を“神格化”した。』


「……つまり、人が風を神にしたのか。」

シンの声に、エリシアが小さく頷く。

「風は最初から、誰かのものではなかった。

 それを“神”と呼んでしまったのが、人間なのです。」


映像の中の青年が、こちらを振り返るように微笑んだ。


『もし、再び風が封じられた時――

 “導き手”が現れ、風を正すだろう。

 その者こそ、風と人をつなぐ者。』


「導き手……!」

エリシアの瞳が光を宿す。

「それが、今のあなたです、シン!」


「……いや、まだだ。」

シンは首を振った。

「導くってのは、命令じゃない。

 “共に歩く”ことだ。」


映像がゆっくりと消えていく。

風の断片が砕け、柔らかな風が頬を撫でた。


「風が笑ってますね。」

「うん。多分、“見つけてくれてありがとう”って言ってる。」


シンは立ち上がり、空を見上げた。

北風が流れ、遠くの空に白い鳥が舞う。


「風の記憶が、まだどこかに残ってる。

 これが“風の遺産”――なら、全部見つけてやろう。」


エリシアが微笑む。

「きっと、風が案内してくれます。」


「そうだな。風任せに行こうか。」


三人は再び歩き出す。

その背に、新しい風が吹いた。

それは過去の記憶を未来へ運ぶ、“希望の風”だった

お読みいただきありがとうございます。

第18話「風の遺産」は、世界設定の中核に迫る回でした。

“風とは何か”――その問いが、

今後の旅の方向性を決めていきます。


次回、第19話「風を継ぐ者」――

新たな地へ旅立つ三人。

そこに現れるのは、“風の弟子”を名乗る謎の少女。

ブックマーク・評価・感想で、あなたの風を吹かせてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ