みじかい小説 / 018 / マッチングアプリ
スマホの通知が鳴る。
なんだ、ニュースか。
このところの俺はいつもこんなふうである。
というのも、先日、弟の勧めで、人生ではじめてマッチングアプリに登録したのだ。
弟によると、最近の若者はみんな使っているとのことだった。
アプリの使い方は簡単で、写真を設定したら、あとはプロフィールを埋めるだけ。
準備ができたら女性の中から適当に相手を選び、いいねを押す。
運が良ければ相手にいいねをしてもらえ、そうしたらマッチング成立、晴れてメッセージのやりとりが可能になる、というわけだ。
ちなみに男性に限り、メッセージのやりとりは有料である。
マッチングアプリというのはそうやって儲けているそうで、他人の恋愛を盛り上げるだけ盛り上げて金をとるなんて、いい商売してるよな、と思う。
俺は毎日マメにいいねを押し続けた。
しかしまったく反応が見られなかった。
どうやら、いわゆる美男美女にいいねが集まるようになっているようであり、イケメンでない俺などは写真を見ただけでスルーされてしまうようだった。
なんという不公平だ。
人間、外見より中身だろう。
とスマホのこっち側でひとりむなしく自論を展開しても誰にも届かない。
とにかく第一印象が大事だと気づいた俺は、ヘアサロンに行って髪と眉を整えてもらい、ちゃんとした写真を撮ってもらい、そのうえでプロフィールを充実させて相手の出方をうかがった。
しかし、いっこうに反応は得られなかった。
結局、俺は馬鹿馬鹿しくなって、いいねを押すのをやめた。
よかったことと言えば、身ぎれいになった分、会社の部下から「彼女でも出来たんですか」とはやし立てられたことくらいだ。
ああ、どこかに疲れた俺を癒してくれるかわいい女の子はいないものか。
すれ違うカップルをうらやましく思いながら、今日も俺はスマホの通知を待っているのであった。
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