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第7話『2つを繋ぐ磁力』

──ギュッ‼︎


 男は胸ぐらを持つ拳が震えるほどに力強く握りしめた。

 そして、開いている玄関ドアの外の方に振り向いた。


「今回は俺が遊んでやるよ‼︎」


 そう言って、男は大きく振りかぶり──


──シュッ‼︎


 俺を思いっきり向かいの家に投げた。

 口が閉まらないほどに空気が口内に入り込んできた。

 風を切る音が聞こえる。

 投げられる道具はいつもこんな気──


──ドカンッ‼︎


──ザザザッ‼︎


 二階建ての木造の家は一瞬にして崩壊した。

 俺は屋根に埋もれてしまった。


──フンッ


 男は鼻息を吐いた。

 士狼は足をガクガクさせて怯えていた。

 男はそんな士狼を横目で見た。


「こうなりたくなけりゃ、俺に歯向かわないことだな。」


「は、はい…」


「さて、こっちの仕事は片付いたし、仕事場に向かうぞ。」


 男は洞窟の方へ歩き出そうとすると──


──ガタガタガタッ‼︎


──ザザザッ‼︎


 崩れた家の木片が雪崩のように落ちた。

 俺の顔がその山の頂上辺りから出た。


「ク…クソ…」


 俺は血だらけで白髪や白目が深紅色に染まっていた。

 かなり息が荒くなっている。


「隠れておけばいいものの。」


 男は何かを企んでいるかのように笑いながら、俺に近づいてきた。

 

──ザッザッ


 木片を踏み鳴らしながら山を登り、俺の目の前で止まった。

 俺を見下ろしていた。


「どうやら俺は、何度も立ち向かうお前に愛着が湧いてしまったらしい。」


「そ…それはどうも…」


「遊んでやるだけのつもりだったが──」


──ペロッ


 男は舌を出し、ヨダレが垂れた。


「お前を殺したくてウズウズしてきたぜ…‼︎」


 これだけ派手に暴れてたくせに、元々殺す気なかったのかよ‼︎

 コイツ、イカれてやがる‼︎

 俺は頑張って、木片の山から身体を抜け出そうとするが──


──ドカッ‼︎


──ザザッ‼︎


 男が俺の頭を踏み潰し、モグラ叩きのように山の中へ埋めようとした。

 俺はなんとか顔が出た状態で耐え抜いたが、更に頭から大量の血が流れ出た。


「いいねいいね〜‼︎もっと頑張れよ‼︎」


 マジでイカれてるぜ、コイツ…‼︎

 フラフラしてきた…


 俺は頑張って抜け出そうとするが、力が出なくなってきた。


「もしかしてもう終わりか?」


 男は腰に掛けていた刀を抜いた。

 そして、俺の右手の甲に突き刺した。


──グサッ‼︎


「ぐあぁぁぁ‼︎」


 手からも血が流れ出た。

 もう右手に感覚がなくなっていた。


「刀を扱える力も残ってないのか⁉︎あぁ⁉︎」


 力が残ってる残ってない以前に、使い方がわからねぇんだよ。

 使えてたらとっくに使ってるわ、クソ野郎‼︎


「どうせ殺すなら、俺の部下と同じ目にあってもらわなくちゃな‼︎」


 俺はまた死を覚悟した。

 この世界に来てまだ1日も経っていないのに、何度死を覚悟しなければならないのだろうか。

 キンタマが木片に埋もれている今じゃ、アウトサイダーの助けも呼べない。

 今回は本当に終わりだ…


「そうだ、いいこと考えたぜ。お前、さっき山下を庇ってたな。」


 刀を俺の手から抜き取り、肩に担いだ。

 刀の先から深紅色の血液が垂れる。


──ニヤッ


 男は歯を出して笑った。


「お…お前…何を考えている…⁉︎」


「どうせなら、山下を殺してから殺そうと思ってよ…‼︎ その光景を見たお前がどんな顔をするかワクワクして来たぜ‼︎」


 士狼は足をガクガクさせてこっちを見ていた。

男は士狼の方へと飛んでいった。


──ドンッ‼︎


 士狼の目の前で着地した。

 砂埃が舞った。

 士狼は恐怖で尻餅をつき、後退りした。


「や、やめてくれ‼︎ お願いだ‼︎」


「あの世でアイツを恨むんだな…‼︎」


 男は刀を振りかぶり、突き刺そうとした瞬間──


「…お前の相手は俺だろうがっ‼︎」


 俺は闘志をむき出して叫んだ。

 そのとき──


──ピタッ


 男の動きが止まった。

 その隙に士狼は足をバタつかせて咄嗟に逃げた。

 俺も最後の力を振り絞って、身体を木片の山から抜け出した。

 何が起こったんだ?

 もしかして…‼︎


「て、てめぇ、何をしやがった…‼︎ か、刀が動かねぇ…‼︎」


 やっぱりそうだ…‼︎

 アウトサイダーと同じ磁力を使えている‼︎

 何故だ?

 別に何かを考えた訳ではないはずなのに。

 男は刀を手放した。

 やはり、刀は宙に浮いていた。


「これが部下の言ってた能力か…ちっ、まあいい。」


 男は逃げる士狼を追いかけた。

 そして左手で頭を掴み、思い切り地面に押さえつけた。

 右手の拳を振りかぶった。


「逃げるんじゃねぇよ、この──」


──グサッ‼︎


「ぐっ‼︎」


 俺の意志で男の背中に刀を突き刺した。

 視界が血でボヤけて見にくかったが、男から血が流れ落ちているのが見えた。


「言っただろ? お前の相手は俺だって‼︎」


「て、てめぇ…」


 男は士狼を放し、背中に刀を刺したままこちらにフラフラと歩いてきた。

 その間に士狼は逃げた。


「お前、部下を可愛がってたんじゃねぇのかよ‼︎」


「あ? 何言ってんだてめぇ…? 可愛がってるからやり返しに来たんじゃねぇか‼︎」


「黙れ‼︎ 士狼もお前の部下じゃねぇか‼︎ …人種差別か。“ヘッズ”と“テイルズ”はそんなにも違うのか‼︎」


「あぁ、全然違う‼︎ “テイルズ”の部下なんて、ただのコマ同然だ‼︎」


「…‼︎ さては、士狼を殴ったのお前だな…? 無理やり俺の居場所を突き止めたんだろ‼︎」


「ふん、よくわかってんじゃねぇか。」


 俺はかなりダメージを負っていた。

 だから一瞬、またキンタマを殴ってアウトサイダーを呼ぼうかと考えた。

 でも、コイツの話を聞いて、俺は“殴らない”決断をした。

 俺が、俺自身の力によって士狼を守らなくちゃ意味がない。

 士狼はアウトサイダーにとってではなく、俺にとって、この世界での最初の“友達”であり、“仲間”だからだ。

 自分の力で守れなくて後悔するぐらいなら、俺は弱い自分でも精一杯戦い抜いて死んでやる‼︎

 俺は覚悟を決めたように、眉をひそめた。


「テイルズがなんだ…‼︎俺は士狼の友達だ‼︎仲間だ‼︎お前みたいなクソ野郎の部下が士狼だなんて勿体ねぇよ‼︎」


 遠くで士狼が2人の会話を聞いていた。

 俺の言葉を聞いて、士狼は涙を流していた。

 滝のように流れ落ちた。

 ずっと1人だった士狼にとって、友達だ仲間だと言われたのが初めてだったからだ。


「勝手に言ってろ…‼︎ 死に急ぎ野郎め…‼︎」


「刀が危険だと知っていて、持ち込んで来るバカに言われたくねぇよ…‼︎」


 2人は威勢のいいことを言いながらも、フラフラの状態だった。

 俺は跪いた。

 大量出血により、立てなくなってしまった。


「終わりだ…‼︎」


 男は攻め立てるように走って来た。

 そして、殴ろうとした時──


──ニヤッ


 俺は笑った。


──ザザザッ‼︎


──スパスパッ‼︎


 木片の山の中から無数のフォークやナイフが飛び上がり、そのまま男を切り裂いた。

 数個が男の身体に突き刺さった。


「ぐはっ‼︎」


 そして男は立てなくなり、跪いた。


「わ…忘れてもらっちゃ困るな…お前が作ったこの山は…元々“家”だったんだぜ…‼︎」


「こ…このクソ野郎が……」


 男はそのまま倒れ込んでしまった。

 俺が俺自身の力で初めて勝ち取った勝利だった。

 士狼は遠くから男が動かなくなったことを確認し、俺の元まで駆け寄って来た。

 そして膝立ちで、俺を抱き寄せた。

 士狼はずっと大泣きしていた。


「ありがとう…僕のために、ありがとう…」


「何泣いてんだよ…俺たち、助け合った仲間だろ…? 困った時はお互い様だ…次からは嘘つくんじゃねぇぞ…?」


「うん…」


 士狼の涙は止まらなかった。

 前世で悩んだ『助けて助けられる関係』を今、実感できたからだ。

 もう一度生き直してよかったと心から思った。

この世界で孤独ではないという安心を感じた。

 俺はまだこの時、そんな士狼の過去を知らなかったが、こうやって『磁力』のように惹かれ合う運命にあったのかもしれない。

 俺は次第に意識が朦朧とし、士狼の温かい胸の中ですぐに目を閉じてしまった──


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