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o゜包o≡ 足=  作者: 〇樽小樽
ep.1飛行バイクと飛行魔法
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 どんっ。一蹴りで速度をつけ右に飛んだ。

 視界の端で、リュカが真っ直ぐ魔獣の正面に飛んでいく。あわや激突、の直前で飛行バイクの前輪が上がった。そのまま急上昇。魔獣がつられて頭を上げるのを、楠は魔獣の背中側から見ていた。


 陽動飛行とは、魔獣の注意を引くところから始まる。これ見よがしに魔獣の周囲を飛んで、とにかく目立つ。途中で注意を逸らされてはいけない。魔法陣が設置されるまでの間、常に魔獣を引きつけ続けるのだ。


 魔獣が一つ羽ばたいて身体を傾ける。大きく旋回し、左に進路を切った。


 「こっちに来たね。このまま魔法陣隊から引き離すよ」


 魔獣がこちらに釣られたら、まずはとにかくその場から離れる。飛行艇の方角では魔法陣隊が今まさに魔法陣を描いている。その邪魔をさせないためにも、魔獣の進行方向を変える必要があった。


 「シュガーの6時の方向、そっちに行きすぎると町があるから、反対方向に行こう」

 「分かった。前、横切るよ」


 ぐるりと回った魔獣が滑空しながら進んでいく。

 楠はその場でジャンプするように空を蹴って上昇した。その場で身体を縮める。

 ぐっ、ぐっ、どんっ。瞬間、最高速でその場を飛び出して、魔獣の行路を横切るようにその身を躍らせた。

 ぶわっといっとう大きな風が吹く。一瞬押し流されかけて、咄嗟に高度を下げた。仰向けになった視界に自分の足と魔獣の腹が見える。びゅん、と一瞬でその白い腹が通り過ぎた。


 「シュガー、大丈夫?」

 「平気。そっち行った」


 すぐさま腹筋の要領で起き上がり、再び飛び上がった。魔獣の広い翼の向こうでリュカがエンジンを吹き上げるのが見えた。ぐんぐん姿が遠ざかる。置いていかれるわけにはいかない、その背を追いかけた。

 

 流石だ、と、こんな状況なのに感心してしまった。

 全力で直進したかと思えば突然下降したり、細かくS字を描いてみたり、そうやって魔獣を翻弄しながらも完全に認識から外れることがないように飛んでいる。徹底して自分を追わせる飛行。その進路選択も、それを可能にするハンドルさばきも、なるほどこれが陽動飛行隊隊長かと思わせるに値していた。

 もし楠が飛行バイクの免許を取れていたとして、あれだけ飛べたかと問われると中々厳しい。慣れもあるだろうけれど、あれは多分、分かって飛んでいる。自分がどう動けば魔獣はどう動くか、そうしたら次はどうなるか、全部理屈づけた上で、それを再現するように飛んでいるのだろう。

 陽動飛行の教科書通りだ。ドローンを使った訓練の前に読んだ。それくらい綺麗で正確無比な陽動飛行だった。


 空の坂を下っていく。リュカと魔獣の距離は少しずつ縮まっていた。このまま引きつけて、どこかで上昇して逃げるつもりなのだろうか。それなら自分は彼らがUターンしてきた時に備えてこの辺りで待機して、と思ったその時。

 リュカより先に魔獣がその巨体を持ち上げた。魔獣が舞い上がる。その下でリュカが一瞬こちらを振り返った。


 「……あ」


 これか。運が良いとやら。

 今リュカが上昇していたら、確実に魔獣と衝突していた。下降を続けたのは命を守るナイス判断だ。

 しかし、陽動飛行のセオリーとしては、あそこは上昇するシーンだったように思う。そういう意味では、今の飛行はリュカの操作ミス、という扱いになるだろう。

 操作ミスが命を救った。これは確かに、運が良い。リュカが魔獣の視界から外れてしまったという点を除けば、だが。

 楠は、ようやく自分が必要とされた理由が分かった気がした。

 

 トップスピード。昇る魔獣の上を駆け抜ける。煽るようにその場でくるりとターンしてみせれば、魔獣は完全に標的を楠に定めたようだった。


 「シュガー! 無茶しないで!」

 「ある程度上がったら真っ直ぐ降りる」

 「あぁっ、もう」


 上へ、上へ。魔獣が見えるくらい、でもできる限り角度を付けて昇っていく。

 流石に背後を振り返る余裕はない。それでも分かる。圧倒的な圧。魔獣は追ってきている。

 もっと上へ。もう少し、もうすこ、し。一瞬息が詰まった。直ぐに治る。ふと眼下から迫る存在感が薄れたことに気が付いた。よし、もう十分。

 とんっ、と空を蹴り上げる。頭と足がひっくり返ってひやっとした。あまりとったことのない姿勢。でも、これが一番速い。


 そのまま太陽を蹴飛ばした。


 魔法と、重力と、あとは分からないけどなにか勢いとか。そういうのを全部乗せた垂直落下。後ろを来ていた魔獣と目が合って、そのくちばしの先を滑り落ちた。


 地響きのような音がする。それが魔獣の鳴き声だと気が付いた時には突風が吹き荒れていた。魔獣が大きく羽を動かしたのだ。その反動で体勢を立て直し、ぐんと急降下で楠を追ってくる。


 「むちゃくちゃだ……」


 ごうごうと風が鳴る中、小さくそんな声が耳元で聞こえた。なんとも高性能な無線である。

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