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o゜包o≡ 足=  作者: 〇樽小樽
ep.1飛行バイクと飛行魔法
16/66

14

 「ところで、結局楠さんは何故ここに? この辺りは研究部隊のエリアですよ」


 オルテンシアは僅かに眉を顰めて尋ねた。

 そうだ、忘れていたが、楠はガレージに向かう最中だったのだ。その途中で迷子になった、と端的に伝えると、彼女は呆れたように息を吐いた。


 「もう。私が通りかからなかったらどうするつもりだったんですか」

 「リュカに連絡しようとは思ったんですけど、目印がなくて」

 「……なるほど」


 オルテンシアはこめかみに指を当てた。なんとも居心地が悪い。あれだけ相談に乗ってもらった後だからこそ、なおさら。


 「とりあえず、今後同じことがあった時は先にバディに連絡してください。シモン隊長なら目印がなくても現在地が分かるはずですから」

 「でも、ここ本当にドアと窓しかないですよ」


 言いながら見渡す。見る限り続く通路と、所々の扉と窓。オルテンシアの発言でようやく扉の先が研究部隊? の部屋なのだろうと予想は付いたが、言われなければ全く分からない。

 そんな場所を、あまつさえ楠の口頭説明だけで把握できるのだろうか。

 疑いの目を向ける楠に、オルテンシアは何故だか少し不満気に唇を尖らせた。


 「分かりますよ。シモン隊長はギルドに所属されて長いですから」


 その表情の理由を探る前に、オルテンシアはくる、と踵を返した。数歩歩いて、その場に立ち止まったままの楠に気が付き顔だけ振り返る。


 「ほら、付いてきてください。ガレージですよね?」

 「あ、はい」


 案内してくれるのだ、と気が付いた時にはオルテンシアは再び歩き出していた。少し小走りに彼女の背中を追う。


 「あの」

 「なんですか?」

 「ありがとうございます。助かります」

 「ふふ、当然です。隊長ですから」


 横目で見やったオルテンシアの顔には得意気な笑みが浮かんでいた。


 「あ!」


 曲がり角を右に、その2つ先を左、1つ分かれ道を真っ直ぐ進み、すぐ右、また左、まっすぐ。

 途中まで覚えていようと思った道のりはすっかり飛んでしまった。この飛行艇広すぎる。

 だが気が付けば周囲の景色は見慣れたものになっており、ふと顔をあげた先でリュカがきょろきょろと視線を彷徨わせていた。

 楠達を見つけ、リュカは声をあげた。急いでこちらに駆けよってくる。


 「シモン隊長、お疲れ様です。それから通路は走らないように」

 「あぁ、オルテ……」


 オルテンシアが咳払い。


 「……コンティ隊長。お疲れ様です」

 「はい。隊長たるもの、職場での振る舞いにはお気を付けくださいね」

 「はい……」


 オルテンシアにぴしゃりと言われ、リュカは頬をかいた。

 そういえばこの男、アレサンドロのことも名前で呼んでいた気がする。距離が近いというか、なんというか。

 

 「あの、2人がどうして……」

 「迷ってたのを助けてもらったの」

 「え」

 

 あったことを話せば、リュカは目を丸くした。


 「シモン隊長。監督不行き届きではありませんか?」

 「あーいや、本当に。すみません、ありがとうございました」


 半眼で見上げるオルテンシアに、リュカは何度も頭を下げる。

 リュカは比較的高身長、対してオルテンシアは楠より目線が低い。それなのに、今この瞬間はすっかりリュカの方が小さく見えた。立ち居振る舞いというものは大切だ。

 そんなリュカを見て、オルテンシアは肩の力を抜いた。


 「ですが良い機会でしたよ。私も楠さんとお話ししたかったので」


 顔を向けられ、楠は間髪入れず答える。


 「私もです」

 「あなたさっきまで私のこと知りませんでしたよね?」

 「……お話しできてよかったです」

 「否定はしないのね……」


 嘘は吐けない。時に今回に関しては今更「知っていました」なんて言ってもバレているし。

 だが、オルテンシアと話せてよかったのは本当だった。そう告げると、オルテンシアは僅かに頬に朱を差しながら微笑んだ。


 「それでは」


 会釈しその場から立ち去るオルテンシアの背に、楠とリュカは頭を下げた。

 その足音が聞こえなくなって頭を上げると、隣に立つリュカが楠を見下ろしていた。


 「コンティ隊長と仲良くなった?」

 「仲良くかは分からないけど、話せてよかったのは本当」

 「そっか。良かったね……って言っていい?」

 「うん」


 繰り返しになるが、本当に良い出会いだった。

 ここで彼女に会ったという事実は楠の今後に大きく影響するだろう。

 人柄も楠にとって大変好感が持てる人物だった。楠はあくまで臨時の隊員でしかないが、それでも彼女を知れたことには「良かった」と評したい。


 「ふぅん」


 が、そんな風に先程の出会いに浸っている楠の横で、なにやら言いたげな奴がいた。

 わざとらしく「ふーん」「へー」「ほー」だの言い続けるリュカを、楠は横目で見る。


 「……早く行かない?」

 「あっ、無視したね」

 「どうせ無益なことしか言わないから」

 「遠慮が無くなってきたのはバディとして良いことだけど、親しき仲にも、とも言うんじゃない?」


 それもそうだ。むやみに人間関係を荒らす必要はない。

 楠はしぶしぶ、しぶしぶリュカに向き直った。


 「じゃあ、はい、どうぞ」


 そして発言を促すと彼は数度瞬きして、すっ、と目線を逸らした。


 「……いや、いいよ」

 「あのさぁ」

 「ちが、いやほら、こういうのって鮮度があるっていうか」

 「鮮度」

 「その時じゃないとできないっていうか、後からやれって言われるのは違うっていうか」


 訳の分からないことで勝手に慌てているリュカは、いつになく早口で言葉を続けた。

 本当によく分からないが取り合えず何も言わなくていいらしい。変な奴だ、と思い楠は嘆息した。


 「変な奴だ」

 「きみもね」


 声に出ていた。

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