服毒して生き残った婚約者は聖獣を召喚してから婚儀を行うって本当ですか?【連作短編②】
短編「服毒して生き残ったら王太子妃になれるって本当ですか?」の続編になります。
前の作品を読んでいなくてもお楽しみいただけます。
見目麗しく、聡くて優しいシーダム王国の王太子ルートロックは38人の王太子妃候補の中から、どのような人物を選べば良いか長年悩んでいた。
母親である王妃陛下が毒により崩御していたので、毒に関する知識のある女性が好ましいと心のどこかで願っていたところ、ルートロック王太子が思いついた王太子妃の選考方法が「服毒して生き残ったら王太子妃にする」という類を見ない決め方だった。
死に至る毒の入った盃も用意していたため、令嬢の誰一人として挑戦することもないだろうから王太子妃はしばらくは決まらないだろうと、その場に居合わせた誰もがそう思っていた。
しかし、王宮の広間で静かに手を挙げ、果敢にも服毒するという女性が現れた。彼女は毒を煽ったものの、殿下との会話を上手に誘導して毒を中和させることに成功する。
知的でルートロックの策略を逆手に取って自らの手で幸せを呼び込んだのは、ヘルムント辺境伯の一人娘、アラマンダ=ヘルムント。彼女が王太子妃に決まり、婚約後、あとは婚儀を迎えるだけだった。
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「ルートロック王太子殿下。お尋ねしたいことがございます」
側近のサルフは、婚儀前の確認事項としてルートロック王太子殿下の執務室で事務作業を行っていた。
「ルートロック殿下。先代も先々代も失敗してしまいましたが……」
「サルフ……何の事だ? えらく歯切れが悪いではないか」
途中まで言いかけたのに、声が尻つぼみになっているサルフにルートロックは笑いながら、先を促す。
「恐れながら、婚儀の前に『聖獣召喚の儀』を行う習わしがありまして……」
「あぁ、創世記に記されている召喚の儀だろう? それがどうした? 魔法陣に問題でも起きたのか?」
ルートロックはサルフが何を躊躇っているのか、皆目見当もつかない。
「ここ数百年、王太子妃になられる方はこの『聖獣召喚の儀』を執り行っておりますが、何も召喚できておりません。それでも、ルートロック王太子殿下はこの儀を執り行いますか?」
「ふっ。 なんだそんなことか」
ルートロックは、やっとサルフの言いたいことを理解し苦笑する。時間をかけて行うのにも関わらず、何も召喚できないこの儀式を本当にやる意志があるのかと確認しているのだ。
「別に失敗してもいいではないか。王太子妃となる者が何も召喚できなくとも、私がすでに聖獣を召喚できているのだから特に問題はないだろう? 時間はかかるが、創世記に記載されている婚儀前の手順であれば何かしらやる意義があるに違いない」
「左様でございますね。それでは近日中に儀式を執り行えるように取り計らっておきます」
そういうとサルフは、執務室を後にした。
(創世記に記載されていることはやっておくべきだ。 何かしらの恩恵を受けられる可能性もある。 やってみてダメなら納得だが、万が一、聖獣召喚に成功できれば、この国は更に強固になるだろう。しかし、その恩恵が何だったのかは……思い出せないな。 後ほど創世記を禁書庫から探し出して目を通しておくか)
ルートロックは、深夜遅くに禁書庫内で、王太子妃がなぜ『聖獣召喚の儀』を行うようになったのか、言い伝えと、手順、そしてその意味を確認しておいた。
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次の日。
ルートロックは、側近のサルフに頼んで妃教育の合間に婚約者のアラマンダを執務室に呼び寄せた。
「アラマンダ、妃教育は順調だと聞いている」
「恐れ入ります」
(彼女は優秀ですぐに記憶してしまうから、予定よりも早く妃教育が終わりそうだと報告を受けているけれど、それには触れないでおこう)
ルートロックは、いとも簡単になんでもこなしてしまうアラマンダは素晴らしい女性だと、改めて日々感じていた。
「今日、ここに呼んだのは聞きたいことがあってな。 婚儀の前に執り行う儀式についてだ」
「はい。存じております。 ルートロック殿下、王太子妃となるものは聖獣を召喚してから婚儀を行うって本当でございますか?」
(なんだ……もう既知の情報だったか。側近のサルフが彼女にもう説明していたのだろうか……)
ルートロックはアラマンダに詳細を説明しなくても、すでにどんな儀式を行うか知っていたので少し驚く。
「ああ、本当だ。 王太子妃になる女性は、婚儀の前に聖獣の召喚を行うという儀式があるのだが、ここ数百年、王太子妃となる者で聖獣を召喚できたものは記録を見る限り存在しない」
ルートロックは、成功率の低さについて言及する。
「左様でございますか。 簡単に召喚できるわけではないのですね」
「私は、この『聖獣召喚の儀』をそなたにやってもらいたいと考えているのだが……執り行ってもいいだろうか?」
そこまで、ルートロックが言うとアラマンダはうふふふと笑う。
「ルートロック殿下は、私が失敗して落ち込むことを心配なさっているのですか?」
「いや。そうではないが、そなたの意志を尊重したいと思って、確認の為、聞いてみたのだ」
「それは、お気遣いどうもありがとうございます。この儀式は創世記に記載されていることなのでしょう?」
王族しか知りえない情報をなぜ知っているのかと、一瞬、ルートロックは目を瞠る。
「そんなに驚かないで下さいませ。王太子妃となる者は婚約後は禁書庫に入室できますので、創世記に目を通しただけですわ」
「そなたは……あの分厚い本の中に記載されている召喚の儀について、もう目を通したというのか?」
「えぇ。もちろんですわ」
ルートロックは、忙しい王太子妃教育の合間のどこにそんな読書をする時間があるのか、彼女の能力の高さに驚きを隠せない。
(彼女の知識欲には目を瞠る物がある。何でも自ら情報を手に入れてすぐさま知識に変えてしまうのは、誰にでもできることではないからな。あぁ、そんな彼女だから私はすぐに恋に落ちてしまったのだが)
ルートロックは、自分の今まで経験したことがない恋情がどんどん溢れてくるのを自覚する。
(彼女を知れば知るほど、好きになってしまいそうだ)
「では、なぜこの儀式が必要かも、すでに理解しているのか?」
「えぇ、もちろんですわ。 婚儀の前に王太子妃が聖獣を召喚することができると、その治世はとても安泰になるとのことでしたわね。 あとは、隠された意味としまして、聖獣が召喚できている状態で、初夜を迎えると将来、子供に加護が授かるのだとか……うふふふ。そんな記載を読んでしまったら、聖獣を召喚して、是非ともルートロック殿下との初夜を迎えたいと望んでしまいますわ」
「さすがだな。そんな気位の高いそなただから私は惚れてしまったのだが。 そなたを愛せる私は幸せ者だな」
アラマンダは、ルートロックの不意打ちの甘い言葉に反応してしまった両頬に、手の平をあてて赤くなった頬を覆い隠す。
(あぁ。豪気な女性なのに、いきなり少女のような恥じらう可愛い仕草をする落差にも私は魅力を感じてしまうな)
ルートロックは、自分の中の愛情がどんどん育っていることを楽しんでいた。
「ちなみに、ルートロック殿下は聖獣を召喚されているのでしょうか?」
「あぁ。一体だけだけどな」
「ちなみにどんな聖獣でしょうか?」
アラマンダはルートロックの召喚獣が気になって仕方がない。
「私の聖獣は……ドラゴンだな」
「まぁ、それはなんと勇ましいのでしょう。普段、そのドラゴン様はどちらにいらっしゃるのですか?」
アラマンダは、そんな大きい聖獣がこの王宮のどこに住まわれているのか気になって仕方がない。
「あぁ。私の聖獣はここにいる」
そう言いながら、指にはめてある紋章付きの指輪を見せる。一見、普通の指輪に見えるここにそんな大きなドラゴンがいるなんて、想像もしていなかったアラマンダは口元を左手で覆い、目を大きく見開いた。
「すごいですわね……ここに……殿下の指に一緒にいらっしゃるなんて想像していませんでしたわ」
「そうだな。私も召喚するまでは想像できなかったんだが、どうやら召喚された聖獣は呼び出された相手の傍にいると心地よさを感じているみたいだぞ」
「へぇ~存じませんでした。何が召喚されるか、全くわからないのですよね? 自分で何を召喚したいか決めることはできないのですか?」
アラマンダは、希望した召喚獣が出てくるものか気になってルートロックを質問攻めにする。
「私は、召喚さえできれば、この国は安泰だと思っていたから、大それた希望は抱かずに臨んでしまったかな。今、思えば何かしら希望の聖獣を思い描いてみても良かったかもしれないが、私はこのドラゴンを存外気に入っているんだよ。 ただし、記録によると、希望をした召喚獣を呼び出せた……という話も言い伝えで残ってはいる。それがたまたまだったのかは、わからないがな」
「そうなのですね。かしこまりました。では、私はその言い伝えの検証を兼ねて、希望した召喚獣が出てくるのか挑戦してみますわ。 何も召喚できないかもしれませんが、その時は私と相性の良い召喚獣がいなかっただけだと解釈することに致します」
アラマンダは、この儀式で自分の願った召喚獣が出てくるのか試みるという。
大事な儀式だというのに、望み高く行動を起こす彼女にルートロックは、自分に持ち合わせていない気概があることを好ましく感じていた。
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『聖獣召喚の儀』を執り行う日。
ルートロックとアラマンダは、王宮の地下にある『召喚の間』に向かった。『召喚の間』には大きな魔法陣が描かれている。はるか昔の大魔術師が描いた魔法陣が遺跡から発見され、その上に現在は王宮が建てられているからだ。
「アラマンダ……どんな聖獣を召喚してみたいか決まったかい?」
「えぇ。もちろんですわ。でも、何を希望しているのかは……殿下にも秘密です。 召喚すらできずに何も出てこないかもしれないでしょう?」
アラマンダははにかみながら、少しだけ緊張した面持ちでルートロックにほほ笑みかける。
(聡くて優しい彼女なら、きっと何か召喚できてしまうではないかと期待してしまうが、数百年、王太子妃が召喚できていない記録を見るに……失敗する可能性は高いだろうな……)
ルートロックは過度な期待はせず、静かに滞りなくこの儀式が執り行われることだけに集中をする。
(この儀式が終われば、あとは婚儀をあげるだけだ。 成功しても、失敗しても彼女と夫婦になれることは間違いないからな。 私はむしろ夫婦になれるということの方が嬉しい)
『召喚の間』には二人の他に、側近のサルフ、王宮魔術師長、近衛騎士団長、王宮騎士団長が集められている。
召喚される聖獣は呼び出した相手と自動的に契約を結び、契約者を好いてくれるというのが通説なのだが、予測不能の事態を想定して限られた人物だけ同席が認められている。
他の意味合いとしては、不正を防ぐ為、少し離れた場所から儀式が滞りなく遂行されるのを見守るという役割がある。
「さぁ、時間だよ。アラマンダ」
「はい。行ってまいります」
ルートロックはアラマンダを一度ギュッと抱き締めてから、彼女の額に唇を寄せる。それから添えていた手をそっと優しく前に押し出し、魔法陣の中にゆっくり歩いていく彼女を見守った。
「では、始めます」
王宮魔術師長の言葉を合図に、魔法陣がゆっくりと光輝く。
眩しくて目が開けられないアラマンダは瞼を閉じて、両手を組み胸の高さまで持ち上げて、召喚したい聖獣を思い描いているように見える。
ファーーーーーーン
魔法陣全体が真っ白い光に一瞬の内に包まれて、輝きが最高潮となった。
その後、ゆっくりと光は徐々に弱くなっていく。
無事『聖獣召喚の儀』が終わったことを示していた。
その場に同席していた者は、魔法陣の光が弱まり始めアラマンダの身体が少しずつ見えてくるのを見守り続ける。
(何も……聖獣は……いないようだ)
アラマンダの周囲に視線を向けても、召喚された聖獣は確認できない。
その場にいた誰しもが……何も召喚できなかったことを残念に感じて、やっぱり王太子妃になる者による『聖獣召喚の儀』は失敗に終わったのだと落胆をする。
ルートロックは、いくら気丈に振舞っていたと思っても、アラマンダも気落ちしているだろうと彼女の背中に向かって何と言葉をかけようか、言葉を探しながらゆっくりと近づいて行く。
その時。
アラマンダが、ルートロックの足音に気が付いたのかガバッと後ろに勢いよく振り返る。
彼女は満面の笑みで、ある聖獣を腕の中に抱いていた。
「ルートロック殿下! やりましたわ!!」
その場にいた誰もが失敗したと思い込んでいたため、聖獣が召喚されたことをいまだ信じられないようだった。
側近のサルフを始め、他の者たちは殿下が初めに述べる言葉を聞こうと静かに待つ。
「おぉ! 素晴らしいじゃないか! おめでとう!! アラマンダ!!!」
「「「「 おめでとうございます!! 」」」」
ルートロックのその言葉を聞き終えてから、同席していたサルフや王宮魔術師長、近衛騎士団長、王宮騎士団長が口々に祝福の言葉をアラマンダとルートロックに贈った。
ルートロックはアラマンダの腕の中にいるフサフサもこもことした姿を見て、その聖獣が何か判断しようとするがけれど、その聖獣が丸まっていて全体像がわからない。
一方アラマンダは、感極まり、我を忘れて何やら叫んでいる。
(くっ、彼女の可愛い表情が見られただけで、今日は満足だ)
ルートロックは、聖獣も気になるが初めて見せてくれるアラマンダの表情の方が気になってしまう。
「はわわわわ~。最高ですわね~。あら、いけない。 殿下!! どうぞ、ご覧下さい!」
喜びの声を上げて、聖獣を手の上に乗せて両腕を前に差し出すアラマンダを、その場にいた全員が刮目して見る。
「こ……これは……」
正体がわかって驚いたルートロックの言葉に、アラマンダが決定的な言葉を投げかける。
「猫ですわ!!!」
その場にいた全ての者が予想していなかった聖獣を見て、間の抜けた顔をしている。
「ポカンとする」とは、こういう時に使うのだろう。
「ね、ねこ?」
サルフも、召喚されないよりか召喚された方が断然良いと思っていたが……まさか聖獣として猫が召喚されるとは予想していなかった。
猫を凝視していたルートロックはアラマンダに一つの質問をする。
「この猫は、そなたが召喚を希望していた聖獣なのか」
「えぇ! そうですの!! 希望通りの聖獣を呼び出すことに成功しましたわ!!」
喜びを隠せないアラマンダを見て、ルートロックの表情も柔らかくなり笑みがこぼれる。
ルートロックには、わかったことがある。
アラマンダはこの儀式で証明してくれた。
まずは、希望した聖獣を召喚できることがあるということ。
そして、聡い彼女が悩み、考えて選んだ聖獣なのだから、この可愛らしい猫は……誰もが考えつかないような能力を秘めている可能性が高いということを。
(まぁ、彼女の真意に気づいているのは私だけで十分だ。 なぜなら、私が彼女の夫となるのだから)
彼女を理解できるのは、夫だけの特権だと思うとルートロックは更に彼女が愛おしい存在に感じられてくる。
そのことに気が付かないサルフや、騎士団長たちには可愛らしい猫を召喚して喜んでいる、ただのご令嬢にしか見えていないのだろう。
「いや~とても可愛らしく癒される聖獣ですな~」
「アラマンダ様は小動物がよく似合いますな」
「この純白の雪のような毛並みは、王族の猫に相応しいですな」
などと、ありふれた美辞麗句を並び立てている。
「アラマンダ。そなたが望んでいたものが召喚できたなら、素晴らしいじゃないか」
ルートロックはアラマンダの身体を後ろから優しく抱きしめ、彼女の腕の中にいる真っ白な毛並みで翡翠色のつぶらな瞳の猫に視線を送る。
「王宮魔術師長、今、魔獣や聖獣の能力を測定する水晶は持っておられるか?」
「はい。持っておりますが……もしや、測定されるのですか?」
「あぁ、もちろんだ。 聖獣が召喚できたのだからな」
「……かしこまりました」
猫は測定しなくていいだろうと王宮魔術師長の表情が物語っている。
「あら? 測定していただけますの? 嬉しいですわ」
「にゃ~」
その時、初めて猫が声を発する。
「あら、猫様。素敵なお声ですわね。まるで、人間の言葉を理解して返事をしてくれたみたいですわ」
「もちろんだとも」
(聖獣なのだから、人の言葉は理解できているはずだ)
ルートロックは、やはりただの猫ではないと確信する。
王宮魔術師長が測定の準備をしている間に、アラマンダは能力測定についてルートロックに確認してくる。
「あの水晶を通して、聖獣を見るとその能力値が数値化されるようになっているんだ」
「そうなのですね。ちなみにルートロック殿下のドラゴン様はどれくらいの数値が出たのですか?」
「ん? 確か……あの水晶で測定できるのはレベル9999が最高値らしいが、ドラゴンは9000だったはずだ」
「まぁ。とってもお強いのですね」
「そうだな。聖獣がいると思うだけで、知らない間に恩恵を受けているんじゃないかという安心感はあるな。さぁ、準備ができたようだぞ」
アラマンダはルートロックに指示されたように静かに猫を床に置き、王宮魔術師長の手の上にある水晶に現れる数値を一緒に見ようとルートロックと並び立つ。
「では、始めます」
王宮魔術師長の合図、水晶に数字が浮かび上がる。0からスタートして数値が一瞬にして9000を超えたと思った時。
パリンッ
王宮魔術師長の手に持っていた水晶が割れてしまった。
「……大変、申し訳ございません。水晶にヒビが入っていたようで、気が付きませんでした。新しい物を持って参りますので、少々お持ちいただけますでしょうか」
ルートロックは、その申し出を断る。
「もう良い。十分だ。ありがとう」
その言葉を聞いたその場にいた者は、『猫は大した数値が出ないから、高価な水晶をまた持ってきて測定するほどのことではない』という意味だと、殿下の意図を誤解して受け止めた。
本来は、逆なのに。
ルートロックもアラマンダも気が付いていた。
次に測定しても同じく高価な水晶は割れてしまうに違いない。
この猫は、レベル9999を遥かに超えているため、『測定不能』だと。
そのことに気が付いた二人は、視線を合わして、アラマンダは再び猫を腕に抱き上げる。
「うふふふ。嬉しいですわ。 ぷにぷにしている肉球も最高ですわ!」
「そうだな。そなたの希望の聖獣が出てきたことを私も誇らしく思うよ」
ルートロックはアラマンダの肩を抱き、一緒に『召喚の間』を後にした。
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その後、王太子妃となるアラマンダが召喚した猫は、もちろんただの猫ではなく聖獣であって、豊穣、多産、疫病退散など多数の能力を有し、司る猫だと判明した。
彼女は世界中の書物を読み漁り、希少な上に能力の高い猫の聖獣に着目したのだ。
敵国が攻めて来た時も、「聖獣は可愛い猫らしい」という情報を聞いただけで、嘲り笑ったため、本気になった猫の聖獣の力を見て、恐れをなした敵軍はあっという間に霧散し敗北を認めた。
見た目で相手の力量を決めてしまうことは命取りになる。
この聖獣の猫の存在で、皆そのことを学んだ。
可愛いだけじゃない。
類い稀な可愛さと能力で二人の治世を支え続け、太平の世に貢献したと後世まで伝えられ、猫だからと決して軽んじてはいけないと世に知らしめたのである。
もちろん、王太子妃として聖獣を召喚していたアラマンダとルートロックの婚儀は素晴らしいものとなり、初夜に関する言い伝えも真実なのだと、二人の子供たちが加護を授かったことで、それを証明してみせた。
最後まで読んで下さりありがとうございます!
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