その10〜その12
その10
ふとボクは あることを 思いついた。
それは この子猫の名前を クレヨンと
名付けて欲しかった。
そう思ったので その少女に
こう言い出した。
「これで本当に最後のお願いなんだけど
この子猫に クレヨン と
名前を付けて 欲しいんだ
いいかな」
と そうボクは 言った。
その少女は けげんそうな顔をして
「どうしてなの?
どうして クレヨン なの」
と 不思議そうに 聞き返してきた。
ボクは 子猫の名前を 決めるときのことを
丁寧に 少女に教えてあげたのだった。
その11
そして最後に
「だから クレヨン という名前にしたから
君の家でも クレヨン という名前で
呼んで欲しいんだ」
その少女は その話を聞いて 楽しそうに
「良かった この子猫を 大切に
思ってくれる人に 拾ってもらって。
わたし感動しちゃった。
ありがとう。
これからも この子猫を
クレヨン という名前にするね。
良い名前だね ありがとう。
それじゃ わたし このクレヨンを家に
連れて帰るね。
それじゃあ ありがとうございました
サヨナラ〜」
そう言い残して その少女は
子猫のクレヨンを 段ボール箱ごと
持って帰ってしまった。
その12
そして ボクは あの少女の
別れぎわに 密かに 黒の本物のクレヨンの方を
もらっていた。
そのクレヨンは いつも机の中の
すみにあって そのクレヨンを取り出しては
あの三毛猫の 子猫の方を 思い出して
いたのだった。
そして それは 数年間 続いて
どこでクレヨンを見ても 子猫のクレヨンを
思い出して つい
「クレヨンという猫か」
と つぶやいていたのだった。
それが クレヨンという名の猫と ボクの
出会いと 別れの物語なのでした。
おしまい