その7〜その9
その7
どうするか困ったがあげく その少女に
もうその子猫が 捨てられることがないか
聞いてみた。
そうしたらその少女は どんなことがあっても
子猫を守るし 一生飼いつづけると
誓ってくれたのであった。
そこまで 言ってくれた 少女は
その子猫クレヨンを 一生大切に
してくれるだろうと その真剣な
少女の顔を見て わかってしまった。
ボクは その少女に 子猫クレヨンを
返すと言って その場所で 待って
もらうことにした。
そして急いで 家まで帰って
クレヨンを見てみると やっぱり人を
魅入るような なんとも 不思議な魅力を持った
子猫だった。
ボクは 約束だから仕方ないと 思いつつ
クレヨンを あの段ボール箱に そっと
入れたのだった。
その8
クレヨンを 段ボール箱に 入れたついでに
あの黒の本物の クレヨンの方も
片すみの方へ 入れておいたのだった。
そして 覚悟して そのクレヨンの入った
段ボール箱を 少女のところまで
ボクは どうしてこんなことになったのだろう
少しの間の幸せをくれた クレヨンに
「ありがとう」 と 心の中で
叫んでいた。
少女のところまで たどり着いたときには
ボクの気持ちは とても落ち込んで
クレヨン クレヨン と心の中で
何度も 言わずにはいられなかった。
少女に クレヨンを渡すときに
その少女は とても喜んで
「ありがとう ありがとう わたしの子猫を
ありがとう 一生大切にするね」
と 言われた。
ボクは そう言われたときに 本当に
クレヨンと別れるんだと そう思ったら
悲しくて 泣きそうになった。
その9
泣きそうになったボクは 悲しみのあまり
その少女に こう言ったのだった。
「すまないけど 最後に その子猫と
お別れのために 抱っこしてもいいかな」
と お願いした。
そう 言われた少女は
「いいよ その子猫を 助けてくれたお礼に
最後の抱っこをしても いいよ」
と 段ボール箱の中から 子猫クレヨンを
抱きかかえて 渡してくれた。
やはり その子猫クレヨンは そのきれいな
毛色と ブルーの目の色で ボクを
魅了してしまった。
それでも 自分の心を鬼にして 最後に
抱っこして 少女に 返したのだった。
そして
「ありがとう この子猫を かわいがるんだよ」
と 念を押して 言ったのだった。