その1〜その3
その1
その子猫が 「ニャー」 と 鳴いていた。
それは 小雨が降っていた 真昼のことだった。
ある日 散歩をしていると 道路のすみっこに
小さな段ボール箱が置いてあって ボクがなんだろうと
近くまで行くと 突然 「ニャー」 と
小さな猫の鳴き声が 聞こえた。
少しびっくりもしたが なんだ捨て猫みたいだと
思って 何となくその段ボール箱の中を のぞいてみた。
なにげなく のぞいて見たら 思った通りというか
すごく綺麗な毛色の 小さな三毛猫が一匹 ポツンと
そこにいた。
その子猫の瞳は 透き通ったブルー 均等に
配色されたような 黒と白と茶の毛色で
ボクは すぐにその子猫に 魅入られてしまった。
そして 次の瞬間 段ボール箱ごと 自分の家まで
持って帰っていたのだった。
その2
家に持って帰った 段ボール箱と その中の子猫を
持って帰ったはいいが その子猫を 飼えるかどうか
悩んでしまった。
悩んだが 結局 その可愛らしい子猫を 見ていたら
どうしても飼おうと 心に決めたのだった。
そして ふと 思ったのが 夏目漱石の
「吾輩は猫である」 の冒頭の部分を 思い出していた。
確かあれは 「吾輩は猫である。名前はまだない」
という文章から 始まる小説だったはずと
そう思い出していた。
だから さっき持って帰って来た 段ボール箱の中の
子猫は どうしようかと思った。
さすがに 名前が無いのは 不便だし子猫が
可愛そうだと 思ったので どうしたものかと思った。
悩んだが どうしてもうまい 名前が思いつかないので
困ってしまう 自分がいた。
その3
名前を あれやこれやと考えていて そうだ
夏目漱石の 「吾輩は猫である」 から
名前を取って わがはいというのは
どうだろうかと ひらめいた。
だが その段ボール箱の中の 子猫の性別を
調べてみたら メス猫であることが わかった。
だからさすがに メス猫に わがはいは
なかろうと思い ボクはまた 名前を
考え直すことにした。
メス猫に ふさわしい名前など とても
思いつかなかったので 1時間たっても
なかなか 名前の候補が 浮かんて来なかった。
そうして ふと 子猫の入っていた 段ボール箱の中に
目がいった。
そこには 今まで気づかなかったが 黒のクレヨンが
1本だけ ポツンと 転がっていた。
ボクは その時 体中に電気が通ったように
ひらめきを感じた。