ペガスス座
病気の描写があります。苦手な方はすぐにブラウザバックをお勧めいたします。また、患者様を卑下したりするつもりはありません。ですが不快に思われたならご指摘していただけると幸いです。
初書きの為、見るに耐えないかもしれませんが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。
前置きも長くなりましたが、何卒宜しくお願い致します
『はじめまして、』
いつもと同じ時間、同じ場所に
居る君に声をかける____
つい最近まで肌寒かった気温は鳴りを潜め、ポカポカと暖かい日差しと満開の桜が春を告げる4月、俺は高校一年生になった。
中学時代仲良くしていた友達も皆別々の道を歩んでいる。
幸い、俺はあまり人見知りをしない方なのですぐに友達も出来た。どこか清々しい気持ちで外へ視線を移した。
男子生徒が1人、走っている。
遅刻でもしたのだろうか。入学初日から大変だなぁなどと他人事の様な事を思う。まあ他人事だけど。そんな事を考えながら、
先程から忙しなく話している教師の言葉に耳を傾けた。
一ヶ月が経った。入学初日に遅刻をかました男子生徒の名前は
"汐見和人"というらしい。黒髪に白い肌、華奢な体でなんとも頼り無さそうだ。しかし、お人好しでよく教師や同級生に頼まれごとをされては断らずにへらへらと引き受けている。そのくせに鈍臭いのでプリントをひっくり返したりバケツの水をひっくり返したりしていて見ているこっちがやきもきさせられる。
つい、声を掛けた。
「なあ、何で断わらねぇの?」
いつもへらへらして引き受けるから、周りの奴らが調子にのって雑用を押し付けているのに気づいているのか、気づいているとしたらお人好しにもほどがある。俺は何故かイライラしながら聞いた。すると汐見は恥ずかしそうにはにかみ一言、
「なんでだろ、、、」
はぁぁぁ??全く意味が分からない。もしかして頭が悪いのだろうか。俺は考えるのをやめ、作業を手伝った。
「えぇ!そ、そんな!悪いよ」
「うるせぇ。あと、俺の名前は榊理玖。好きに呼べ。」
「さ、榊くん!宜敷くね、」
汐見は嬉しそうに言った。
それからというもの、俺たちはよく一緒に居るようになった。クラスメイトは不思議がっていたが素知らぬ顔をした。
「汐見、帰んぞ。」
「あっ、うん!!」
教室を後にし、帰路についた。
一度だけ、汐見に「何故一緒に居てくれるのか」と聞かれた事がある。
「なんでだろ。」とあの日の
答えと同じ言葉を返すと、汐見は「そっか」と破顔した。
俺は段々汐見に惹かれていった、
欲しいと思った。気づいた時には口に出していた。「好きだ」
焦った。この気持ちを言ってしまったら今が終わってしまう、
全て崩れてしまう、でもそれは杞憂に終わった。何故なら、
お前が涙を浮かべながら「俺も好き」、なんて返すから。
柄にも無く泣きそうになった
あぁ、幸せだ、と思った。
でもそんな幸せも長くは続かなかった。
汐見が事故にあった。
____嘘だ、そんなわけない、
必死で病院まで走った。受付で聞き、部屋に駆け込んだ。
窓が開いてる。窓から吹き込む風でカーテンが靡いている。ベッドに汐見が座っていて、こちらを振り向いた。
いつもの木漏れ日のような笑顔がそこに在った。
「汐見.....」
「榊君って意外と泣き虫だね」
「うるせぇよ」
安心して涙腺が緩んだのか、
子供の様に泣きじゃくってしまったのは忘れてほしい。
暫くして汐見が退院した。
頭を打ち、何針か縫ったが後遺症などは無いらしい。
明日から学校へ行く、とメールがあった。無理はするなよ、と
返し携帯を閉じた。
違和感を感じたのは、高校ニ年の秋だった。汐見は最近妙に物忘れをするようになった。
あれどこに置いたっけ?あれなんだっけ?など、ありきたりな事で何もおかしくないがそれにしても頻度が多い。それに、汐見は忘れ物など今までした事が無かった。胸騒ぎがした。
どうやら汐見の両親も違和感を覚えた様で病院へ連れて行った。
" アルツハイマー型認知症 "
聞いたことはあった。でもドラマでしか見た事がなかった。
信じられなかった。医者によれば1年前の事故が原因だろう、との事だった。この1年で汐見の両親ともすっかり打ち解けていた俺は2人が涙を堪えながら話すのを呆然と聞いていた。
いつも通り楽しそうに話す汐見、
昨日の出来事が夢の様に思えてくる。夢であってほしい、そんな願望も虚しく、今日も探し物をしている。そんな汐見を見て
涙が込み上げてきた。でも、汐見が見ている前では泣きたくなかったのでぐっと堪える。
1番辛いのは汐見なんだ、と。
その夜は一晩中泣いた。
なんであいつが、あいつが何をしたんだ。今まで意識していなかった神様を強く憎んだ。
次の日、汐見はいつになく真剣な顔で近づいてきた。
「別れよう。」
心臓がどくんと大きな音をたてた。
「な、なんで、」
「榊君、辛そうだから」
目を見開いた。怒りが湧いた。
___ 何やってんだ俺、
「汐見、明日、出かけよう。10時に駅前集合な。」
そう言って荷物をまとめ教室を出た。
予定よりも早く着いた。昨日、あれから色々準備した。携帯を見て時刻を確認する。不意に肩を叩かれた。まだ約束の時間から30分もある。振り向くと
苦笑しているあいつの姿があった。
水族館を回り、昼食を食べて
映画を見た。夕飯はギリギリで予約したレストランへ行った。
我ながら良い段取りだった、、
と思う。帰りに公園へ寄った。
ベンチに座り空を眺める。
ペガスス座だ!なんて、それしか知らないくせに星を指差し2人で盛り上がる。
ふと汐見を見ると、年相応の笑顔を浮かべていた。
深呼吸をする、言うんだ、
「汐見、」
名前を呼ぶと、不思議そうな顔をして首を傾げる
「俺は、お前が辛い時にはそばにいたい。嬉しい時も悲しい時も、お前と一緒に居たいんだ」
ポケットに入れていた箱を開く
汐見は涙を流しながら恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、
「プロポーズみたい、」って
笑った。
あのプロポーズから一年後、
汐見の病状はどんどん進行していき、俺のことも忘れてしまった。でも、それでも話しかけるんだ。あの星空を見た公園で。
『はじめまして、』
初めまして、矢那木惺と申します。
誤字脱字、文章がおかしい、など至らない点もあったとは思いますが読んでくださりありがとうございました。