哀れな道化師
鎖に繋がれた哀れな道化師。
その姿に侮蔑の言葉をくれてやる。
道化師は笑う。
泣いているのか、怒っているのか、それとも楽しんでいるのか。
あるいはどれでもないのかもしれない。
その姿はあまりに滑稽で、だからふいに涙が滲む。
道化師は語る。
自分を語る。世界を語る。
その全てを騙る。
騙ることでしか自分を表現できないから。
鎖に繋がれた哀れな道化師。
その仮面を脱ぎ捨てた。
白日の下にその素顔が晒される。
そこには脱ぎ捨てたはずの、道化の仮面が張り付いていた。
哀れな道化師。
道化の仮面がお前の顔さ。
お前に顔はもうないのだ。
騙ることでしか自分を表現できないから、
騙ることでしか自分を表現してこなかったから、
騙る以外のことをお前は忘れてしまったのさ。
偽ることから逃げることはかなわない。
お前の全てが偽りの中にあるのだから。
鎖に繋がれた哀れな道化師。
その姿が滑稽で侮蔑の言葉をくれてやる。
道化師は笑う。
誰が侮蔑の言葉をくれるというのか。
ここにはお前以外誰もいないというのに。