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異世界建国記  作者: ガクト
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酔った勢いで異世界にアクセス

かつて一世風靡したゲームがあった。

その名も《異世界建国記》

タイトルでゲーム内容はわかるだろう。

異世界で国を作るゲームだ。

異世界には大小様々な国が乱立し世は戦国時代。

その中で最弱種族と言われる人間の国、その中でも弱小国家の王となりそこから国を興して時に戦争で時に搦め手で、他国を侵略していき最後は異世界制覇し世界の覇王を目指すというゲームだ。

ありきたりと言えばありきたりではあったが、絵が当時としては驚愕レベルで緻密、流れる音楽担当は当時大人気のバンド、そして数多ある魔法、種類豊富なサブイベント、随時行われるアップデートは当時高校生だった私を夢中にさせた。

当時クラスの半数はそのゲームで遊んでいただろう。

私はその中でも特にハマっていた口だった。

チュートリアルで大体のゲームのやり方を学ぶその過程で回したガチャで出た部下の声が凄い好みの声だったからという実にくだらない理由からだった。

勿論、シナリオの殆どでその声は聞くことは出来ない。

それでもサブイベントをクリアすると聞く事が出来たのでそれはもう取り憑かれたかのようにゲームにのめり込んだ。

課金は18歳からと規約に書いてあるのに、小遣いは勿論、雀の涙程度のアルバイト代すらガチャ代に消えた。

それでも足りず親のクレカを使い込んだのは悪かったと思うが今でも親戚が集まるとぐちぐちいうのはやめてもらいたい。


そう、それぐらいどハマりしていたゲームだけど、リアルはバーチャルより大事なのは当然だ。

私は当時高校生で時が経てば大学受験、ゲームにかまけて成績ガタ落ち、そこにクレカの使い込みというトリガーを引き、私はゲームを取り上げられて塾に放り込まれ……否応無しにゲームを引退させられたのだった。

最初はゲームをしたくて仕方がないゲーム禁断症が出たが、大学に合格する頃には落ち着いており、ゲームを親に返して貰ってもやる事はなかった。

そして大学を卒業して新卒として有名企業に派遣される事が決定して……彼氏こそいないもののそれなりに充実した日々。

だから今の今までゲームの事なんて思い出したりもなかった。

なのに何故やる事のない暇な休日に思い出しているかというと。

なんとなくついていたテレビでそのハマりにハマったゲームの続編が出ることを知ったからだ。

私がゲームに出会って実に10年、26歳の事である。

「いやー、懐かしいわぁ」

と、私は一人言を言う。

プシュッと朝からビールの缶をあけて煽る。

朝から酒を煽る26歳というのもどうかと思うがやる事のない休日なんてこんなもんだ。

上はタンクトップ、下はパンツ一丁という今地震が来たら逃げるに逃げられない系の部屋着に髪を無造作にまとめ、あぐらをかいて床に直接座って酒を飲む休日こそ最高である。

当時のゲームをやりたいなと思うが一人暮らしをするにあたってゲーム機は売り払った。

iDこそ残っているだろうが、最早プレイすることなど不可能だし今更ゲームなんてという思いもある。

今時女子代表の私はゲームより婚活だ。

ある意味人生賭けたゲームの真っ最中とも言う。

……まあ、あまり戦績がよくないからこんな休日を送っているのだが。

『続編はなんとインターネットに移植され、待望のオンライン化するんですってよー!』

テレビではタレントがわざとらしいくらい驚いた声をあげていた。

「オンラインねぇ」

今時のゲームはオンラインなんて当たり前である。

しかし当時のアプリゲームはオフラインだった事を思い出しこれまた時代を感じさせる。

『オンライン化によって当時よりもゲームの自由度があがりよりプレイしやすくなっているそうですよ』

「へー」

当時も自由度が高かったがそれ以上かぁ。

全く想像がつかねぇぜ。

…あ、ビール缶が空になった。

『何より当時大人気だった声優の田所晶馬さんが今回もあのキャラで参加という豪華さ!』

「ほう!」

二本目のビールを煽りながらツマミのサキイカを齧りつつ驚く。

例の私がハマる理由になった声優の名前が彼だ。

当時は新人声優で誰も注目していなかったがこのゲームが大当たりし今では大御所扱いとは恐れ入る。

しかし、10年だぜ?

声変わってんじゃね?

『しかし、当時のプレイヤーは楽しみでしょうが、長らくプレイから離れてしまっているのも事実。

ましてオンライン化したゲームの波に乗れるのかおっさんは心配ですよ』

『ところが!そんな心配を吹き飛ばす朗報が!

なんとゲームにログインする時に当時のiDとパスワードを入力すると!』

『まさか!』

『そう!当時のデータがそのまま引き継げてゲームのアドバンテージが取れちゃう!』

『強くてニューゲームって奴ですな!?』

『イェース』

こいつら酒でもやってんのかという訳の分からないノリである。

テレビショッピングかよ。

しかし、当時のデータが引き継げるのはいいな。

アイテムだとかレベルだとかは勿論、当時課金したけど使わずに残っているポイントがまだあった筈。

クレカでごっそりポイントを買って全て使い切る前に取り上げられたからだ。

それに、当時と今の田所晶馬の声の違いを聞いてみるのもいいかもしれない。

「グェープ」

よっこいしょと動いたらげっぷが出た。

しかし、誰も見てないのだからどーでもいい。

私はサキイカを口に放り込んで尻を掻きながらパソコンを起動する。

そして、異世界建国記と検索すればあっさりログイン画面が出てきた。

懐かしい音楽と共に。

酒のせいか音楽のせいかテンションがあがる。

「うひょー!さっそくiDとパスワードを入力だぁ!」

変なテンションでiDとパスワードを入力していく。

ええ、しっかり覚えてました。

思い入れがあった証拠かね?

《ゲームデータを引き継ぎますか》

「イエスイエス、イエスキリスト!」

寒いという言葉すら薄ら寒いギャグを飛ばしてカーソルをイエスのキーに合わせた。

《異世界で建国しますか?》

「イエスイエース!」

ビールをぐいぐい煽って再びイエスをクリック。

《それでは血で血を争う建国ライフ(デスゲーム)を》

おいおい怖いこと言うなぁ。

なんて呑気な事を考えていると、パソコンの画面が眩しく光った。

おや?酔っ払ってこんな幻覚を見ているのか?

……ってか、眠い……

高々缶ビール2本で撃沈……とか……



光が止み元に戻った部屋は。

先程までいた主人はいなかった。

もうどこにもいない、帰る事もない。

何故なら彼女は異世界に国を創りに旅立ったのだから。


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