前編
目の前にあるのはふたつの海。ひとつは火。そしてもうひとつは血。かつて活気溢れる街だった場所は、今では沢山の血が流れる戦場となっていた。戦場に変えたのは、意志を持った殺人機械兵。奴らは街を火の海に変え、人々を次々に殺していく。人々は奴らに恐怖し、逃げる。そして、考える。なぜ奴らは人々を襲うのか、と。そして知ることとなる。殺人機械兵は、人々が生んだということに。
燃え盛る火の海の中で、1人の男が立ち上がる。その男の右腕は付け根から切り落とされている。だが、血は流れておらず、切れた電線が垂れている。
男もまた、人々を襲っている奴らと同じ機械兵だが、奴らとは違い、殺人機械兵ではない。人々を守るため戦っている、守護機械兵とでも言うべきか。
男は残った左手で剣を持ち、進む。殺人機械兵を倒すために。
男は剣を天に掲げ、叫ぶ。殺人機械兵に知らしめるために。
そして男は―
目が覚めると、周りには沢山の木。俺は体を起こし、確認する。どうやら森にいるようだ。
「なんで俺ここにいるの・・・・・」
周りを確認した後、自分の右腕を見る。右腕には、『HKSー5017』と書かれている。これは俺の名前。意味はわからない。
「・・・・・とりあえず歩くか」
俺はとりあえずこの森から出るために歩くことにした。
ここで『HKSー5017』の説明
名称 HKSー5017
性別 不明
種類 量産型機械兵(人型)
装備 なし
戦闘力 不明
所持能力 戦闘力測定
俺は人型機械兵としてとある宇宙施設で造られた。そして造られたと同時に施設が襲われた。襲ってきた奴らの姿は確認出来ていない。・・・・・あぁ、そうだ。その時に避難用ジェットで施設から脱出して、この森についたんだ。それじゃあ、あの施設に戻らなければ。襲われた後、どうなっているかを確認するために。まずは施設に戻るためのジェットを手に入れなくては。
「・・・・・ミツケタゾ」
電子音じみた声が後ろから聞こえた。後ろを振り向くと、そこにはひとつの物体が存在した。手足が6本あり、歪な形をしている。恐らく俺と同じ機械兵だ。
「目標ヲ発見シタ。スミヤカニ排除スル」
機械兵は、猛スピードで体当たりを仕掛ける。
「・・・・・いきなりすぎるな」
俺は機械兵の戦闘力を測定する。
名称 HKSー2047
戦闘力 270000
「・・・・・はぁ」
溜め息をつき、体当たりを片手で受け止める。そして、
「・・・・・帰れ」
敵の胴体部分をもう片方の手で拳を作り、思い切り殴る。敵は胴体部分から砕け散った。
「はぁ」
溜め息をつき、機械兵の言葉について考える。
「排除、か」
戦闘力測定の時、データにあれば名称も出てくる。さっきの機械兵は『HKSー2047』。HKS。俺と同じタイプの機械兵だった。あいつを造ったのは俺と同じ人だろう。なぜなら、HKSが名称に入っている機械兵を造ったのはその人だけだからだ。だから疑問に思う。同族であるはずの俺をなぜ襲ったのか?そして、あいつらは人型のはずなのに、明らかに人型ではなかった。いったい・・・・・
・・・・・今考えてもしょうがない。とりあえずこの森から出よう。
俺はこの森から出るために再び歩いた。
森の出口。
「・・・・・街だ」
目の前には街があった。小さくはないが、大きくもない。ごく普通の街。街には沢山の人がいる。
「行くか」
とりあえず街に入る。とても活気溢れるいい街だと感じる。俺は目の前を通った男に声をかける。
「すみません。聞きたいことがあるのですが・・・・・」
「何でしょう?」
「この街ってどんな街ですか?」
「あ〜、ここはギアーズ街。工業中心の街だよ」
「そうなんですか・・・・・あの、ジェットとかこの辺りにありませんか?」
「ジェットか・・・・・この道をまっすぐ歩いたところにギアーズ工場ってのがあるんだけど、多分貸出とかしてるとおもうよ」
「そうですか・・・・・ありがとうございます」
「いいえ」
男はそのまま歩いていった。
とりあえずどうにかなりそうだ。まず、ギアーズ工場って所へ行こう。
そう思い、歩きだそうとした時だった。
「きゃあああああ」
悲鳴が聞こえた。悲鳴のあとに警報がなり、放送がこう伝える。
東・・・・・森の方から殺人機械兵が攻めてきた、と。
「は?」
殺人機械兵?なんだよ、それ。
街の兵士たちが森の方へ向かっていくのが見えた。
・・・・・行ってみよう。
俺は兵士たちが行く方へ向かった。
「おいおい」
森の方につくと、そこには驚くべき光景があった。それは、森から機械兵が出てきている。それも沢山。それらの機械兵は、俺がさっき倒したのと似ている。機械兵相手に、街の兵士が立ち向かう。
俺は兵士たちと機械兵たちの戦闘力を調べる。
兵士 全127名
平均戦闘力 5000
機械兵 全46機 全機名称にHKS有り
平均戦闘力 720000
・・・・・無理だ。圧倒的すぎる。勝てる訳がない。全員殺されるぞ・・・・・
「殺人兵器が!!ぶっ潰してやる!!」
1人の兵士がそう叫び、兵士たちは戦い―
―戦いは俺の予想通りに進んでいた。
「やっやめろ・・・・・やめてくれ・・・・・」
1人の兵士が殺人機械兵にそう言うが、
「・・・・・」
殺人機械兵は何も言わず、その兵士の頭を掴み、引きちぎる。取った頭をそのまま潰し、ほかの兵士へ向かっていく。
・・・・・惨い。
殺人機械兵はそれぞれ、惨いやり方で兵士を殺していく。兵士の数は半分をきっているが、殺人機械兵は1機も減っていない。このままだと兵士は全員殺されて、標的は街の人たちへ向くだろう。
「・・・・・こいつら、本当に俺と同じ機械兵なのか・・・・・」
これが機械兵の本来の姿なのか?人を殺すために、力を振るうのか?
・・・・・違うだろ。
そう思った瞬間、俺は動いた。殺人機械兵を・・・・・敵を倒すために。
この話は前後編で完結します。