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三章 襲撃

そこは城下町、23メートルで所々巨人に蹴られた様な大きな穴があいてるぼろぼろの城壁で、血なまぐさい空気の中血にぬれたククリナイフを持ちながら唖然と立つ俺がいた。

周りをみてみればこの前俺とミラさんを殺そうとしていたオーガが仰向けに倒れるようにして首から血を流して死んでいた。 隣の足元には気絶しているミラさんもいる。

もう一度先程起こった事を回想してみる。

どうしてこうなった?


ーーー

ーーーーー


翌朝、目が覚めると俺の寝ているベッドに腰かけている女性二人がいた。

ミラさんと...... 誰かさんだ。

「やっと起きたのね!」

明を見ると、ミラは昨日と全く同じセリフを言った。 昨日起きたときを思い出す。

ただ、昨日と違うのは、誰かさんがいる。

この人はミラさんと違い、茶髪で丈の長い白衣を着ている、まるで医者のようだ、っていうか、ミラさんが言っていた医者か。 アメリカ人っぽい顔つきをしている。

ここは外国なのかと思ってしまう。 だが、ここは地球では無いのだ。

彼女達が使う言語やオーガを思い出し、改めて思う。

「その様子からして、もう元気そうね。 よかった」

お医者は俺をみて安心した顔で言う。

すると、医者は去って行った。

医者が帰ってから俺はミラさんと二人でこの殺風景な部屋に取り残された。

ふと、自分の現状が気になり自身を見る。

俺は、昨日とは全然違う服を着ていた。

着せ替えられたのだろう。 だが、考えてみてほしい。

ここにいるのは女性二人だ。 そこから、推測すると、俺はこの女性二人に服を着せ替えられた事になる。 大変だ。

「あっいや、着せたのは私の友人の男だから、焦らなくていいわよ」

焦っている俺を見て言う。

どうやら違ったようだ。 安心した気持ちもあれば、残念に思う俺もいる。

 閑話休題

「それで、貴方はどうしてオーガに襲われていたの?」

ミラさんが首を傾げながら聞く。

「それは...... わからない。 起きたらそこにいた」

明は一瞬戸惑ったあと、真剣な顔つきで言った。

それを見てミラは何かあるとは思ったが、明が本気で言っている事を察した。

「わかったわ...... じゃあ、アリクシルという町は知ってる?」

「いや、知りません。 どこですか?」

「この町の事よ。 ここはこの周辺ではとても有名な場所なのだけれど...... その様子からしてここ周辺の事は知らないらしいわね」

「......すいません」

「じゃあ、ここに来る前の記憶はある?」

「あります。 赤黒い球体に身体を貫かれて、それから...... は覚えてないです」

「赤黒い球体って?」

「えぇっと...... あれは人間の肉がぐしゃぐしゃになって丸められたような感じの球体でした。 それがいきなり俺に落下して、俺を貫きました、それから...... うっ......」

明が思い出し話そうとすると、突然吐き気が明を襲った。 明の体があの時の恐怖を思い出し、反射的に体の防衛機能が起きたのだ。

「もういいわ、ありがとう。 そして、なぜかここらへんに来て、オーガに襲われたと...... そういう事でしょ?」

「はい」

「見たところ悪人ではないようだし、ずっと私の部屋にいられては困るわ。 行きましょう」

「どこへですか?」

「何処て、外よ。 この町を知らない人がこの町の構造を知っているわけないでしょ? だから、案内してあげるわよ」

「ありがとうございます」

明はすっかり元気になった自分の体を使い立ち上がると、90度しっかりまげてお礼を述べる。

「堅苦しいのは嫌いよ。 っていうか、昨日から思っていたけどずっと敬語を使うわよね。 貴族じゃないんだから、いらないわよ」

「わかりました」

「ほら、またそこっ」

「あ、あぁ...... わかった」

ミラは人の事ながら満足気に頷いていった。

「よーし、第一回アリクシル観光ツアー始動だぁぁぁっ!」

「おう!」



というわけで観光に言った俺とミラ。 お互いに自己紹介をしてから、町を観光した。

このアリクシルという町はとてもきれいな街で、23メートルの頑丈そうな城壁に囲まれた城下町だ。

巨人が人を襲うあのアニメに出てくる50メートルの壁が23メートルに縮んだ感じだ。

北門、西門、東門、最後に南門があり、主に北の門が使用されている。

そんなアリクシルでは地球では食べられないようなたくさんの料理があり、その美味しさに舌を打った。 奢ってくれたミラに感謝だ。

料理もいいが、何より此処には、あれがある。

異世界小説物に必ず登場する、あれだ。

「ギルドだ!」

白に塗られたレンガで作られた建物に木の看板にどでかくギルドと書いてある文字を見てから、  俺の心は高ぶった。 異世界と言えばギルドが定番と俺の読んだ小説に書いてあったからだ。 本当の目的はこの世界に来たのでこの世界で慣れていこうと言うのと、この世界から元の地球へ帰れる情報があるか調べに来たって言うのだが...... とにかく、男のロマン溢れるギルドの内装はイタリアのレストラン風。 違いはと言えば、シェフにいるところに受付がいるだけだ。

ギルドに加入している狩人達は荒くれ者が多いと心に余裕が戻ってきた俺が思い出した異世界転移型の小説に書いてあった。 いかつい顔つきのおっさん達が椅子に座って武器と研いでいる。

俺の読んだ小説と同じ風景だ! とも思ったが、ちがうらしい。

ミラ曰く、ギルドに加入している狩人達の様子がいつもより粗ぶっている。

狩人達は普段、大人しいそうだ。 だが、今日の狩人達はイライラしている様な顔つきで椅子に座って武器を研いでいる。 先ほどいかついとかいったが、イラついているだけだった。

俺が声をかけてみると、「うるせぇ!」 という声が返ってきたのでイラついているとわかった。

普通は人が声をかけただけで怒鳴るおっさんはいないと思う。

不思議に思ったミラは俺を連れて唯一落ち着いているギルドの店員に何が起きているのかを聞いてみた。 店員はポニーテールを肩まで伸ばしている金髪の30代女性だ。

「何がって...... 貴方冒険者のミラさんよね?」

「はい」

「なら知っていると思うけど、オーガキングがオーガの群れを作っているって聞いた?」

「あぁ、あれよね。 オーガ達は群れを作っていてまだ一か月は余裕があるっていってた気がするけど......」

「予想は大きく外れたようでね、急速に群れを作ったオーガキングは300体のオーガを連れて町に攻め入ろうとしているらしいわ。 その日が今日らしいの」

「えっ!? それは、やばい、わね」

ミラさんが固まった。

狩人達がイライラしている理由がやっとわかった。

それで平気そうな顔している受付の凄さを思い知る。

気になったので俺は聞いてみた。

「なんでそんな平気そうなの?」

「あぁ、焦っていても仕方ないからよ。 狩人達はイライラしているけどそれをまとめる側がしっかりしないとこの町はオーガにやられてしまうわ...... それで、貴方はだれ?」

「俺は狩人になろうとここへ来た」

「運が悪かったわね。 悪いけど今は時間がないから登録はあとで、今は仮登録としてオーガ対策をして頂戴」

「おっけ。 じゃあ俺は何をすればいい?」

「さっき敬語はやめたほうが良いって言ったけど、見事なまでの変わりようね。 いや、これが素なのかな?」

ミラが横槍を入れてきた。

俺は適当に返事をしておく。

「人は変われるもんだよ」

「そう......」

「それで、受付の......」

「ユイよ」

「ユイさん、俺は何をすればいい?」

「呼び捨てでいいわ。 北門に大砲を運ぶだけでいいわ。 詳しくは門にいるハゲのおっさんにコレを見せれば教えてくれるわ」

そういってユイは俺に仮ギルド員証と書かれた木の板を渡してきたので、俺はミラさんに門の場所を聞いて一緒に門へ向かった。 ちなみにハゲと聞いて吹いたのは3人だけの秘密だ。

門に行くと、沢山の狩人が3メートル程の大砲を門の前へと運んでいた。

オーガ達が門から入ってくると予測したのだろう。

「ハゲのおじさんは...... と。 あ、あの人かな?」

「他にハゲはいなさそうだからあの人に違いないね。 よし、いこう!」

俺たちはおっさんに近づいて仮ギルド員証とミラさんのギルド員証をみせた。

おじさんの名はオサムという。 名前が日本人の様だったので聞いたら東の国のジャポランと言う里からこの町に来たのだという。 ちなみに日本という言葉は聞いたことが無い様だ。

オサムがいうにはオーガキングは人通りの良い北門を選ぶと見て、オーガキング達が門を攻めて来た時に今準備している大砲で迎え討つそうだ。 だが、大砲だけでオーガの軍団を倒せるとは思わないので、念のため戦闘の準備をしておいてくれとのこと。

そんな事なら討伐隊を組んでオーガ達を倒せばいいのに。 と言ったが出した討伐隊はやられたのでこれが最後の砦だという。 なので俺達は大砲を門の前に円を描く様に置かれている大砲の位置調整を手伝うことにした。

そして、準備が終わる頃。

ドスドスドスと地上が唸っている様な音が鳴り響いている。 オーガ軍団が近いのだ。

「全員戦闘準備! 第一班は私の指示に従い門を開けるように! 第二班は大砲から逃げたオーガを始末しろ! 他班は大砲を構えろ!」

俺たちは第一班だ。

段々と音が大きくなる中、俺たち狩人(俺は仮だが)からは音一つ立たせずに大砲を構えている。

「門を開けろぉぉぉぉっ!」

オサムが号令を挙げた。 狩人初心者達が集う第一班は門を時間をかけて開けてから大砲の後へと下がる。 2分後、ズドーン! と大きな音が響いた。 闘いが始まったのだ。

オーガ達はまんまと門に入り次々とやられていく。

大砲から逃げ切ったオーガは第二班にやられいく。

やがて、オーガ達が門にいなくなった。

「やったぞおおお!」

オサムが勇ましく雄叫びをあげた。

それから次々に歓声があがっていく。

はずなんだが......

オサムが雄叫びを挙げたと思ったら一秒後には腹を矢で撃たれていた。

「うわああああ!」

狩人の誰かが声をあげる。

上を見ると沢山の矢が上から落ちてこようとしている。

「全班ただちに解散!」

俺はたまたまオサムの近くにいたのでオサムを連れて矢の射程外へと逃げた。

「オーガにこんな事ができる知能があるとは思えない。 きっとオーガキングだろう」

俺は予想外の事態にパニックになりながらもオサムに聞いた。

「そそそそうだな。 オーガ達がは入ってきたぞっ。 お俺達はどうしたらいい?」

「ここはいったん引きたいが、引けば町が危うい。 お前ら! 戦闘準備ぃぃっ!」

周りを振り向くとさすが狩人、ほとんどが武器を構え、門から入って来たオーガに向かって走っていた。 それを見て俺とミラも引け越しになりながらも武器を構えた。

ミラは剣を右手にオーガに向かって走りだしていた。

明も走りだそうとする。 だが、明はとんでもない事に気付いた。

武器を持っていない! ひどい事だが、明はオサムが携帯していたマチェーテとロングソードの内マチェーテを一つ借りて、ミラの戦闘に参加した。 ちなみにオサムは第二班に引き取られて後方へ下がった。

さて、明はミラの所に居たがどうにも戦闘に割り込めないでいた。

ミラは魔法を連発しながら剣で浅く切りつけては逃げのパターンを繰り返している。

戦闘というものを一度もしたことない明はミラがピンチになったらオーガの邪魔をする事にした。

「きゃぁっ!」

ミラがオーガの攻撃を食らった。 食らったとは言ってもオーガが持っているのは木の棍棒なのでとっさにガードした右腕が折れただけかもしれない。 つまり、命に別状はない。

チャンスだと思った明はオーガの元へ駆け寄り、マチェーテを振り下ろそうとしたがオーガがミラがひるんだのを見てから回りを確認したオーガに見つかり、逆に棍棒を振り落とされた。

とっさに避けた明だが、棍棒がマチェーテに当たり、マチェーテを落としてしまった。

オーガがこちらを向いている内にミラは魔法をオーガに当てる。

オーガは絶命した。 俺は運がいいと思った。

俺は右腕が折れたミラさんの肩を引っ張り、逃げた。

「なんで逃げるのよ!」

「俺達じゃかなわない! それに、ミラは右腕が折れてるじゃないか! そんな右腕じゃ剣は振れない!」

「っ! 仕方ないわ......」

というわけで俺達は逃げる。

なるべく町の中心へと。

「はぁ、はぁ...... もう、逃げ切れたな」

「そう...... ねぇ......」

ドン、と誰かとぶつかる音がする。

話す間はミラのほうを向きながら走っていたので前は見ていなかった。

すかさず、謝ろうと振り向いたのだが、そこにいたのは...

バキッ、と音がする。

「キャアッ!」

悲鳴が町の中心から外へ広がっていった。

そこには......

腕から大量の血が出ている明と、ニタニタ笑っているオーガ、そして立ちすくんでいるミラがいた。

オーガは明から目を離すと、ミラを見て薄くにやけた。

自分が標的にされてる事に気づいたミラは慌てて応戦しようとする。

「炎の精霊よ力を......『フレイム』!」

慌てて火魔法の中で中級に属する魔法をオーガにあてた。

前回火と風の混合魔法の中で中級のエクスプロージョンでまったくダメージを受けた様子もないオーガを見たにも関わらず、火魔法を使ったミラは無謀だったと言えよう。

そう、無駄なのだ。

「あぁぁっ......」

ズン、ズン、と巨人が滲みよるように大股で歩くオーガ、ミラは自分の選択を後悔し、この世の終わりのような目をしている。 このままではミラが死ぬっ。 と思った明はオーガを殴るがビクともしない。

「クソッ、死ねよっ!」

オーガは殴られて気に触ったのか後ろの明を蹴り飛ばす。

明は吹っ飛ばされながらも頭を巡らせた、ミラを助ける手段を見つけなきゃと。

ふと、視界の端に反射する物を見つけた。 よく見ると、それは刃物だった。

狩人の死体が握っていた刃物。 オーガにやられたのだろう、狩人の頭が見事に破裂していて、身体がボロボロだ。 こんな残虐な殺し方をするのか! と、オーガに対する怒り、殺された狩人に対する憐れみとその見た目からくる吐き気、ミラがこんなふうに殺されることの悲しさ。 同時にいろいろな感情があふれ出し、明は混乱した。

「グエッ!」

ミラが声を出す。

混乱した頭を叩き、吐き気を我慢して瞬時に狩人の死体めがけて走り出す。

幸い、オーガはこちらを蹴り飛ばしてきたものの俺を脅威と見ていないのかこちらを気にせずミラをいたぶっている。


あと少しだけ耐えてくれ!


必死に願い、手にした刃物、マチェーテをオーガの頭目掛けて振り下ろす。

オーガは見事に絶命した。

「明っ!」

ミラが抱き着いてきた。

「ありがとう......」

仕方ない、普段こういうことはないはずだから、少しだけかっこつけさせてもらおう。

「当然の事をしたまでだよ」

疲れ果てたのか、ミラは気絶した。

ミラをずっと抱きかかえるのは少し恥ずかしいので、ミラの頭に着ていたジャケットを敷き、寝かせた。 


ーーーーー

ーーー


そして今に至る。

何分さっき起きた事は体感で1分で終わったのだ。

何が起きたのか一瞬わからなくなってしまった。

まぁいい。 すこし、俺も休ませてもらおう。

そう思い地面にふらりと倒れこんだ。


次回の投稿は1〜2週間後!


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