一章 目覚め、そして恐怖のオーガ
そこは森林、深緑に彩られた大自然の中で一人ポツン、と倒れている12歳ぐらいの少年がいた。
見事なまでに赤く染まったセミショートの髪をしたその少年は血だらけになったぼろぼろに破れた服を着ていて、その服の隙間からは子供とは思えない様な筋肉が大きく自己主張している。
少年はパチリと目を開けると呟いた。
「ここはどこだ?」
この少年は街道明と言う。 そう、1ページ目に死んだ「普通」のサラリーマンだ。
「あれ?俺の手ってこんなに小さかったっけ? それに、俺はこんなに筋肉はついてなかったはず...」
明が不思議に思っていると、後ろの茂みが動く音と共に「ギィッ」と声が聞こえた。
振り向くと、そこには棍棒を自分目がけて振り下ろそうとする100cm程度の人型で緑色の皮膚で頭に尖った角が生えている耳なしの短い鼻をした化け物がいた。 知らないはずなのに、知っている。 こいつはゴブリンと言う化け物だ。 危険はあまりないが、此奴は違う。 普通のゴブリンは尖った耳と長い鼻をしているはずだ。 耳が無く、鼻が短く、更に頭に尖った角をした此奴は......
ゴブリンの進化系、オーガだ。 俺ではこのオーガを倒すことはまず無理だろう。
「クソッ」 とっさに腕を重ねて防御をすると、明は棍棒の衝撃で2メートル吹っ飛んでしまった。
「やばい... 腕が折れたかもしれない...」
そう呟いている内にオーガはもう自分の目の前まで来ていて、また棍棒を振り降ろしてきた。
今度は腕が言うことを聞かないのでとっさによけたのだが、左足に直撃する。
「いってぇぇぇ...」
とっさに残った右足とかすかに間隔の有る右腕で地面を這いつくばって逃げた。
「逃げ切れたか?」
明は後ろを振り向いて呟く。
どうやらもう追いかけてはこないようで、安心する。
だが現実は非情であった。
明が目の前を向くと、そこにはさっきまで自分をストーカーの如く追い掛けてきた緑色のオーガがいて、あざ笑うかの様に笑顔で自分を見下して棍棒を振...
そこで明の意識は途切れた。