プロローグ
プロローグ
気付いたら、自分の意識は闇の中にだんだんと沈んでいった。
何が起きたのだろう…… 俺は毎日続く地獄のような仕事から帰っていた。
そして突然、上から何かが落ちてきた。 あっと驚く暇すら与えない何かの速さに完全に避けきれはしなかったものの、反射的に体をずらしたのは幸運だったと言える。 もし、完全に避けきれていなかったら……今考えると怖い。 だが、過ぎた事だ。
さて、妻や子供はどうしてるかな? と考えながら身体を起こそうとした瞬間、明はそれに気付いた。 自分の体が動かない。 身体を持ち上げようとする度に激しい苦痛に襲われるのだ。
その瞬間、様々な思いがよぎる。 それは、明の過ごした思い出だった。 走馬灯のように過ぎるそれはまるで自分の死を告げるかのように愛しい思い出しかうつさない。
「俺は……死ぬのか?」
そんな考えがよぎる。 よく周りを見てみれば、自分の腹部に血だらけの肉塊がおり、そこから血が滲み出ている。
これが、俺を貫いた?...…嫌な事を考えてしまった、と今さっき考えてしまった事を掻き消してまたも起き上がろうとしたが、それを自分の腹にある肉塊がゆるさない。
突如肉塊が浮き上がり、血だらけのその身体を回転させた。 びちゃびちゃと嫌な音が鳴り肉塊から出てくる血が自分の視界を埋め尽くしていく。 その肉塊から飛ばされた血が自分の口の中に入り自分の血と融合していく感覚の中、融合した血から色々な知識が頭の中に入ってくる。 その知識を整理していく、が血から伝わってくる知識の嵐を頭が良い訳でもないふつうの30歳サラリーマンが受け付けられるわけでもないので体感で1割ぐらいしか知識を受け入れられなかった。
だが、1割でも受け取れたことには違いはないので血が体の中に侵入してきた事への嫌悪感に耐え、それを整理してみた結果がこれだ。
・異世界アルマの魔物の情報
・異世界アルマの言語と魔法
これが知識だ、そしてそれだけだ。 一割、というが実際は例えると100億リットルの水のうちの一割と言えばわかるだろうか。 実際はたくさんの事を受け入れられた。 つまりは1億リットルの水を頭がいいわけでもない30歳サラリーマンが受け入れられたのだ。 それが才能かはいざ知らず、明はなぜ異世界なのか、なぜ肉塊が飛んだのか、なぜ......と収まりきらない思考に耐えられず意識が闇にしずんだ。