表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

ドキドキ!? スピネルの初体験!!

 


 ワイワイと人が賑わうジャネイロの町の中をコソコソと移動する影が1つ……影は路地裏を抜けて、角からひょっこりと顔を出し町の外へと出るための門を覗き込んでいた。


(人が多いのう……これではこっそりと抜け出ることはできぬか?)


 そんな事を考える影の正体は、手ぬぐいでほっかむりをするスピネルであった……。いったい誰に教えられたのか、鼻の下で手ぬぐいを縛り古典的な泥棒スタイルで路地裏から除き見をしていた。

 そんな時、急に門の辺りの人たちの行動が変わった。偶然にも見張りの兵士が門から離れ、付近に居た人たちも何故か門以外の所を見始めたのだ。

 そんな明らかに不自然な行動を疑いもせず彼女は(チャンスじゃ!)と思い、すかさず門を抜け出したのであった。

 そして門を抜け出た彼女の目の前には、真っ直ぐ伸びる石畳の街道と広大な草原が広がっていた。


(フフフフ……ついに……終に来たぞ!)


 そうやって打ち震える彼女の姿を、多くの人たちが温かい目で見ていた。けれどそんな事にも気がつかず、自分では完璧に誰にも気がつかれず町にから出れたと信じきっているスピネルだった。

 そんな風に彼女は、初めて自分1人で外に出れたと心の底から喜び、道の真ん中で胸を張り誇らしげに笑みを浮かべている姿は実に可愛らしく感じられた。


(ふっふ~ん♪ 余だってやればできるのじゃ! さて、後は余が1人で剣の素材を取ってくる事ができれば、師匠も余の事を認めるであろう。クックク……目に浮かぶようじゃ、驚き褒めちぎる師匠とアルトの姿がのう……。フフ……ウフフフ……アーハッハハハハー)


 と、心の中で高笑いをしつつ、ズンズンと無警戒で草原へと歩いていくスピネル……当初の目的を忘れ、彼女は少し進んでは道の脇に咲く名も知らぬ花を見ては微笑んだり、無邪気にもヒラヒラと舞う蝶を追いかけながらフラフラと草原を駆け巡っていた。


(ふむ、久しぶりに嗅ぐ緑と土の良い匂いじゃぁ……風も心地良いのう。)


 そんな事を思いつつ、のん気にも鼻歌を歌いながら自然な空気を楽しんでいたスピネルであったが、急に何かを感じるとハッとした。

 そして何故、自分が草原に来たのかを思い出したのだ。


 すると急にキョロキョロと辺りを見渡し、斧を掴み警戒し始めた。姿勢を低くしていつでも戦えるようにと慎重に歩き始めた。

 けれど……


(おかしい……何も居らぬではないか、変じゃなぁ?)


 何かを感じ臨戦態勢をとったのだが、一向に何も現れない事を不思議がりキョロキョロと辺りを見渡すのだが、付近にはモンスターどころか人すらいなかった。

 その事を不思議に思スピネルは、いその場でピタリと足を止め考え始めた。


(むむむ……モンスターが来たかと思うたのじゃが、違ったのかのう? 何処にも居らぬし……ふむどうするかのう……。せめて師匠が居ればどうするか聞けたのじゃが…………む、いかんいかん! 今日は余、1人なのじゃ! 誰かに頼ってはならぬ、うむ! がんばるのじゃ!!)


 そんな風に悩みながらも自身を奮い立たせるスピネルだった。そんな時ふと視線を上げた彼女の目に、深い森が飛び込んできた。


(森か……確か師匠が言っておったのう。森のほうがモンスターも多いと……あと危険じゃから近づくなと……)


 と、そんな風にスピネルは以前にOYAZIとの話を思い出していた。それは成人の儀式で作る剣をどのような物を作るのか聞いた時の事だ。


「師匠……」

「何だ?」

「いずれは剣の素材を取りに行くのであろう?」

「あぁ、そうだな……」


 店での仕事を終えてマイハウスへと帰ったスピネルは、毎日の恒例となったスキルのレベル上げの作業を淡々とこなしながら、師匠であるOYAZIに話しかけていた。


「して、何処に取りに行くのじゃ? それと、どのような剣を作るのじゃ?」

「ん? どんな剣にするかは、お前が決めることだぞ? 物作りは自分が作りたいものを作った方が、やる気もでるからな」

「なんじゃ、余が決めて良いのか……ならば、そうだのう……ミルリルかアダマンタイト、それかダマスカス鋼とかで、できた……」

「まてまてまて、いったいお前は後、何年ここで弟子をしつ続けるつもりだ!」

「む、それくらい立派な剣のほうが良いではないか!」

「心意気はむが、お前がそれらを加工できるまで数十年はかかると思うぞ? それ以前に俺が作れないし、採掘できないから教えられない。」

「では、バルムンクやエクスカリバー等に似せたのを作るというのはどうじゃ? これは良い案じゃろ!? 王女である余の成人の証として後世に残す事ができようぞ!」

「…………はぁ……スピネル? 現実を見ような?」


 そういいながらOYAZIは、彼女の横に積み上げられている失敗した物の山を指差した。


「うっ、べ、別に良いではないか! 父上も理想は高く持てとおっしゃっておったぞ!? ならば……」

「ほぅ……言ったな? じゃあそれを目標にするというならば今から寝る間を惜しんで、血反吐を吐いてもビシビシと教えていくことにする。そうすれば10年と経たずに覚えられるかもしれないからな」

「ごめんなさいなのじゃ、この通り謝るから許してたもれ」


 OYAZIがそう言った瞬間、素早くその場で見事な土下座をして謝るスピネルの姿を見て苦笑しつつ『フッ……もう謝らなくていいから、作業を再開するぞ。』と作業を続けるようにうながすと、自身もレベル上げのために黙々と作業を続けた。

 そして暫くの間、2人は黙々と作業に没頭していたがOYAZIはスピネルに、静かに今後の事について話し始めた。


「その……剣の事だがな? 結局は素材に木と皮と鉱物は使わなくちゃいけないから最初は様子を見つつ、どノーマルの鉄の剣を作ってもらうつもりだ。」

「む? とりあえずの物で、良いのか?」

「あぁ、別に試作で何本も作っても問題ないからな、今のところスピネルが何が得意なのか分からないから、一通り試してみてその後に細かに軌道修正かな」

「では、余は普通の金属の剣を作るつもりでいれば良いのかの?」

「あぁ、それで素材は森で取ってきた物を使うつもりだ。」

「森? 何でじゃ? 目の前の草原ではダメなのか?」

「どの道、木材は必要だしなそれに森の方がレベルの高いモンスターが多いから、そっちで集めたほうがいい物も作れるだろう」

「そうなのか」

「ただ……普通の剣を作るといっても、まだお前さんに何がいつどんな才能に目覚めるか分からないから、骨も集めてボーンソードやエンチャントなんかの魔法系も覚えてもらうぞ」

「うぅ……魔法は余は苦手じゃ……」

「なせばなる! 何事も気合だ!!」

「精神論で、どうにかなるものかのう?」

「信じるのです……。そうすればイエスは必ず答えてくれますよ?」

「イエスって誰じゃ!? てか、何の話じゃ!?」

「アナタハー、カミヲ。シンジマスカー?」

「…………時折、師匠は訳が分からない事を言うのう……」

「クッ……これが、ジェネレーションギャップかぁ……」 


 等と言いながら、うな垂れるOYAZIの姿にスピネルは苦笑しつつ、その日もいつも通りに過ぎていった……。

 そんな出来事を思い出していたスピネルは、何やら考えているようだ。


(ふむ……もしも森でモンスターを狩り、剣の素材にある物を持って帰れたのであれば師匠も余の事を認めるやもしれぬな……うむ、そうじゃ! そうなればきっと褒めちぎり、フルーツ牛乳をくれるやもしれぬな!)


 そう、都合のいい事を考え森の方向へと進んでいったスピネルであった。けれど、やはりモンスターと一向に出会う気配も無く冒険者を見かける事も無かった。

 そして難なく森の近くまで到着した。


(可笑しいのう……アルトや師匠の話ではモンスターは、そこらじゅうにワラワラと居ると聞いたのじゃが、何も居らぬ……どういうことじゃ? 確かにアルトと旅をしていた時も、それほど出会わなかったが……やはりこんなもなんじゃろうか? もしかして師匠はわざと余を怖がらせるために言っておったのじゃろうか? うむ、そう考えると納得がいくのう……しかし拍子抜けもいいところじゃな、ここまで何も出会わないとはな……)


 不可解極まりないそんな状況にも関わらず、あまり深く考えないスピネルは結局、特に気にする事も無く森へと入って行った。


(さて、モンスターをたおす前に体でも温めるかのう……うむ、木でも切り倒してみるか、どうせ素材で木材は必要じゃしな! さて……木はどれが良いのじゃろうな? 色々な種類の木があるが、どれがに適した木じゃろう? う~む……適当に切ってみるかのう……)


 そう思いつき、適当に木を切ろうと斧を振りかぶったその瞬間、不意に背後から『キャー』という甲高い悲鳴が聞こえてきた。


(!? 悲鳴じゃと!? 声からして女子おなごじゃな、よし! 助けに行かなくては!)


 悲鳴を聞き、スピネルは少女らしき声が聞こえた方へとスピネルはすぐさま駆け出した。

 そして森を少し奥に行った所でひらけた場所に出た。するとそこには、震えながら弓を射る少女と1匹のモンスターがいた。

 フリフリの服を着た少女は顔を真っ赤に赤らめながら『キャー! 誰か助けてぇ』と叫んでいるのだが、それは誰が聞いても棒読みで、いかにも恥ずかしそうに言っていると分かるのだが……勿論スピネルが気がつくことも無く、彼女は颯爽さっそうと少女とモンスターとの間に立つと斧を構えた。


「大丈夫か! お主!?」

「あ、ありがとうございます。」

「ここは余に任せて主は逃げるのじゃ!」

「そ、それが足が震えて上手く動けなくて……」


 わざとらしく足を震えさせて、絶対に本人の意思とは関係なく着せられたであろうフリルが沢山付いたドレスで恥ずかしそうにそう答える少女の手には何やら書かれた小さな紙を持っており、それをチラチラと見ながら助けに来てくれたスピネルに話し始めた。


「わ……わ、はリリアラ……その、助けてくれてありがとうございます。」

「安心せい、余が来たからにはもう大丈夫じゃ! こんなモンスターなぞ相手ではないわ!」


 そう言って虚勢きょせいを張るスピネルだが、その足は震えて息も荒く明らかに無理をしているのが分かる。


(だ、大丈夫じゃ……こんな二足歩行の兎なんぞに余は負けはせぬ…………じゃが、じゃが……)


 脂汗をかき震えていうことを聞かない足を無理やり動かし、ジリジリとモンスターとの間合いを詰めるスピネルだったが、先に動いたのはモンスターの方だった。

 『ウジャ!』と叫びながら手に持った木の棒を振りかぶり、真正面からジャンプし突っ込んで来た。それを辛くも斧の柄で受け止めるスピネル。

 しかし攻撃を防がれたモンスターはクルリと地面に着地すると、棒を振り上げながらさらに攻撃を加えてくる。けれどそれも何とか防ぐスピネルだが、どうしても反撃ができないでいた。


(今じゃ、今攻撃すれば良いのじゃ……うぅ、どうして余の体が動かぬ! どうしてじゃ! ただこの斧を振り下ろすだけじゃ、こんな兎の動きなぞ師匠の攻撃に比べればはるかに遅くて隙が多いというのに、何故……余の体は動かぬ、どうしてこんな兎ごときに怖いと…………違う! 怖くなど無い! 余は王女じゃ、じゃからこの程度のモンスターなぞに恐怖を覚えるなぞ……)


 そう心の中で激しく葛藤かっとうしながらも防戦一方のスピネル……何度も繰り出されるモンスターの攻撃をギリギリのタイミングで防いでいるが、一向にその手に持った斧で攻撃しようとはしなかった。

 彼女自身も分かっているのだ。自分が恐怖を感じていることに……周りに助けてくれる人が居らず、自分だけしか後ろに居るか弱い少女を守れる者がいない事を理解してた。

 

 自分で、どうにかしなくちゃ……

 自分が、やらなくちゃ……

 そうしないと……


「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 精神的に追い詰められたスピネルは、ボロボロと涙を流しながら大きな声で叫び自身を締め付ける恐怖とプレッシャーを振り払うかのごとく斧を振り下ろした。

 いくつもの涙の雫と共にブォンッ! と風きり音を立てながら勢いよく振り下ろされた斧は、見事モンスターに命中した。

 そして勢い良く繰り出されたその攻撃により、弾き飛ばされたモンスター……草の上を何度も転がり跳ねるが、まだ立ち上がる余力は残っていたようだ。

 よろよろとではあるが立ち上がるモンスターに彼女は再び大声を上げながら斧を振りかぶると、そのまま走り出しモンスターとの間合いを詰めた。

 身構える隙を与えず、斧は振り下ろされた。そして回避できずその一撃を喰らったモンスターは『ミキュ』と一声無くと光の粒子となって消え、その場にはドロップアイテムである兎の皮と肉などが散らばる。

 その光景を斧を振り下ろしたままの体勢でスピネルは荒い息を吐き、とめどなく溢れてくる涙がポタリポタリと地面に落ちては消えていった。

 そんな彼女の姿を見ていたリリアラはスッと立ち上がると、震える彼女の肩にそっと手を乗せて声をかけた。


「大丈夫? その何処か怪我をしていたりとかは……」


 それは手に隠した紙に書かれていた物では無く、リリアラ自身の純粋な言葉だった。しかしそう声をかけられたスピネルはグシグシと服の袖で涙を拭い何事も無かったかのように、無理に笑ってみせた。


「だ、大丈夫じゃ、余はなんとも無いぞ! 怪我もしておらぬし、よ……余裕じゃったわ! ワハ、ワハハハハッ!」

「で、でも……」

「へ、平気じゃと言った! それよりも、お主のほうは大丈夫なのかの? 確か足が震えて動けないと……」

「え? あっ! その……」


 虚勢を張りなんとも無いように装うスピネルにそう質問されるとリリアラは、しまった! という表情をしながら慌てて手元のメモを読みながら答えた。


「助けていただいてありがとうございました。その、貴女は冒険者様でしょうか?」


 相変わらずの大根役者ぷりの棒読みではあるが、スピネルは気がつく事も無く少し目元を赤く腫らしながらもニカッと笑い、その小さな胸を張った。


「うむ! そうじゃぞ、余は王女であり冒険者じゃ!」

「ま……まぁ、それは素晴らしいです。実はわ、私は……森に病に伏せる父のための薬草を採りに来てモンスターに襲われてしまったのです。」

「なんと、そうであったか!」

「行きはなんとか来れましたが、その……帰りが不安で…………よろしければ町まで送ってもらえないでしょうか?」

「おぉ! 良いとも、余が居れば百人力ひゃくにんりきじゃぞ、大船に乗った気持ちでいるがよいわ」


 そう言いながら、頼られていることが嬉しくて思わず笑みがこぼれるスピネルであった。


 さて、もうこの時点で自分が何のために森に来たのかも忘れてしまったスピネルは、クゥ~と鳴く腹の音に気がつき、その場でアイテムBOXからアルトが用意してくれたお弁当を取り出し『お主も一緒にどうじゃ?』と、呆気にとられていたリリアラに隣に座るようにと促した。

 一瞬、躊躇して辺りを見渡すリリアラであったがスピネルの背後の茂みから音も無く手がニュルリと出てきて、OKサインを出してきたので小さくため息を吐くとその場に座りスピネルのお弁当を分けてもらいながら一緒に昼食を取ることとなった。


「どうじゃ? 美味しいじゃろう? アルトの作る料理はとても美味いからのう♪」

「は、はい……」

「けれど師匠の料理も凄く美味いんじゃぞ、アルトとは違って変わった味つけじゃがとても美味いのじゃ」

「そ、そうですか……その、師匠さんという人は凄いのですねぇ」

「うーむ……どうじゃろうな、いつも厳しくてちっとも余の言うことを聞いてはくれぬからのう……」

「それじゃあ、嫌いなんですか?」

「いや、好きじゃぞ? なんだかんだで余のことを思ってくれているのは分かるしのう、じゃが! 余を子供扱いするのは気に食わぬ!」


 そう言いながら頬を膨らませてプリプリと怒るスピネルの姿を見てリリアラはクスリと笑みをこぼすと、肩の力が抜け少し緊張が解けたようだった。

 そんな風に2人は警戒心ゼロのまま森のど真ん中で昼食を楽しんでいたのだが、不意に休憩をしているスピネルの背後から再び音もなく、手が出てきて何やら指示を出した。

 それを見たリリアラは、酷く慌ててスピネルに話しかけた。


「あ、あの! スピ、じゃなかった。冒険者様、そろそろ町のほうに……」

「おぉ、そうじゃったな! うむ、大丈夫じゃぞ余がしっかりとお主を守って町まで送り届けてやるからな!」


 食事も終わりまったりし始めていたスピネルは、リリアラを町に送り届けるという約束を思い出し意気揚々と立ち上がると、町に向けて出発した。

 そしてモンスターに合うことも無く難なくと森を抜け草原に出たのだが、スピネルの後に着いて歩くリリアラは何やら小さな袋のような物を取り出し握り締めて、キョロキョロと周囲を気にしているようだ。

 すると突然、ガサガサと草を掻き分ける音が聞こえたと思ったら1匹のネズミ型モンスターが『チュウ゛』と鳴きながらリリアラ目掛け襲い掛かって来た。


「危ない!」


 咄嗟にそう叫びながらリリアラを庇うスピネル……モンスターの攻撃がカスリ、僅かだがダメージを受けて『ウッ』と小さく声を漏らした。


「大丈夫!?」

「問題ない。大丈夫じゃ……お主は下がっておれ…………」


 そう言いながら斧を構えるスピネルの体は、もう震えてはいなかった。


(大丈夫じゃ……問題ない。もう、怖くは無い!)


 体の震えも無く、恐怖を克服したスピネルにはもう迷いは無かった。油断無く斧を構え、苦も無く再度飛び掛って来たモンスターをいとも簡単に倒した。

 その姿を見てリリアラもほっとした様子だった。


 その後、種類の違うモンスターに何度か襲われたものの、スピネルはそのことごとくを倒して町へと帰ることができた。





「あ、あの! 送っていただきありがとうございました!」

「うむ、なに感謝されるほどの事でも無い。さ、早く取ってきた薬草をお父上の所へ」

「え? あ、はい。そうですね! それじゃ失礼します。」

「うむ! 達者でのう」


 ジャネイロの町へと戻り広場でリリアラと別れたスピネルは上機嫌で家へと戻っていった。そんな様子を町の人は微笑ましそうに目を細めて見ていたが、やはりスピネルは気がつくことも無く人助けをできたと満足そうにしていた。

 だが、上機嫌で家へと帰ったスピネルを待っていたのは、不自然なほどにこやかな顔で出迎えるOYAZIの姿であった……。


「おかえり、スピネル……」

「おぉ師匠か! 来ておったのか、ただいまなのじゃ!」

「随分と嬉しそうだな?」

「うむ、今日は良き日であった。」

「ほう……?」

「聞いてくれなのじゃ、今日余は森で人を助けたのじゃ! それにモンスターも1人で倒したんじゃぞ、見てくれ! こんなにアイテムを手に入れたのじゃ!」


 そうやって嬉しそうにアイテムBOXからドロップアイテムを見せるスピネルだったが、OYAZIは笑顔のまま彼女に問いかけた。


「そうか、それは良かったなぁ……だけどスピネル、何か忘れている事はないか?」

「忘れていることじゃと?」

「例えば、俺との約束とかな」

「ん? 約束とな? はて……?」


 そう聞かれて首を傾げるスピネルであったが、ハッ! と朝にアルトから聞いた約束の事を思い出して、今までのにこやかな笑みは消え……真っ青な表情でガタガタと震えだしていた。


「し、師匠……こ、これには深い理由があっての……」

「ほう……どんな理由だい?」

「じゃ、じゃからの……そのな? その……」

「なんだい? 言ってごらんよ。」

「じゃから……あ、あっ……」


 目じりに涙を浮かべるスピネルはゆっくりと近づいてくるOYAZIから逃げようとジリジリ後ろに下がるが、終に壁に追い詰められそして……

 その日、OYAZIのマイハウスからは悲痛な叫び声が木霊した。合掌……

 投稿にずいぶんと間が空いてしまい申し訳ありませんでした。m(_ _)m


 ちょっとした体調不良と、2度に及ぶデータの消失で意気消沈して暫くの間、書く気力を失っていたので、これほどの期間が空いてしまいました。

 本当にすみませんでした。次回投稿はできるだけ早く上げたいと思っています。今後ともご愛読いただければ幸いです。

 皆さんも体調とデータの管理を気をつけて…… (´;ω;`)メリークリスマス……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読み返して初めて気づいた... ここだけことわざじゃない!? [一言] (´・ω・`)「もうそろそろ続きが読みたいかなって...思うんだ...」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ