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将を射んと欲すれば先ず馬を射よ

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ とは?

  敵の大将を屈服させるには、まずその大将が乗っている馬を射れば良いということから転じて、目的を達成するためには、まず周辺から片付けていくのが成功への早道だという意味……


 中国、盛唐の詩人である杜甫とほの詩の1つ『前出塞九首』の中で「弓を挽かんとせば当に強きを挽くべし、箭を用いんとせば当に長きを使うべし、人を射んとせば先ず馬を射よ」と書かれており、そこからの抜粋が広まったことわざ

 




 さて、あれからゲーム内の時間で1ヶ月の時が経過したのだが……


 「ぼべば、びびべべばばびぼば!?」

 「とりあえずポーションを飲め、何を言っているのか分からん」


 OYAZIは、見るも無残に顔を腫らしボロボロの姿のスピネルにポーションを手渡し飲ませると、徐々にその腫れが引いていき、元のスピネルの顔へと戻っていった。

 すると回復しきった彼女は憤慨し、頬をプクーと膨らませながら怒ってきた。


 「これはイジメではないかと、言ったのじゃ!」

 「イジメじゃなくて、れっきとした訓練だよ。スピネルでも防げるように手加減をしてるから大丈夫だ。それとも、ここの師範に手合わせをもう一度お願いしてみるか?」

 「うっ、それは……イヤじゃ……」

 「だったら続けるぞ」

 「…………分かったのじゃ」


 現在、俺はスピネルを訓練場内にある道場を借りて、戦いの手ほどきをしている真っ最中だ。一応この1ヶ月あまりで回避するタイプの訓練用の人形に確実に当てられるようになり、《斧》のスキルも覚えられたのでこうして訓練をしている訳なのだが……

 本来ならば師範の人とPvPプレイヤーバーサスプレイヤーを何度も挑戦して感覚を覚えさせるつもりだったのだが、上手くいかなかった……。

 結果から言えば予想通りスピネルは、あっという間に倒されて負けたのだ。しかも泣き叫びながら謝り、軽く失禁してしまったのだ。

 まぁ、それくらいは予想はできていたんだけど、その時に大きな欠点も見えてしまった。


 それは……人を傷つけられないことだ。


 スピネルは傲慢ではあるが根はとても優しい子だ。箱入り娘で、自身も怠け者だったからろくに訓練もしたことが無いし、実戦経験はもちろんゼロだ。

 だから誰かを傷つけた事は1度もないらしい。


 なのでどうしても人に攻撃する時に躊躇ちゅうちょしてしまい、戦えないのだ。一応アルトに色々と聞いてみたんだが、旅の時は全てアルトが影から倒したりして、モンスターと出会わないようにしたりしてたので、スピネルはノンアクティブモンスター以外とはろくに出会った事も無いみたいだ。

 だからモンスターに対しても恐らくではあるが、傷つける事ができないだろう。一応、訓練の時に使う模造刀などの物を使用するならばある程度は打ち合えるのだが、いざ相手に当てる瞬間には躊躇してしまっている。


 なので今は俺と、こうして少しでも慣らすために手合わせをしている……という訳だ。


 勿論、ここの師範との戦いはPvPなので設定項目で『参った』などの特定のキーワードを設定して、それを言うことで勝敗を決める事もできるのだが、基本的にPvPは相手を倒すのが当たり前だし、キーワードを設定しても結果的に相手を倒してしまうなんて事は当たり前に起きることだ。

 それに目指す先は師範に勝利することでは無く、実戦をしてドロップアイテムを入手することだ。実戦はPvPや模擬戦とは違う、必ず相手を倒さなくてはならない。

 実戦の最中にモンスターが『参った』なんて言ってアイテムをくれる事はないし、そもそも傷つけるのを恐れていたのでは話にならない。


 (しかしこれは困ったなぁ、まさか相手を傷つけられないとは……対人だけであればまだマシだったけれど、アルトの話ではモンスターでもダメの可能性が高いと言っていたもんなぁ、本人は気がついていないようだけれど……はぁ、どうしよう。)


 そんな事を悩みながらも軽々とスピネルの攻撃をかわして、ポコポコと木でできた模擬斧を当てながらどう防ぐかを指示し、再び彼女から打ち込ませたりと、それなりにしっかりと指導しているOYAZIであった。


 (既に基本的な事はできるようにはなっている。防御も攻撃の振りも、間合いの取り方もそれなりにはなってきているから戦えない事は無いはずだ。だけど攻撃する際に躊躇ちゅうちょしてしまうのでは話にならないしなぁ、結局は本人の戦う意志や決意が無いとダメだし……俺がどうこう言っても治るものでもないし、どうするかなぁ…………う~ん。ここはやはり、荒療治しかないかな? 問題はアルトが認めるかと、ファンクラブだよな……でも、案外イケルかも? グフフフ……)


 なにやら思いついた様子のOYAZI……。微かにほくそ笑む顔に気がつく事も無く、一生懸命に斧を振るうスピネルであった。





 そしてゲーム内で1週間が過ぎた頃……


 「ふわぁ~……むにゃ…………おはようなのじゃ、アルト……」

 「おはようございますぅ。姫様」

 「ん」

 「朝食の準備はできておりますのでぇ、顔をお洗いになってきてくださぃ。」

 「ん」

 「お手伝いをいたしましょうかぁ?」

 「大丈夫じゃ……」


 まだ眠たそうに目元を擦るスピネルは、アルトに言われて洗面台がある脱衣所に向かうと顔を洗い始めた。そしてようやく目が覚めたスピネルは用意されていた朝食を食べ始めた。

 するとスピネルは、アルトがいつものメイド服でないことにようやく気がついた。


 「ん? お前が私服とは珍しいのう」

 「はい。その事でお話がございますぅ。」

 「なんじゃ?」

 「実は、本日OYAZI様は急用ができたので来れないとのことでぇ……」

 「うむ、自主トレをせよということじゃな?」

 「いえ、本日は休みにして良いとぉ」

 「? 何故じゃ?」

 「はい。実は今日は私、ちょっと頼まれごとをされていましてぇ」

 「頼まれごとじゃと?」

 「はい。ローズマリー様より村に来てちょっと手伝いをしてほしいとぉ……」

 「ん? 店の関係なのか? ならば余も行こう」

 「その今日は今月の店の売り上げ等を集計する日らしくてぇ、それなのに会計係の子が風邪で休んでしまったので臨時で手伝いという事になりましてぇ、それでもお手伝いいただけますかぁ?」


 アルトはスピネルがまったくというほど計算が苦手である事を知りつつ、表情を変えずに聞いてきた。それに対してスピネルは若干、顔を引きつらせながら答えていた。


 「そ、そうか……会計かぁ、ならばしかたあるまいな! ざ、残念じゃが余は1人黙々と自主トレにはげむとするかのう! いや、残念じゃなぁ~アーハッハッハッハ」


 酷く焦った様子のスピネルであったが、そんな事を気にすることもなくアルトは話を続けた。


 「それで帰りは夕方以降になると思いますのでぇ、OYAZI様からも1人で訓練させるのは不安だからとの事ですので、お休みという事になりましたぁ。」

 「そうか……」

 「あぁでもぉ、どうしても訓練をしたいのなら訓練場の方に話は通してあるから行っても構わないそうですよぉ? だから斧も預かっておりますしぃ」


 そう言いながらアルトはOYAZIの《初心の両手斧》を取り出すと、テーブルの上へと置いた。


 「それと言伝も預かっておりますぅ。『スピネル、今日は休みにするので自由に過ごしてもらって構わない。自らの意志でトレーニングするも良し、町をブラブラと散策するのも良いだろう。だが、決して町の外にはでるな! いいな? 絶対だぞ!!』とのことですぅ。」

 「そうか」

 「それでは、私はそろそろ時間ですのでぇ……あぁそれと、お昼ご飯はそのアイテムBOXに入れてありますのでぇ」


 そう言ってアルトはパタリとドアを閉めて家を出て行った。






 そして暫くの間、何やら考えている様子のスピネルであったが、ようやく考えが纏まったのかゆっくりと立ち上がると、何故かコソコソとし始めたと思ったらいつもの訓練で着ている服と防具に着替えた。

 そしてお昼ご飯が入ってるアイテムBOXを開き中身を確認すると、昨日初めて評価2になった自作ポーションを5本ほど詰め込むと、斧を手にして装備した。

 そしてそのままコソコソとしながらマイハウスを出ると、辺りをしきりに確認しつつ町へと出て行った。

 勿論、町の中心ではなく最寄のフィールドへの出入り口である門へとだ。


 しかしそんな行動をするスピネルの姿をじーと屋根の上から見つめる2つの影……


 そして彼女の移動を確認すると、その内の1人が掲示板へのチャットウィンドウを表示し、何やら書き込みを始めた。


 2:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:14 ID:????????

   ターゲットS、移動開始。順次、予定通りに行動せよ!


 と書き込むと…… 


 3:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:14 ID:????????

   了解


 4:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:14 ID:????????

   らじゃー


 5:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:15 ID:????????

   ヒャッハー! 祭りじゃあ


 6:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:15 ID:????????

   ターゲット確認……任務開始する。(`・ω⊂)


 7:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:15 ID:????????

   了解!!


 8:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:15 ID:????????

   分かった (・ω・)


 9:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:16 ID:????????

   フフフ、終にか……


 10:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:16 ID:????????

   待っていたぞぉ! 少女Sゥ!


 11:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:17 ID:????????

   全員、配置に付けぇ! 突撃ぃぃぃ!!!


 12:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:17 ID:????????

   ょぅι ゙ょ! ょぅι ゙ょ!


 13:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:17 ID:????????

   皆! yesロリnoタッチだぞ!? 忘れるな!!


 14:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:18 ID:????????

   ハッ! ( ̄^ ̄ゞ


 15:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:18 ID:????????

   時は来た! 皆の者! 我に続けぇぇ!!!


 16:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:18 ID:????????

   ハ〇ーン様! バンザーイ!!


 17:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:18 ID:????????

   16>薔薇を付けた強化人間の方は、帰ってどうぞ


 18:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:19 ID:????????

   皆テンション高けぇなw


 19:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:19 ID:????????

   上がらいでか! 少女を守るはナイトと勤めだぞ!?


 20:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:19 ID:????????

   19>変態と書いてナイトと読むんですね、分かります。


 21:名前:名無し 2048/11/7(土) 11:20 ID:????????

   20>ここに居る時点でお前もだろw  


        ・

        ・

        ・


 等の無数の書き込みが、一斉に書き込まれていった。


 そんな事を一切知らない当の本人であるスピネルは、初めての1人での冒険にドキドキワクワクを隠せない様子で、ほころんだ笑顔で町の中をコッソリと移動していた。

 投稿が遅れて申し訳ない。最近、寝る前に孤独のグルメを見返すようになって、寝ている最中にお腹が空きすぎて睡眠不測ぎみで投稿が遅れました。

 ホントすいません。やはり寝る前に見るもんじゃないんだけど、どうしても見たくなる今日この頃……

 いいなぁ都会……食べるところが近くにあるって羨ましい…………。

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