為せば成る、為さねば成らぬ何事も
為せば成る、為さねば成らぬ何事も とは
できそうもないことでも、その気になってやり通せばできるという意味……
※江戸時代後期、米沢藩主の上杉鷹山が家臣に、この歌を教訓として詠み与えたという話。
また、それより以前に武田信玄が「為せば成る、為さねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人の儚さ」というよく似た歌を詠んでおり、上杉鷹山の言葉はこれを変えていったものといわれる。
「OYAZIさん! さっき言った先行しているパーティーのタンカーの人が、パーティーメンバーに上級スキルの付与魔道師がいるから、移動速度上昇の術を重ね掛けしてもらったみたい。だからタンカーの人だけ先行してくるから、到着時間が少し早まりそう!」
「うぅ、そうか……それはっ、ありがたい……なっ!」
必死にディザスター・ボアを受け止めているOYAZIのHPは既に半分を切っていた。2回目の突進が開始される前に、自らに物理防御力アップと毎分HP回復のエンチャント魔法を優先に掛けていたので、ポーションをHPが全快するまで飲んでいる暇がなかったので、現在じわりじわりとHPが減っていた。
(やっぱり、1人で全部やるのは無理だったか……もしかしたらこのまま止めるだけはできると思っていたが、3度目の突進は防ぎようがないな……しかし救援に向ってきてくれているタンカーの人が間に合いそうだからディザスター・ボアはどうにかなりそうだが、問題はクエイク・マーチだな……発動直後に止められれば被害を最小限に抑えられるが、もうMP回復系のポーションは少ないし、いくら王都にくらべ低レベルだといっても300匹を止める手立ては無いよな)
クエイク・マーチはディザスター・ボアを中心にして、左右に3段の横並びに展開されるのでいくら範囲攻撃のアースウェイブ・スマッシュを繰り出したところで、止められるのは精々20~30匹を止められれば良い方だ。
クエイク・マーチの並びとしては、最前列にラッシュ・ボアが100匹ずつ並んで少し間隔を空けてジャイアントボアが左右の間隔も開けつつ50匹並ぶ、そしてスタンピード・ボアが並んでいる。
一応、スタンピード・ボア1匹にジャイアント・ボア10匹のラッシュ・ボア20匹が1つの集団扱いになるみたいで、それぞれの集団ごとターゲットを変えつつ最寄の町へと向うのだ。
もちろん優先的に狙われるのは一番近くにいる人に移っていくのだが、そのターゲットが進行方向である町と真逆の方に逃げると人を追わずに町に向うらしい。
つまりクエイク・マーチ発動時、周囲に援護してくれるプレイヤーが複数いないと、ディザスター・ボアと残り300匹の一斉突撃を俺たちが受ける事になるのだ。
だからクエイク・マーチが発動する前に、ディザスター・ボアを討伐してくれるパーティーから距離を取らなくてはならない。
とりあえず12組のパーティーが向って来てくれているなら、それぞれが間隔を広げて待機してくれればターゲットが反れるが、先行しているパーティーが6分後だから……他のパーティーはクエイク・マーチにギリギリ間に合わないか、普通に計算すると発動直後だよな……それだとせっかく先行してくれて来てくれたパーティーも巻き込んで一緒にやられてしまう。
(ここは、一か八かの賭けだな……)
OYAZIは決意を決めると後ろに控えているエイサとリリアラに、ここからできるだけ後方に下がるようにと叫んだ。
「!? どういう事、OYAZIさん!」
「このままだとっ、くっ……クエイク……マーチに先行組み諸共やられる……だから、俺はこいつを押さえたまま後方へっ……うっ、少しずつ下がってみる。」
「そんなの無茶よ! 力を抜いたらそのまま弾き飛ばされちゃうよ!」
「かもしれない……けどっ! このまま押さえていても結果は見えている……うぐっ」
「だけど!」
「予測できなかったっ……偶然だとはいえ、こんな事態に、うぅ……してしまったのは俺たちだ。このまま倒されてっ、リスーポーンしても……クッ……ジ、ジャネイロで指を咥えて見ているしかできない、それじゃあ……ダメなんだ!」
暫くの沈黙の後、エイサが答えた。
「…………分かったわ、リリアラ後ろに下がりましょ」
「!? 良いんですかエイサさん、もし失敗したら」
驚くリリアラにエイサは、俺の意図を汲んでくれて説明し始めた。
「失敗しても変わりないわよ、OYAZIさんの言っている事は正しいわ……これで失敗しても恐らくこいつは一番近いプレイヤーを目指すわ、つまり」
「こっちに向っている、タンカーの人の所に?」
「そういうこと、そうすれば遅れて援護に来てくれている人たちがクエイク・マーチ発動前に到着できるから」
「失敗しても今より悪くはならないって事ですね……」
「まぁ、失敗したら失敗したで今後ジャネイロの町で色々言われるとは思うんだけどね、自分たちはさっさと死んで他人に尻を拭かせた奴だってね」
「すまないっ……うぐ、2人とも、俺の我がままだ……」
「ううん……いいのよ、私が注意していれば防げた事でもあるし」
「そんな! 僕が掲示板とかしっかり読んでいたら、外見で気づけてこんな事にならなかったのに……」
「自分を責める必要はないわよ、責任は全員の罪よ……それに私がいつも言っているでしょ?」
「『どんなにリアルでも、ここは所詮ゲームだから』ですか?」
「言い方は悪いけど、ゲームはどこまで行ってもゲームよ……だから、なんだってしても良いって事じゃないけれど、楽しくやらなきゃつまらないでしょ!」
「あぁ、その通りだ……だから、せめてやれることを精一杯……っ……やってから悔やもう!」
「…………分かりました! 僕もやれること精一杯やって楽しんでみます!」
「その意気だ……クッ、それで……エイサっ、この事を」
「フィールドチャットで送信済み、タンカーの人も他のパーティーも了承済み!」
「ありがとう……」
俺がそう言うと2人にいくつか指示を伝えて離れてもらった。
指示の内容は、もし俺が弾き飛ばされたら2人はタンカーの人の方向へ全力で逃げる事を伝えた。俺が殺られれば、次のターゲットは2人に移る。
無論、抵抗せず2人も殺られても恐らくはタンカーの人へと向うと思うが、念には念を入れて2人にはそう指示を出したのだ。
(さてと……いっちょやってみますか!)
俺は意を決して少し足の踏ん張る力を緩めた。その瞬間、物凄い勢いでかなりの距離を弾き飛ばされたがなんとか上手く着地することができ、俺はすぐさま体勢を立て直した。
その瞬間、再び突進してくるディザスター・ボアをなんとか受け止められた。
そして凄い衝撃が俺を襲い、ごっそりとHPが削れた。
(クッ、何とか真後ろに吹っ飛ばされたがHPがヤバイな……後2回喰らったらアウトだ。次はもっと慎重にやろう、なんとなく力加減は分かったぞ……)
そして再び足の力を抜く、今度は先程より力を抜き過ぎないように意識をしつつ、僅かずつゆっくりと慎重に力加減を変えていく……
俺は神経を集中してバランスを取りながら徐々に力を抜いていった。
すると、ズズっと僅かにだが体が後ろに押された。俺はその感覚を意識しながら力加減を変えていく、そして徐々にその押されていく距離を伸ばしていった。
時折、体勢を立て直すため止まったりするが、比較的真っ直ぐに下がることができ、結果俺たちは予想より早くタンカーの人と上手く合流することができた。
「成功するなんて思ってもいなかったよ」
「俺も……成功できるとは、思ってませんでしたよっ、うぅ……」
「しかし君は賭けに勝った。お蔭でクエイク・マーチの発動前に他のパーティーも間に合いそうだ。しかし君が先程、言っていた話は本当か?」
「はい、上級の……MP回復ポーションを、ック……5本と技のリカバリータイムを減少……できるポーションを貰えて、そちらのっパーティーメンバーの付与魔道師さんに……うぐ、技の威力アップと移動速度上昇のエンチャントを掛けてもらえるなら、半分のクエイク……マーチを止められます。」
「…………分かった。君を信じようどの道君が失敗しても、やることは変わらんしな」
「ありがとう……ございます。」
タンカーの人に了承を得ると、ディザスター・ボアの2度目の突進が終了し、3度目の突進を繰り出すためにディザスター・ボアは距離を取った。
俺は一気にHP回復ポーションを飲むと、直ぐにタンカーの人に防御力上昇のエンチャントを掛けると、タンカーの人は背負っていた大盾を正面に構えた。
そしてディザスター・ボアが、3度目の突進を繰り出した。
彼は盗賊のスキルで覚える挑発を使いディザスター・ボアのターゲットを自らに移し、すぐさま盾兵のスキル鉄壁を発動し突進を易々と受け止めた。
ドンッという衝撃に怯む事無く、彼は突進を受け止めながら話しかけてきた。
「まぁ、できるできない関係無しにやってみれば良いと思うぜ、悔いは残したくないだろ? それに自分のケツは自分で拭くもんだしな!」
「あぁそうだな、その通りだ。」
そして俺はチャット画面を開き、フィールドチャットで参加してくれる人たちに作戦を伝えた。
凄く短くなってすみません。本来は決着がつくところまで書きたかったのですが、身内に不幸がありまして現在リアルでバタバタしている状態です。
なので、とりあえず書けている分を上げたしだいです。とりあえず次の投稿はかなり間が空くと思いますが、ゆっくりと待っていただけると幸いです。
恐らく次の投稿に2週間は、かからないと思うのですがどうなるか分かりません。できるだけ早く投稿できるようにしたいと思っています。




