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楽あれば苦あり

 楽あれば苦あり とは

  怠けた人生を送れば後で苦労に見舞われるが、苦労をしていれば後で楽になれるという意味と、人生は苦楽相伴うものだから、苦労ばかりは続かないし、楽しいことばかりが続くわけでもないとい意味……

 




「お待たせ! ごめんね、遅くなってしまって……」

「大丈夫です! まだ予定時間じゃないですから、その……今日はよろしくお願いします。」

「OYAZIさ~ん遅いよぉ、レディーを待たせるなんて男の風上にも置けない人よねぇ」

「酷い!? 予想以上に嫌われている!?」

「エイサさんそれは言いすぎですよ! せっかく手伝ってくれるのに!」

「冗談よ、冗談♪ でもOYAZIさんけっこう時間かかったね、何かあったの?」

「ん? あぁ、とりあえず人数分のお弁当と、飲み物とポーションを多めに準備してたから」

「わぁ♪ 助かるぅ~、お弁当と飲み物は今から一緒に買おうかと思っていたけど、ラッキー♪ ありがと!」


 そんなエイサの様子を見てOYAZIは苦笑しつつ、2人に作ってきた飲み物とお弁当を渡した。


 BLTサンドイッチBOX 評価:7

   マスタードソースとチリソースの二種類の味が楽しめるランチBOX、新鮮なトマトとレタスがジューシーに焼き上げたベーコンを包み込んだ素晴らしい一品。

   ソースに僅かに香るフルーティーな味わいとピリリとした刺激のスパイスが、食欲をそそる。

 空腹を45回復 Atk上昇(中) Cri上昇(低) Mnd上昇(低) HP毎分5回復(18分間)



 フルーツ牛乳? FX 評価9

    風呂上りといえば、やっぱりコレ! 複数の果物の風味に濃厚なメェモゥのミルクが混じりあい、深くて芳醇な香りを引き出し、まさにフルーツの牛乳? の頂点に立つ飲み物である。

 渇水を62回復 Str上昇(高) Luk上昇(中) Int上昇(低) Dex上昇(微) MP毎分3回復(11分間)


 ちなみに"メェモゥ"とはこの世界で一般的に飼われている家畜の名前である。羊の毛をした角の長い牛のような動物だ。実に運営の適当さが目に見える……。



「「!!?」」

「……また凄いものを作ってきたわねぇ……やはりポーション騒動の元凶……OYAZI恐るべし!」

「ふわぁ~こんな凄い効果が付いた飲み物とお弁当初めてです。」

「気に入ってもらえて、なによりだ。」

「もしかしてなんだけど……最近話題になっているベーコン作ったのって……」

「うん、俺」

「やっぱし! OYAZIさんがあの村行っているって知ってたから、もしやと思えば……因みに温泉も?」

「あれは知り合いになったスライムの子が、見つけた物だよ。」

「そうなんだぁ~、良いなぁ温泉私も入りたいなぁ」

「行けば良いじゃないか、船ができたんだし半日かからずに行けるよ? 日帰り可能だよ?」

「そうなんだけど……温泉だけじゃあ、ちょっとテンションが上がらないかなぁ、あそこ敵弱いし……」

「そうだね、それがネックだけど……リリアラさんなんかには丁度イイと思うよ?」

「へっ!? 僕ですか?」

「うん、温泉の効果でステータス上げれば狩り易いから、武器か戦闘職業系のスキルは上がりやすいよ」

「そうだね、これからは向こうの方が初心者用になるかもね」


 そんな会話をしながら、俺たちは初心者の狩場である。ジャネイロ南東の草原を目指して歩いた。






「しかし珍しいね、俺みたいなプレイヤーが言うのもなんだけれど……リリアラさんて、短弓なんだね」

「あっ、はいそうなんです。やっぱり珍しいですか?」

「そりゃあねぇ……初期でやるには経済的に厳しい武器だからねぇ」


 そう、弓とは基本的にどの武器より初期にとてもお金がかかる武器の1つだ。物理遠距離武器として優秀な弓であるが、その唯一の攻撃手段と言っていい物……矢が消耗品であるため、どうしても序盤に金策に苦労する武器だ。

 一応、このイルザォン・ヘッヂオンラインでは、初期矢に関しては3本で1クートという格安で手に入るが、とても威力が弱い物である。


 そもそも弓自体が、単発攻撃力が弱く不意打ちでクリティカル狙いや、急所狙いでないとソロでやるには難しい武器だ。

 それ故に弓遣いは絶対M気質だと言われているくらい、苦行スキルだ。

 それに初期矢はやじりが無く、木の先を尖らして羽をつけただけの物であるから、その威力はたいして無い。

 深くまで刺さらない、ダメージが無い、弱い、と散々な言われような初期矢であるが、これが大弓や狩人の弓などのそれなりの大きさを誇る弓であるなら、まだマシだ。


 けれどリリアラが使っているのは短弓、これは低威力であるが素早く弓が引けて、連射してダメージを稼ぐタイプの弓だ。

 ダンジョンや森の中など、狭い空間においてその威力を発揮する武器なのだが、初期状態の短弓ははっきり言って滅茶苦茶に弱い。

 レベルさえ上がれば、ガトリングアローなどその連射性能を生かした技が使えるのだが、レベル35までは苦行と言われる武器でもある。

 なので一般的な短弓プレイヤーは他の弓を使って、狩人や弓兵のスキルを上げていき、その後短弓のレベル上げをするといった流れが一般的だ。


 なので、ビギナーでそんな短弓を使っているリリアラの事がOYAZIは不思議でしょうがないのだ。


 しかしそんなリリアラからの答えに、俺は驚いた。


「僕、近距離の弓使いになりたいんです!」

「近距離の弓使い?」

「はい! 素早く動いて、至近距離で複数の弓を当てて戦うのに憧れているんです。」

「そりゃあまた、変わった戦い方だなぁ」

「はい、よく回りから言われます『変わってる』って、でも面白そうじゃないですか!」


(ふむ……確かに変わっているが、面白くはあるな……近距離で最も手数が多い武器はツインダガーだ。これはこちらのAgn――回避能力が敵より高ければ通常攻撃で4回攻撃くらいはできる。無論、自分の動きに左右されるから何とも言えないが、おそらくこれが一般的な最大攻撃回数だが……短弓は初期の時でさえ3回弓を引けるので、レベルが上がれば6~7回攻撃ができると思う。そうなれば、使っている矢にも左右されるだろうが、ツインダガーより高威力を出すかもしれん。まぁ可能性だが……)


 そんな事を思いつつ、もう1つ気になった事をリリアラに聞いてみた。


「えっと……今までのと話変わるけれど、気分悪くなったらごめんね? その"僕"ってやっぱりロールプレイ? ちょっと気になって」

「えっ!? いや、その……」

「ふっふっふ……やはりそこに気づくとは、やるねぇOYAZIさん……」

「まっ、まさか!?」

「そう! リリアラは世にも珍しい、リアルでも僕っ子なのだよ!」

「なっ、ナンダッテー…………ってノリで言ってみたけど、その子分かりにくいけど……男の子だよね?」

「あっ! よく気がついたね、普通に皆は女の子と勘違いしてくれるんだけど、その通り! リリアラは男の娘・・・なのだ!」

「……今、絶対俺が言った男の子とは別の奴だよね? 随分昔に流行った女の子に見えるタイプの奴だよね?」

「そうですよ、さらにリリアラはリアルでもっ!」

「ちょ!? エイサさん、嘘を言わないでください! OYAZIさん信じちゃダメですよ!? 僕普通の男の子ですからね!?」

「分かってる、私……分かってるからね……リリアラは男の娘だものね♪ (ニッコリ)」

「だーかーらー、違うって言っているのにぃー!!」


 結局、そのままエイサにからかわれ続けたリリアラだった。

 その後、話をしながら狩をしたんだが、やはりリリアラは名前も姿も自分の意志で決めたのではないらしい。

 なんでもエイサとリリアラの姉がリアルで友達らしく、その姉もこのイルザォン・ヘッヂオンラインをプレイしているみたいだ。

 それで新しく始めようとする弟に姉の心や優しい説得(物理を含んだ強制的圧力)により、女の子のような名前と姿にされたらしい。

 なんとも切ない話だろうか……

 こんな姿をしているせいで、リアルの男友達とは恥ずかしすぎてプレイできず、こうして姉の友人であるエイサと一緒にレベル上げをしているみたいだ。

 俺はリリアラのあまりの不憫さに、思わず口を手で押さえ涙を流しつつ、膝を抱え意気消沈するリリアラをそっと励ました。





 そうこうしているうちに、目的のエリアまで到着した。


「えっと、とりあえずはこのまま只管ひたすらザコ狩りで良いんだよね?」

「そのつもり、だけど余裕があるならスタンピード・ボアを狩りたいところではあるけど……」

「僕しだいってことですね?」

「えぇ! だから頑張ってどんどん敵を釣ってきなさい!」


 それからは、只管に周辺のモンスターたちを狩っていった。


 基本的には、リリアラがモンスターを遠距離で攻撃して釣る。

 それを俺とエイサの所まで引っ張ってきたら、俺が鍛冶師の技のマッスル・アピールという敵の意識をそらす技を使って、ヘイトを集めてそこにリリアラとエイサが攻撃を叩き込んでいくという方法で、狩り続けていた。


「ふぅー、この調子ならボア……いけるかもね」

「そうだな、もし最大レベル12のボアが来ても止めるのは難しくないし、問題ないかもな」

「それじゃあこれからは、スタンピード・ボア探しですか?」

「そうね、ボアが出るエリアまで移動しながらザコ狩りを続けましょ」

「了解、でもボアを見つけてもいったん休憩してからな、念には念を入れてってな」

「そうね、大丈夫だとは思うけど……そうしましょ、それにここら辺はアクティブモンスターはいないから丁度いいでしょ」


 意見が纏まり、俺たちはスタンピード・ボアを求めて先に進んだ。けれど、そこにいたのは、ただのスンピード・ボアではなかった……。






 スタンピード・ボアが出現する場所に着くと俺たちは、いったん休憩をとることにした。


 はむっ……モグモグモグ……ゴックン……

 パクパクパク……ムグッ、ムグッ、ムグッ……ぷはー!


「OYAZIさんこれ凄く美味しいよ!」

「はい! こんなに美味しいサンドイッチ僕、初めてです。」

「それりゃあ良かった。これなら売り物になりそうだな」

「あっ、やっぱり売るんだ。」

「そりゃあねぇ、もちろんベーコンの布教も兼ねてはいるけどね」

「しかし、NPCにレシピ教えるなんて……やっぱりOYAZIさんはマゾだねぇ(ニヤニヤ)」

「そりゃM気質だとは思うが、別にこっちの世界の人に教えるのって、リアルで人に教えるのと大差ないと思うけどなぁ」

「そりゃそだろうけどさ、実際NPCに教えたりする人は少ないよ。確かにリアルで人と話す感覚だけど、私はどうしてもゲーム感覚で接しちゃうなぁ」

「まぁ、それは分かるけど……俺なんかはリアルよりこっちの世界の人の方が人間味があって、より話し易いかな」

「えっ? そう?」

「うん、俺は都会に住んでいるからそう思うのかも知れないが、リアルだと人との繋がりが希薄のように感じるんだ。それに田舎の近所付き合いとも違った感覚だな、なんだろう……損得とか顔色を窺うみたいな仮面を着けた付き合いじゃなくて、純粋に子供同士が気の合う奴と友達になる感覚のような感じかな? 上手く説明できないが」


「あーなんとなく分かるかも、確かにどの人もこっちが変な態度で接しない限り最初からフレンドリーに声かけてくれたり、接してくれるよね」

「あぁ、そういったのを嫌ってるプレイヤーもいるけどな、俺としてはNPCとしてでは無く1人の人間として接しようと思ってる。特に村にいてからそう思うようになったかな……実際あの村に永住したい気分だったしな」


「すれば良かったんじゃない? ついでにこの世界で一生住むとか……」

「それができるのだったらしてみたいけどね、現状では肉体を捨てて電子世界で生きる方法は開発されてないからなぁ、一番やれそうな方法で点滴や流動食を定期的流し込まれて、排泄も自動にされて、まるで介護老人のように寝たきりでゲームに繋がるしか方法がないけどな」


「あー確か随分昔の映画でそんなのあったよね、AIとロボットに支配された世界で人間は仮想現実に繋がれていて、そのAIに戦いを挑むやつ……こうすっごく背をそらして銃弾を避けるのが有名になったの」

「あぁ、あったねそんな映画……と言っても俺もそこまでしてゲームの世界にい続けたいとは思わないけどな、まぁ凄い金持ちになって、よぼよぼの爺さんになった時なら分からんが」

「そんなお金があるなら私にちょーだい!」

「あるわけないだろ? 宝くじでも当たらない限り夢のまた夢さ…………さて、休憩も済んだしボア探すか」

「了解~、それじゃあリリアラ、狩人の遠見を使ってボアを探してみて」

「はい。分かりました。スタンピード・ボアってどんな奴ですか?」

「外見はまんまイノシシ、でも大きな牙と赤茶色の毛が特徴で、かなり大きいから見つけやすいと思うわよ」

「……………………見つけました! アッチの方にいます。」

「よし、それじゃあ手はず通りに行きましょ! リリアラが気配消しの技を使いながらボアに近づき一撃を加える、そして直ぐにOYAZIさんの方へと走る。そしたらOYAZIさんは事前にDefを上げておいてボアに近づき、マッスル・アピールでターゲットを自分に代えて突進を止める。そしたら……」

「僕が遠距離から通常攻撃を当てて、突進が終わり際に……」

「エイサが大技で一撃を加えて、続けて俺も大技を出して俺にターゲットを戻して、もう一度ボアの突進を受け止めての繰り返しだな」

「うん、その通り! それじゃ始めようか」


 そして俺たちはボアを微かに視認できる位置まで移動すると、リリアラが気配消しを使って草むらに身を隠しつつ近づいていく……

 とりあえず俺は何があってもいいように、エンチャンターの技でDefとStrを上げる魔法をかけて、いつでも動けるようにした後、生産系のスキルならどれでも覚える技の"集中"を使って目の視力を上げて、リリアラの様子を眺めた。


 ちなみに"集中"は身体能力を底上げする技だ。なので視力だけでは無く、攻撃・回避・防御とかも多少は上がる。


 けれど、ターゲットであるボアを見ていると、少し違和感を覚えた。


「なぁ、エイサ……」

「なに~」

「今、集中を使ってボアを見ているんだけどな」

「うん」

「ボアってあんなに大きかったか? それと赤茶色というか紅って感じの色をしているように見えるんだが……」

「へ? ちょっと待ってね、私も狩人を取ってるから遠見を使って見てみるねぇ…………!!? ヤバッ! リリアラ中止! 攻撃中止! それボアじゃない!!」

「え?」


 エイサの制止がわずかに遅かった。リリアラは矢を放ってしまった後だった。


 矢は真っ直ぐターゲットに飛んでいく……そして見事に命中、しかし振り向いたモンスターはスタンピード・ボアではなかった。


「ディザスター・ボア……」


 エイサがそう呟いた……。

 最近、外付けHDDを新たに購入しました。現在の650Gのがそろそろ買って6年になるので念の為に購入したのですが……最近のHDDって安くなったんですね。

 1Tで1万円以下とか、パソコン関係はほんと日進月歩の勢いですね……しかし新たに買ったのが安かったから2Tの物を買ったんですが、そんなに入れるデーターなんてないんですよねぇ、650Gですら現状余ってるのに……


 ペラペラの8インチのフロッピーディスクを使っていた頃が懐かしい、ぷよぷよとか一太郎とかあの頃にもあったんだと思うと、自分も歳をとったなぁとしみじみ思います。

 個人的にWindows 95の起動音好きでした。

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