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袖(そで)すり合うも他生(たしょう)の縁

 そですり合うも他生たしょうの縁 とは

   道で知らない人と、袖が触れ合うような小さな出来事でも、前世の因縁によるもで、どんな小さなことでも、原因が必ずあるのだから大切にしろという意味……


 俺は今、久しぶりにジャネイロに戻っていた。


 ベーコンが完成してからリアルで1ヶ月あまりの時間をかけて、ようやく貿易路の完成を見た。スライムの村と人間の村と共同ではあるが、5tほど荷物を積載できる船が予備を含め3そう建造することができた。

 構造としては最初の案だった帆船ではなく、船の後部に水車のついた太湖汽船たいこうきせんをモデルにした物となった。


 別に蒸気動力で動く仕様ではなく、船倉の後部に風の属性の魔石を設置して、それに魔力を流す事で風が起こりその風が管を通り直接水車に風を当てて回し、それを推進力として進む仕組みだ。

 しかも管の出口前には、流れてきた空気が一定量溜まる仕組みになっており、そこの圧力が一定以上溜まると管の出口をせき止めている部分が圧力で開き、その強風により水車が回転するようになっている。


 本来なら、ソコソコの魔石を用意すれば問題ないのだが、純度……内臓魔力量が多い魔石は、それに見合ったレベルのモンスターがドロップするので、それを常に狩り続けるのは村人たちにはやはり厳しい考え、俺は低純度の魔石でも船が動かせるようにしたのだ。


 高純度の物をセットすれば、風をせき止める事無くそのまま水車に当たる様になるので、微・低・中・高……どの純度の風の魔石を使っても舟を動かせるようにしたのだ。


(やっぱり誰でもある程度、使える物でないと今後が大変だからな……これからは船の数は増えるだろうし、そうなれば魔石の使用量は増えるが高レベルのモンスターを狩れる村人が少ない以上、量を増やす事ができなくなってしまうし、何処かで購入するとしてもそれなりの値段になってしまうからな、それでは意味が無いし、自分達の手で維持していける物でないといずれ破綻してしまうからな……)


 あぁそれと魔力を流すのも、態々船倉にある魔石の所に行かなくてもデッキにある操舵室で魔力を送れるようにした。これは設計図を書いて、皆に船の構造を教えるさいにキチンと綺麗に図面を書くために取った"筆写師"のスキルで可能となった。

 このスキルは地図を描いたりするスキルだが、それ以外にも魔石を砕いて作られたインクで魔力を通しながら魔方陣を描くと、使い捨てではあるが刻まれた魔法を誰でも使う事ができるマジックアイテムを作れるスキルだ。


 主に取っている人は、錬金術師だったり魔法使いが多く取っているスキルなのだが、錬金術では触媒しょくばいで製作したマジックアイテムを使うが、ほとんどの人は強力な魔法を詠唱破棄して使うために取っているのが主だ。


 前にロイがジャネイロに帰るために使った、マジックアイテムもこの筆写師のスキルで作られた物だ。


 そこで俺は、船に使用される板材の下に直接魔方陣を彫って刻み込み、その魔方陣に魔石が入っているインクで墨入れみたいにして、操舵室から船倉の魔石まで魔方陣を繋いでみた。

 本当ならジェット水流を使った物にしたかったが、なにぶん鉱物が取れないこの場所ではそんな圧力に耐えれる素材が取れなかったので、木を使ってできる物に限定した結果、水車って事に落ち着いた。


 パイプについても、どっからどう見ても竹にしか見えない木がいっぱい生えていたので、それを利用してみた。それともしも水車が壊れてしまって、その場での修復不可のだった場合を考えその竹みたいな木をマスト代わりに使って、帆を張れるようにもしているので安心だ。


 村や温泉に関しては、とりあえずの建物を建築し後はジャネイロから出資してもらったお金と、人を使い建造していく予定だ。

 今は宿屋が人間の村の方へ1軒立てられ、貸し家も小さい物を数件立てた。温泉は温泉をぐるりと囲むように高い塀を作り、塀の周辺の木を30mほど全て伐採し覗き防止策を取った。


 まぁこれは、ジャネイロから視認不可の魔術防壁が設置されるまでの仮処置である。温泉自体の入浴は日替わりとした。

 最初は水着着用の混浴案も出たのだが(主に男性陣から熱烈に)結局、女性からの物理を交えた交渉により却下となった。


 現状としてはまだまだ開発途中ではあるが、ジャネイロからの多額の資金援助と村の魔物が沸かないようにする結界の範囲拡大も国に認められたので、今後はどんどん発展していくだろう。

 なので一先ずの完成をみたので、俺は村から出ることにしたのだ。村の人からはもっといて欲しい要望はあったものの、俺自身他の町や国に行ってみたくてしょうがなかったので何とか説得する事ができた。

 

 そして村の人たちからは、感謝の印として色々な物を貰った。


 1つは今後は村までの船代をタダにしてもらえ、温泉の入浴料と宿代がタダにしてくれるとのこと、後はセリさんからは去り際に不思議な物を貰った。


「OYAZIさん本当にありがとうございました。」

「いえいえ、俺はちょっと案を出して手伝っただけですから、作ったのは村の皆なですからそんなにたいしたことはしていませんよ」

「まぁ、ご謙遜を♪ OYAZIさんがいなかったら村はこのままゆっくりと滅びるしかなかった運命を変えてくださったんですもの、村の英雄ですよ」

「英雄だなんて、それはおだてすぎですよ」

「フッフ、そんな事ないわよ? 少なくともアニスにとっては貴方は英雄だと思うわよ? いえ、憧れかしら? フフフ」

「アニスの気持ちはなんとなく分かっていましたが、俺にとっては歳の離れた妹感覚なんですが……」

「あら、もう少しすればアニスも成人すると思うから、そういう風に見れなくなるわよ?」

「え? アニスってまだ子供ですよね? 年齢は知りませんが、人型の見た目は6~7歳に見えましたが?」

「なんだ、アニスから聞いていないのね? あの子、一応あれで13歳なのよ?」

「そうなんですか!?」

「えぇ、私たちスライムは心が成長する事で人型の時の外見が変化するものなの、だからアニスはそろそろ大人の姿になると思うのよ」

「えっと、それはつまり……」

「OYAZIさんに恋をしたからでしょうね♪」

「恋って……良いんですか? 自分の娘がこんな年上を……見た目おっさんを好きになっても?」

「あら? 恋をするのに年齢なんて関係ないでしょ? 私たちスライムは外見が大人に成長して初めて成人扱いになるの、だからアニスは貴方に恋してしまったからたぶんそろそろだと思うわ」

「それに、あの子から貴方にって渡された物もあるしね」

「アニスから?」


 そう言って手渡された物は、青色のプニプニと柔らかい物が真ん中に埋め込まれたネックレスだった。


「これは?」

「それは、私たちスライムの体の一部よ」

「うえっ!? それはどういう……まさか自らの体を切り取ったんじゃ!?」

「ウフフフフ、そんなわけないじゃないですか♪ それは私たちスライムが生涯3度大きく成長する時に体から切り離された物よ」

「切り離された?」

「えぇ、私たちは人型になれない赤ん坊の時から、人型になれるようになる幼児体の時と、幼児体から大人(若者)になる時と、大人(若者)から大人(成熟)時に段階的に人型になった姿が成長するの、その時に体の一部が分離するわ……それがスライムブロックと呼ばれる物なんだけれど」

「で、そのスライムブロックていうのは、この真ん中に埋め込まれているヤツですか……?」

「そうよ、それはアニスが赤ん坊から幼児体へ成長した時に分離したものなの、普通の子は最初の分離したのを自分でお守りとして大事に持っていたり、自分の子供が生まれた時に持たせるものなんだけれど……あの子はどうしても、それを貴方にって」

「良いんですか!? そんな貴重な物を俺にくれても!?」

「別に本人が良いって言っているから構わないわよ。それとこれも……」


 セリさんは腰につけていた袋から60cm四方の、それぞれ違う色のついたブロックを3つ手渡してきた。


「はい、これも受け取って」

「まさかこれも!?」

「えぇ、これもスライムブロックよ……さっきのは最初の分離した時のだから小さいけれど、残りの2回に分離する時のは、だいたいこのくらいの大きさになるの」

「さっ、さすがに受けとれませんよ!」

「あら、貰ってくれないの? それはそこまで気にする物でもないのよ?」

「いや、でも……その、これって成長した証みたいな物じゃないですか、それを……」

「ウフフ、そこまで深く考える物でもないわ、最初のスライムブロックだったら記念に取って置くけれど、それ以外は普通に街へ売りに行っている物よ?」

「へ? 売っちゃうんですか!?」

「えぇ、だって後生大事に取っておいても使い道が無いもの……売りに行くと結構な値段で売れるから、村から旅立つ時にもって行く子も多いわよ?」

「そうなんですか……でも、高値で売れるって事は結構価値がある物なんですよね? さすがにそんな高価な物は……」

「それは、人間にとっての価値でしかないわ……言ったでしょ? 使い道が無いって、何かの素材としても使えるみたいだけれど……それ一応食べれるのよ」

「はぁ!? これって、食材なんですか!?」

「食材でもあるらしいわ、私もどうやって調理するか知らないし、スライムは果実以外のものを美味しいと感じないから、取っておいても本当に意味が無いのよ」

「な、なるほど……」


 結局、俺はその大きいスライムブロックも受け取り、村の皆とアニスやセリさんとも別れを済ませジャネイロに戻って来たのだ。


 とりあえずアニスのネックレスは身に着けている。アニスの気持ちの事もあるので身に着けてはいるのだが、アイテムとしてこのネックレスは凄い効果を持っていた。


 スライムブロック・ネックレス (アクセサリー)

     中央にスライムブロックが埋め込まれた美しく輝き、元になったスライムの強い祈りと思いが込められたネックレス

 (物理ダメージ軽減(大) 水耐性(中) 氷耐性(低) 水魔法効果上昇(中) 氷魔法効果上昇(低) HP最大値20上昇 消費MP軽減(微))

  特殊効果:アニスの祈り(HPが50%以下になった場合、自動的にHP15回復。状態異常耐性(低))


 と、こんな感じなのだが……とにかく凄いの一言に尽きると思う。こんな序盤にこれほど凄いアイテムを貰えるとは、思ってもみなかった。

 しかし、それは裏を返せばどれほどアニスが俺の事を思っているのかの証明になるのだが、この特殊効果のアニスの祈りって何? つまりこの効果を翻訳すれば、怪我や病気に気をつけてって感じか?


(うーん、なんだろ……ここまでくると愛が重い感じがしてしまうが、もしかしたら次にアニスと会った時には彼女はもう子供の姿じゃなくて、大人の女になっているって事だろうか?

 そうなったら俺はアニスにどう接すれば良いのだろうか、相手は年齢で言えばまだ13歳……ということはリアルで考えれば間違いなくアウトだ。

 それにゲームの中の女性に告白なんかされた日には、俺はどうしたらいいんだ……。あれか? もし今度俺が家族なり、知り合いに『彼女はいるの?』って聞かれたら『おう! いるよ、ゲームの中だけどね♪』って事になるのか?

 いっイヤじゃぁぁー! 何その中二発言! 完全に痛い人じゃないか、そもそもどうやって今後付き合うの!? 結婚できないよ、ゲーム内ならできるかも知れないけれど! 子供とかどうなるの!? あれか、ゲーム内でもし結婚したらキャベツ畑に赤ん坊ができるのか!? それともコウノトリが運んで来るのかな? ってどちらにしてもリアルでは痛い人でしかねぇー!!!!)


 そんなアホな事を考えながら、OYAZIを乗せた船はジャネイロへと進んでいった。





「うーん……久しぶりの町だなぁ、とりあえずこれから何をするかなぁ……鉱石を採りに行くのはいいとして、その後だよな……」


 俺は、道中の考えを考えなかった事にして、船から降りるとそのままマイハウスへ戻り荷物を片付けて、久しぶりのジャネイロの町を満喫しながらぶらついていた。

 そんな時、人混みを避けて裏路地へ入ったらふわりとピンクの髪が揺れるのが見えた。そこには懐かしい人に出会った。


「お? エイサさん、久しぶり!」

「ん? あっOYAZIさん! 戻ってたんだぁ」

「あぁ、つい先程な……と、あのこちらの人は?」


 久しぶりにエイサとであったOYAZI、しかし彼女の横には小さい子がもう1人オドオドした表情でOYAZIを見ていた。


「あっ、この子はリリアラ、私の所属するギルドにこの間、入ったばかりの子なの」

「はっ、初めまして! リリアラと言います。その……よろしくお願いします!」

「うん、こちらこそよろしく、俺はOYAZI……エイサさんとはフレンドなんだ。」

 

 俺たちは互いに自己紹介を済ませると、エイサたちがこんな所で何をしていたのかと質問をした。


「あー、実はリリアラのレベル上げをするつもりでいたんだけど、約束していたタンカーの人が来れなくなってね、それで野良ノラの人を誘うかどうか相談していたの」

「なるほどね、でも野良ノラのタンカーて少ない気がするけれど、いるのか?」

「いるとは思うけど、初心者のレベル上げの狩りに付き合う人は、中々ねぇ……」

「あぁ、確かにな……」


 現在ジャネイロはアップデート追加された迷宮効果は落ち着きをみせていた。


 迷宮自体は既に多くのプライヤーに踏破されていて、今は素材集めに迷宮に潜る人はいても周辺の狩場でレベル上げをする人は少ない。

 これは俺があの村の事を掲示板に匿名で乗せて、村をアピールした事も要因の1つだろう。俺が村から帰る時には、結構な数の冒険者が村を訪れていたからな……


 それとタンカーて役割がけっこう難しい事もあり、プレイしている人は結構いるとは思うが、現在初心者のレベル上げに付き合う人は少ないだろう。タンカーを目指している初心者はいるかもしれないが、それでは教える対象が増えるだけでエイサの負担を増やすだけになってしまう。

 そもそもタンカーは、戦闘の時に敵のヘイトを自分に集めて、その高い防御力で敵を惹きつけて味方に攻撃しやすいように誘導したり、敵のターゲットが味方に移らないように常に気を払いつつ敵の動きやHPを見ていなければならない……


 まぁ、こんな初心者の狩場でそこまで警戒する必要は無いとは思うのだが、最初にそういったパーティープレイをしっかりしておかないと、後々大変になるのも事実だ。

 それにもしも敵の攻撃ターゲットがこの新人のリリアラに向えば、低レベルモンスターといえど死ぬ可能性はある。


 だからこそエイサは困っているんだろう。


(うーん、ここまで話を聞いて『それじゃあ頑張ってね! 俺はちょっと採掘行ってくるからぁ』と逃げる訳にもいかないよなぁ、まぁ乗りかかった船だしここは一肌脱ぐとしますか!)


 そう決断した俺は、2人に話しかけた。


「その、良かったら俺がタンカー役やろうか?」

「「え?」」

「良いの!? そうしてくれたら助かるけれど……OYAZIさんのスキルって……」

「まぁ確かに万能生産型だけど、斧のスキルも取ったし、どれもレベルは25は超えているから、鍛冶師の"火事場の馬鹿力"も覚えてるし、鉱夫の"鉄の肉体"も覚えてる。これなら十分タンカーは勤まると思うよ」

「確かにそれなら……でも良いの? 初心者の狩り場だよ? 今のOYAZIさんじゃあ、何の旨みも無いけど本当に良いの?」

「あぁ、構わないよ……それに素材集めたかったから、丁度良いタイミングだったよ」

「素材って……あそこにいるのって、ジャンピング・ウルフとラクーン・バルーンとか精々レベル5前後のモンスターしかいないよ? エリアボスのスタンピード・ボアだって高レベルのが来てもレベル12だし、良い素材なんて無いよ?」

「いや、それくらいの素材でいいんだよ、俺の今の装備初期のままだし……そろそろ自分で装備一式作ろうかと思ってね、鉱物が取れない村では取付金具とか作れなくて何にも作れていないんだ。だから」

「いや、それこそ露店で買ったほうがマシじゃない?」

「そんな事はない、やっぱり自分の装備は自分で作りたいじゃないか! そこにロマンがあるのだよ!」

「……いや、OYAZIさんがそれで良いならいいんだけれどね? ……リリアラはそれでいい?」

「ふぇ!? あっはい! 僕は構わないです。その……手伝ってもらってありがとうございます!」


 そう言ってリリアラはペコペコと頭を下げて、お礼をしていた。


「いや、そこまで気にしなくてもいいよ……。互いの利益が合致しただけだから、そんなに頭を下げなくても……」

「いや~やっぱりOYAZIさんは優しいねぇ、それじゃパーティー申請送るねぇ」

「……ん、確認した。さて、俺はまだ準備できてないから倉庫にアクセスしてきていいかい?」

「うん、いいよぉ~それじゃあ20分後、南門の掲示板の前に集合ね」

「はいよ。」

「分かりました。」


 そうして俺は2人と分かれて、いったん準備の為にマイハウスへと戻った。

 今回は、珍しく早めに投稿できました。(いつもこれくらいのペースで書ければ良いのになぁ)


 そういえば、ブックマーク数が何と! 2400件を超えました! これを見た時、滅茶苦茶驚いて、俺夢でも見ているんじゃね? と思う日々を送っております。

 本当に皆様、読んでくださってありがとうございます。今後も最低でも1週間間隔で投稿していきますので、気長にお待ちいただければ幸いです。

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