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外伝 アニスの思い



 今日はお祭りです。でも毎年やる春の収穫祭とは違います。


 何でも、スイジョウボウエキロ? というお船を使った交通手段が完成したので、そのれを祝うお祭りみたいです。


 私はジュースを飲みながら、そんな皆が楽しそうに笑う姿をぼーと眺めていました。


 会場は人間の人たちの村で行われています。昔、お父さんと果物のノウヒンで行ったのある、マチとうい場所に比べれば人は少なく、大きな建物も無いところですがここにいる皆はとても優しい人ばかりです。


 初めてマチに行った時は、皆がジロジロ見てくるし、人混みでぶつかってしまい謝っても声を返してくれる人はいませんでした。

 それによく分からない言葉を使う人たちが多かった印象です『ヨウジョ、モエ~』とか『モンスターッコ、カワユス』など聞いた事のない言葉を、私を見ながら話している姿をよく見かけました。


 あれはいったいどういう意味だったのでしょう? まぁ、そんな事はどうでもいいのです。


 目下、私の悩みは数ヶ月前に出会った人間の冒険者の事でいっぱいです。今も大勢の村の人たちに囲まれて楽しそうに話しているあの人……

 見た目ではお父さんより年上に見えるけど、とてもカッコイイ人なんです。


 あの人との出会いは偶然でした。


 今から半年ほど前の事です。迷宮が前に住んでいた村の近くにできたせいで、この村の近くに引越してきました。

 けれど、新しい村の周辺のモンスターの討伐や調査をまだ本格的にできていなかったので、子供は村から出ることはできなくて退屈な毎日でした。


 けれどある日私は村から抜け出す事のできる秘密の抜け道を見つけたんです。そのお蔭で、誰にもばれずに村の外へ出ることができるようになりました。

 最初のうちは村の周辺の散策ばかりしていましたが、その日は思い切って人間の村までいってみようと思い立ったのです。


 人間の村までの街道にはあまりモンスターが出ないので、サクサクとくる事ができました。そんな時、変わった人を見つけたのです。

 

 その人は何やら棒の先に糸をつけて、川の中に糸を垂らして座っていました。後で聞いた話ではツリという魚を捕るための方法らしいです。

 そんな不思議な事をしている人間を見つけたので、私は興味本意で近づくとその人の横に置いてあったバケツの中に見たことの無い魚が泳いでいました。


 私はその魚たちを見て心躍らせました。


 私たちスライムは自分に合った属性の物を食べる事でスキルが成長します。なので私も毎日川でお魚を捕まえて食べているのです。

 だけど、見つけたバケツの中にいるお魚は今までに見た事も食べた事も無い種類の物でした。なので私は思わずその魚を食べてしまったのです。


 そうしたら何と! スキルレベルが上がったのです。今まで数十匹も魚を食べないと上がらなかったスキルが、たった1匹の魚を食べただけで私の"水属性強化"と"水耐性"水魔法"などのスキルが上がったののです。

 私は驚きました。そして夢中で魚を食べ始めてしまったのです。その時の私はその行いが悪い事かどうか判断する事もなくただただ無我夢中でした。


 その時でした。突然『!? なっ、えっ……おっ俺の魚ぁぁぁ!』と横にいた人間が大きな声で叫びました。

 その時、私はようやく自分がしてしまった事を気づきました。


 けれどそんな大きな声で驚いてしまった私は条件反射で逃げ出してしまい、近くの草むらに逃げ込みました。


(うぅ……どうしよう。逃げるつもりはなかったのに、体が勝手に……本当にどうしよう。やっぱり怒られるよね? しかも勝手に食べたって事はこれも窃盗? になるのかなぁ、そうしたら私……捕まっちゃうの? どうしよう、そんな事になったらお母さん怒るよね? それ以前に村から追い出されちゃう? アワワワ困りましたぁ。どうすれば……)


 と、ビクビクしながら悩んでいると大きな声を上げた人が、しゃがんで優しい口調で話しかけてきたのです。『うっあぁ……その……す、すまない……ちょっと驚いてしまって、大声を出してしまった。驚かせるつもりも、怒ってもいないから出てきて大丈夫だよ』と……

 私は草むらの中からじっとその人を見つめました。その人の目は優しく、嘘を吐いている感じはしませんでした。なので私はオドオドしながらも草むらから出ました。


 そして話をするために人型に姿を変えました。


 私は『本当に怒っていない?』と話すつもりが『……ホント……おこっ……ない?』とたどたどしい口調になってしまいました。

 やぱりお母さんに言われたとおりに人型の練習を、しっかりしておけば良かったと思いました。その時は凄く恥ずかしくて、俯いてしまいました。

 

 そんな私は人型に慣れていないせいで、普通に話すつもりがたどたどしく、途切れ途切れでしか話せない自分に落ち込みましたが、なんとかその人とはコミュニケーションをとる事に成功し、村まで来てもらう事ができました。


 それが私のOYAZIという冒険者との出会いでした。





 あの日、OYAZIさんを村に連れて行った日……彼が帰った後お母さんには散々お説教されました。『村のまとめ役である家の子供が、何てことをしているのよ!』と数時間に及び怒られました。

 なので私はそれからほぼ毎日のようにあの人の家を訪ねる事にしました。やはりこういった事をした時は、謝る事を繰り返す事により気持ちが伝わるというもの! 私は村を治める家の娘として恥ずかしくないよう、ここは淑女らしい振る舞いをしつつ謝罪すべきだと考えたのです。


 まぁ、結局のところ上手く喋れなくてお母さんが持たせてくれる果物を手渡したら、あの人の作業を見ているだけでしたけどね?

 だけど作業の合間にあの人が飲み物を作ってくれて、私の頭を撫でてくれる時はとても嬉しかった。胸がドキドキしてとても体が熱くなるの。


 そんな風にあの人と過ごしているとある日、珍しくお母さんが私を迎にきてくれました。


 どうやらお母さんは人間の村の人とお話に来ていたようです。そんなお母さんの表情はとても暗いものでした。

 私はその理由を知っています。前の村では人間のマチまで馬車を使って果物を運んでいました。けれど今住んでいる所からマチまでは遠く、馬車も前の村から逃げてくるときに壊れてしまい馬も怪我をしてしまったので運ぶ事ができないでいました。


 なので人間の村の人にお願いして、定期的に来る馬車に果物を積んでもらいお金を稼いでいました。だけどいままでより入るお金が少なくなっているみたいです。

 運ぶ距離が遠くなればそれだけユソウコスト? というのが増えて儲からなくなるそうです。なのでそれをどうにかできないかのお話に来たようです。


 その話をお母さんはあの人に教えました。するとあの人は暫く考え込んだと思ったら何やら提案をしてきました。

 私はいまいち言っている内容が理解できませんでしたが、お母さんはその話を聞いて驚き、喜びました。その結果が今のお祭りなのです。




 今あの人はローズマリーさんと何やら嬉しそうにお話しています。しかもその目線の先は先程からチラチラとローズマリーさん胸を見ています。

 やはりお胸が大きいほうがあの人の好みなのでしょうか? 確かお母さんと初めて会ったときも胸のあたりを見ていたと思います。


 そんな楽しそうに笑うあの人を見ていると、あの人は私の事に気づき近づいて来ました。私は咄嗟にあの人から顔を逸らしてしまいました。

 しかし、あの人はそんな私の態度を見ても優しく挨拶してくれました。


「こんにちは、アニス」

「こん……ち……は」

「やっぱりアニス怒ってる? 本当にゴメンね、秘密の場所を皆に教えてしまって……」

「いい……オコ……ない……。」


 あの人が言う秘密の場所とは、スイジョウボウエキロが本格的に動き始めた時に私は皆の邪魔にならないように森で遊んでいる時に見つけた不思議な池の事です。

 どうやらオンセンという温かいお水が出てくる場所らしくて、ベーコンという物を作る作業に悩んでいたあの人を気分転換のため連れて行ったところ凄く喜んでくれました。


 だけどあの人は2人だけの秘密の場所を皆に教えたいと言ってきたのです。私は最初はイヤと言いましたが、お母さんに説得されしぶしぶ納得しました。

 本当にあの人は乙女心を分かっていません! せっかく2人だけの秘密なのに、それを皆に教えてしまうなんて……


 暫く私とそんな風に話していると、あの人は誰かに呼ばれてました。そしてスッと立ち上がると、あの人は去り際に私の頭を撫でながら『ごめんね……じゃあまた。』と言いながら行ってしまいました。

 去っていくあの人の背中を見つめながら私はとても寂しい気持ちでいっぱいでした。


 私だって分かっています。あの人が私を見る目は、子供か妹を見るようなそんな目である事も……私の事を女として見ていない事も……


 でも、いいのです。


 私はめげません! あの人はこのお祭りが終わったらマチへ帰ってしまいます。だけど私は泣きません! 今度合う時はあの人がビックリするぐらい立派なレディーになっているんだから、もっと上手く話せるようになってやるんだから、だから……


 いつか大人になったら、あの人と一緒に旅をできるようになってみせます。だから待っていてくださいOYAZIさん。

 かなり短めですいません。とりあえず村でのお話はこれで終わりで、次回からOYAZIはいったんジャネイロに戻ります。


 しかし最近貴族令嬢モノにはまってしまい、自分でも短編小説を投稿するほどのめり込んでしまっています。

 今も裏で貴族令嬢モノを書いていますが、投稿するかどうかわかりません。本当に気分屋な自分は、いっかいはまるとそれ以外のことができなくなるくらいのめり込んでしまうのですが……


 熱が冷めるのも急激で、今裏で書いているのも途中で止めてしまうかもしれません、というか書き途中の貴族令嬢モノがこの一週間で8作品ほど書いてしまっている状況です。

 もしかしたらまた短編のこの作品とは関係無い物を投稿するかもしれませんが、なんとか1週間に1度はこの作品は投稿するつもりでいるので長い目で見ていただけると幸いです。

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