石橋を叩いて渡る
石橋を叩いて渡る
《壊れるはずのない強固な石の橋を、一応叩いて安全性を確かめて渡ることから、用心し過ぎるほど用心深くなること》
用心の上にさらに用心を重ねて物事を行うという意味……
光りが治まると大きな円状の横幅が薄いオブジェの中に青い半透明の水が揺らめく"ゲート"と呼ばれている一度行ったことのある町に、一瞬で移動できる装置が設置してある広場の中央に立っていた。
そして目の前には綺麗なヨーロッパの中世を思わせる町並みが広がっており、まるで現実の欧州に来たかのようだ。
「おぉ~ これがゲームの中かぁ~スゲーな、風も匂いも感じる。おっと、ここに立っていたら邪魔になるな、とりあえず装備の確認をと……」
俺が出てきたのは始まりの町"ジャネイロ"ポルトガル語で1月って意味らしい、とりあえずこの世界は町の名前が暦で王都が星座みたいだが、今のところ人間と魔族・エルフ・獣人の国しか行き来できないので、町もそんなに無くて現在いける町は4つ在りそれぞれに特徴がある。
まず始まりの町"ジャネイロ"は森・川・草原・山・炭鉱・ダンジョンと何でもあるバランスの取れたベーシックな町。
次が炭鉱の町"フェヴェレィロ"険しい山と豊かな鉱脈の炭鉱と広大で深い森がある鍛冶や木工等の生産系の店が多くあり、生産系ギルドの拠点も多い町。
後は、畜産と農業の町"マルソ"と、日の光が指さない程の深い森と谷がある"アブリウ"の4つで、人間の王都は港街で名を"アリエス"っていうらしい、他の種族の王都は行ってみてのお楽しみってことで……
それとこの世界に住んでいる種族は全部で、人間・魔族・エルフ・ドワーフ・獣人・魚人・天界人・妖精の8種族でダークエルフやハイエルフなんかはエルフ族の一種族扱いでハイエルフが貴族っていうか普通のエルフよりヒエラルキーが高い感じらしい、まぁこの辺も追々自分で行ってみればいいのでとりあえず保留でいいだろう。
(さてさて装備はっと、おぉ……)
俺は他の人の邪魔に成らないように広場の隅へ移動するとメニュー画面を開いて装備を確認した。
頭 :布のバンダナ
顔 :無し
上半身:始まりの軽装(上)
下半身:始まりの軽装(下)
腕 :無し
足 :始まりのブーツ
インナー:普通の下着
武 器 :初心の両手斧
アクセサリー:※精霊の三珠
アイテム
初級ポーション×5 初級エーテル×5 銀の鍵×1 ※中級ポーション×3 ※中級エーテル×3 ※転移結晶×2 ※魔物避けの護符×5 ※暗視ポーション×5 ※精霊の結晶×1
所持金:5万クード(※+5万クード)
※印のモノは新規入会キャンペーンアイテムです。
(うむ、キャンペーンのお蔭でお金は10万クートもあるしアイテムもアクセサリーもあって序盤はかなり楽だなぁさて、まずは道場で武器の使い方とレベル上げするかぁ、たしかスキルはそれぞれの技を使うか生産なんかしないと上がらないから、レベルが5まで道場で上げれるからとりあえずキャラレベルだけでもそこまで鍛えるかな)
キャンペーンアイテムの効果はざっとこんな感じだ。
精霊の三珠 :装備中にダメージの軽減(低)
暗視ポーション:スキルで暗視等を取得していなくても、夜間や暗闇で昼間のように15分間視認できる
精霊の結晶:使用するとランダムで精霊を召還し使役できる(使役時間は精霊の種類によって変化)
魔物避けの護符:10分間アクティブモンスターからのターゲット無効(自身が攻撃すると効果消滅)
転移結晶 :登録した町や村等のセイフティーゾーンを記録し何処からでも転移可能(ボス戦・ダンジョン内無効)
そして"銀の鍵"についてだが、これは課金アイテムだ。
この鍵はマイハウスに出入りできるアイテムなのだが、もともと生産系でいくつもりだったので工房用に購入したのだ。もちろんマイハウスは無課金でも手に入るが最大でも"銅の鍵"までしか今のところ手に入らないみたいだ。
ランク的には錫・銅・鉄・銀・金・白金・オリハルコンとなり、オリハルコンだと城レベルになると言われている。
じゃあ無課金で手に入るなら"錫の鍵"でいいじゃないかと思うが、これだと4畳半位の広さしかないのだ。
でも銀の鍵なら10坪の庭・12畳の地下室と同じ大きさの部屋が1、2階とあり風呂まであるのだ。だから最低限工房として使うにはこれくらい必要だと思い購入した。
まぁ、町のNPCの工房を最初は無料で利用できるのだが後から1回に付き500クート掛かるので、早めに欲しかったのも理由だ。それに俺は複数の生産系スキル持ちだからそれぞれの製作にいちいち場所を移動するのが面倒なのもある。
それとマイハウスは一度登録した町に固定になるが、鍵を使えば何処からでも登録した町に戻れるのでワープ用として使っている人が殆どのようだ。
1度入っても登録した町か入って来た町のどちらかに出ることは選択でるみたいなので、かなり使い勝手が良さそうだ。
それと各町にはワープゲートや乗り合い馬車があるのだが、どちらの利用にも金が掛かる、ゲートは3万クート、馬車は2千クートかかるのだ。
ちなみにだが宿屋は平均一泊30クート前後で泊まれるので、基本は宿屋でログアウトするのが一般的だ。
一応、町の中なら何処でもログアウトできて再度ログインする時は同じ場所に出れるが、かなりの確率で歩いているNPCや他のプレイヤーとブッキングして出てきた瞬間ぶつかるとか、接触するとかの問題が多くて最近では宿屋かマイハウスでログアウトが暗黙のルールになっている。
さらに公式でも『出来るだけ宿屋かマイハウスで』と呼びかけているみたいだ。それと宿屋やマイハウスならMP・HPも回復しているのでポーションで回復するよりお得なのだ。
(まっ、マイハウスはベッドを購入して設置しないと回復率が少ないらしいが序盤ではあまり関係無いだろう、まさに課金万歳だな! どの道、今までは働くことが生きがいで趣味なんかなかったからなぁ、だから貯金の使い道すら無くてお金が貯まる一方だったから、これくらいの贅沢はイイだろう)
そんな事を考えつつ俺は道場に向かう前にNPCに魔法道具屋の場所を聞き、とある物を購入するために訪れていた。
(しっかしネットの話は本当だったな、NPCなのに普通の人と会話しているみたいで表情も豊かだったし、1キャラずつAIを当てているらしいって噂は本当かもなぁ…っと、ここがそうか、うわぁ~本当におとぎ話みたいなお店だな!テンションさっきから上がりまくりで楽しくてしょうがないな♪)
ここはNPCの営む魔法道具店だが、俺がここで買おうと思っているのは2つだ。ひとつは武器装備の指輪、もう1つは町中と町周辺が描かれた地図だ。
とりあえず地図は無いと町から出た時に場所が分からなくなるので必須なのだが、指輪は魔法使い様の装備だ。
魔法使いには複数の武器が存在する、杖・本・タロット&護符・腕輪・指輪の5種類存在する…それぞれ良し悪しがあるが指輪は1つにつき1種類の系統の魔法の詠唱の短縮とAtk上昇なのだが、現在俺のスキルスロットには魔法使いなんてスキルは取っていないが、実は錬金術師で魔法が使えたりするのだ。
錬奇術師は主に薬剤師や鍛冶師のサポート的なスキルで魔法を使っての金属加工やポーションに追加効果をつけたり、もちろん材料を集めれば金属やガラスなんかも創れるスキルなのだが、錬金術師を取ると初期の技で基礎魔法を使えるらしく、その為に指輪を購入に来たのだ。
まぁ普通はプレイヤーのお店に行って買う方が性能がいいのだが、スキルで指輪を持ってないしプレイヤーメイドだと、装備できないのもあったりするのだ。
例えば魔法使いスキルレベルが20以上とゆう条件がある装備も在るので、どのみち始めたばかりだからNPCが売る安いので構わないのだ。
とりあえずの買い物を済ませ道場を目指した。地図のお蔭ですんなり来れたが…
(何故洋風建築の中に、ポツンと瓦屋根の和風の建物が!? 景観ぶち壊しじゃないか? そりゃネットの情報では道場って書いてあったが、せめてこう、訓練場とかコロシアム的な何かとか洋風なモノが色々あるだろうに……)
多少げんなりしつつも道場に入り武器の使い方を色々と試してみた。この道場は訓練用に動かないタイプの人形と回避行動をする人形の2種類から訓練ができ、さらにここの兵士と模擬戦ができるのだ。
模擬戦はPvP用の空間で戦うので勝っても負けてもデスペナルティ等は受けずに済み、勝てば称号とアイテムを貰えるので、ぜひ勝ちたいところだが…
相手の兵士はNPCではあるが、この世界ではこの場所で生きて生活をしている兵士なので本当に対人戦をしているのと変わらないほど難しいらしい…。
難易度は、初級・中級・上級・玄人・達人から選べて何度でも挑戦可能だが初見で勝つと報酬のアイテムの数や物が増えるらしいので出来れば勝っておきたい…
ちなみに1度勝っても、また戦えるがアイテムは貰えないのであまり利用するプレイヤーは少ないみたいだ。
それとキャラレベルが上がるのもこの模擬戦だったりする、スキルは人形相手でも上がるが俺は今上げれるスキルが無いのであまり意味が無かったりする。
とりあえず俺は、斧の使い方に慣れるため手始めに訓練用の動かない人形に切りかかってみる。
(ふむ、斧を触るのは子供の頃の社会科見学で蒔き割りした時以来だが、結構いけるな! 手にも馴染むし、思ってたより重くないからスムーズに動けるな……これもスキルの恩恵か? しかし、樵のスキルも斧を使っただけでレベルが上がれば楽なのになぁ)
暫くの間訓練用の人形に斧を叩きつけて、ある程度斧の使い方に慣れたので、次は避けるタイプの訓練用人形を相手に色々と動きを試し、十分対応できるようになったので、とりあえず初級の模擬戦をしてみることにした。
「それでは、時間無制限で相手を倒すか参ったっと言わせるかこちらが続行不可能及び、完全に敗北と判断できるまでとなります。よろしいですね?」
「はい、大丈夫です」
「それでは……模擬戦初め!」
広い板の間で3人の審判の見守る中模擬戦が開始された。
(武器スキルは取ってないから斧系のスキルの技が使えないし、向こうは無手だから格闘か足技系か魔法かだが、指輪や腕輪の類は持ってないように見える。ここは魔法は無いと踏んでリーチの差を生かして中間距離を維持しながらのヒットアンドアウェイでっ!)
俺は素早く近づくと斧をなぎ払うように振るい、すかさず体重を反対に移動して斧を切り上げたが相手は軽いフットワークで避けて距離をとった。
(クッ! 動きが早い、やはり格闘系かっ! 来る!!? ……ッチィ!)
相手は体を左右に振りながら、一気に間合いを詰めてきた。
(すげー、ウィービング……だけどそれは予想済みっ!)
俺は斧の柄を持つ片方の手を刃と柄のギリギリを持つように素早く直し、腕を胸元に引き寄せるように垂直に振り下ろした。
(威力は弱くなるがっ、これなら! ……うっし! 捕らえた。このままっ!!)
振り下ろされた斧に相手は動揺し避けようとバランスを崩し、俺はさらに握り手を反対に変えそのまま相手に向かって斧を突き上げ、のけ反る相手に素早く柄の端を持つ様に直し全体重を乗せて斧を振り下ろした。
そして斧は見事に相手の体にクリーンヒットし、相手は光の粒子となって消え空間には"OYAZI"Winと表示されPvPは終了した。
勝利認証のウィンドウボタン押して空間から戻ると、相手の兵士がにこやかに話しかけてきた。
「いや~お強いですね、それだけの動きができてまだ初心者とはとても思えない……今後が楽しみです。では木簡ですどうぞ、これを入り口の受付に渡せば勝利報酬と交換できますので」
「ありがとうございます。それでは遠慮なく」
木簡を受け取り相手兵士と握手を交わし、いくつか会話をすると受付でアイテムと交換して町の門側の広場で中身の確認をした。
初級模擬戦報酬
初級ポーション×5 力の秘薬×3 鉄壁の宝玉×1 癒しの紅玉×1
(けっこう良いのが入っているんだな、ポーションと秘薬以外は相手とのレベル差によってランダムって書いてあったがレベル1状態だとこんなにいい物貰えるのか、鉄壁の宝玉は一定時間物理攻撃によるダメージを半減で、癒しの紅玉は一定の範囲の味方に中級ポーションと同等の回復か…初級ポーション以外は念のため町の個人倉庫に入れておこう、デスペナルティーが怖いからな…)
補足だがこのイルザォン・ヘッヂのデスペナルティーは、低確率での所持アイテムの破損と一定時間の武器、防具などの装備品の効果やAtk・Def・Int・Mgr・Aglの低下だ。
ちなみに装備を別の物に変えても同じく低下するらしい、まぁ一定時間って書いてあるが効果時間は20分間だけだ。
(まぁ、アイテム破損って言っても高いお金払えば修復できるし、レアアイテムは破損の可能性は低いし現在装備している防具・アクセサリー・武器なんかは破損しないようになっているからそんなにビクビクしなくてもいいが、念のためにね?)
いずれはマイハウスにアイテム倉庫作るつもりだが、これも自作するか購入するしかないので今は無料分で置ける町の倉庫にしまうのだ。
ちなみに他の町からでも倉庫からアイテムを取り出せるがこれにも金が掛かる…町ごとに倉庫は存在するが個人が持てるのは最大3つまででそれ以上は課金か、2000万クートを町に払うしかないのだ。
でも1つの町倉庫で100種類、各999個まで入れれるし、錫でも銅でもマイハウスの鍵を持っていればマイハウスを倉庫にしたり所属ギルドにも、ギルド倉庫はあるからそうそう問題にはなってはいない、まぁ引き出すのにお金が掛かるっていっても1回アクセスで50クートだから後半になればお金はそんなにシビアにはならないだろう、たぶん……。
それと死んだ場合は最終登録地点のゲート付近に復帰するので、もしもダンジョン攻略中だった場合は強制的にパーティーから外されて復活しるので、急いでダンジョンに戻って戦線復帰ていうのは無理なわけだ。
無論、死者蘇生の魔法やアイテムは存在するが……この世界ではかなりのレアなアイテムだ。この世界の住人、NPC用の死者蘇生アイテムの方が断然手に入りやすく、わりとNPCとパーティーを組んでいる人も多いみたいだ。
しかし、NPCもプレイヤーも生き返えれる時間があり、どちらも40秒以内に死者蘇生の魔法やアイテムを使わないと、復活できないみたいだ。
それとNPCとパーティーを組む時は必ず死者蘇生アイテムを持っていく事が暗黙のルールである。何故ならNPCは1度死んでしまったら二度と生き返れないのだから……。
早く俺もVRやりたいなぁ……生きているうちに完成するんだろうか…
白銀と銀が同一だったようで再度修正しました。度々修正してすみません。




