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窮すれば通ず

窮すれば通ず とは

 人は、行き詰まってどうにもならない状況まで追い込まれると、かえって行くべき道が開かれることがある。絶体絶命だと思うような状況でも、案外解決の道はあるものだという意味……

 




「……ふっふ~ん♪…………ふっふふ~ん♪」

「アニス危ないから、あんまり近づきすぎない様にね?」

「わあ……てう……」


 スライムの村に行った日から数日後……OYAZIは貸し家へと戻り、今までと変わらず皮師のレベル上げにせいを出していた。しかしあの日以来、毎日のようにアニスがOYAZIを尋ねて来る様になっていた。

 アニスはいつもの様に鼻歌を歌いながら、足をプラプラと揺らしOYAZIの隣で椅子に座って楽しそうに作業を見ている。

そして夕暮れになれば、村に果実を売りに来た大人のスライムと共に帰るというのを繰り返していた。


(しっかし、この子は何が面白くて毎日来るのだろう? 作っているのは皮のエプロンか、俺が飽きて別の革製品を作ったりポーションを作っているだけなんだが、そんなに面白いのかなぁ……? 俺の子供の頃にはこういった物を作る職人みたいな人は居なかったから、このての感覚は分からないな……まぁ別にイタズラするでもなし、気にする事もないか……どの道淡々と物を作っていても飽きてしまうからな、アニスと会話するだけでわりと気晴らしになるからな)


 そんな事を考えながらOYAZIは黙々と作業に没頭していった。


 ちなみに、あの日スライムの村でお詫びとして貰ったものはあの"果実の木"の苗木と熟れた果実を数個貰った。

しかしあの"果実の木"という苗木は、貰ってから未だにアイテムBOXから取り出してはいない……。

 さすがに自分の土地でもない、この村に植える訳にもいかず町に戻ってマイハウスの庭に植えようとOYAZIは考えているのだ。



 果実の苗木 カテゴリー:魔法植物 品質:レア

  成長過程に与えた肥料の種類で実る果実が変化する植物、植えてから2ヶ月程で果実は実り一番初めに取れる果実は普通の物より美味しい物が実るとされている。



(今後のために"農夫"のスキルを取っても良さそうだな、マイハウスの庭を畑にするとさほど量は取れないが、ゆくゆくは自分で育てた物でポーションとか料理したいしなぁ、まっジャネイロに帰ってからの事だけど……)


 やがて日が暮れ始め、そろそろアニスを村に来ているであろう大人のスライムの所へ連れて行こうかとOYAZIは作業の手を休めると、不意に扉をノックする音が聞こえた。


「はい、何方ですか?」

「こちらOYAZIさんのお宅でよろしいでしょうか? 私はセリという者ですが……」

「あっ、セリさんですか今開けます。」

 

 扉を開ければ20歳ソコソコに見える容姿でワンピースに身を包み、ゼリー状の柔らかい髪を後ろで束ねた姿で相変わらずの豊満な胸をプルンッと揺らしながらセリが立っていた。

 この姿で既に50歳を過ぎていると思うと、OYAZIは(もう俺……熟女萌えでいいかもしれない……)と思い始めている今日この頃であった。


(しかし本当にファンタジー万歳だな、スライム族はある程度の年齢になると人型になった時の容姿が固定され年をとらないっていうが……そのうちゲームの中に移り住むことができる技術が生まれたら、ゲームの中で不老不死になろうとする人もでてきたりしてな、実にありえそうな事ではあるが……)


 そんな事を考えながらもOYAZIはいつもどうりセリに、にこやかに挨拶を交わすと奥にいるアニスを呼んだ。


「アニスー、お母さんが迎えに来たよー。」

「んー……」


 アニスは嬉しそうにパタパタと走ると、勢い良く玄関から飛び出しセリの足元へヒッシッと抱きついた。


「もぅこの子ったら…いつも娘がご迷惑をおかけしてすみません……」

「いえ、大丈夫ですよ。こちらも話し相手が居てくれた方が楽しいですし」

「そう言っていただけると、ありがたいです……。」

「そういえば、セリさんが村に来るのは珍しいですね? 何かありましたか?」

「いえ……ちょっとこの村の村長さんと話しがありまして、それで……」

 

 セリは言葉をにごしながら話したが、その表情がフッと暗くなるのにOYAZIは気がついた。

 

 俺は仕事で培った話術を生かしてセリさんから話を聞きだしてみた。


 するとどうやらセリはスライムの村の代表をしているとのこと……最初、話を聞きはじめた時は、村長としての重圧で気苦労しているのかと思ったがどうやらそうではないようだ。

 本来なら村長はセリの旦那さんがしていたらしいが、ジャネイロに迷宮が出現した時に強力なモンスターが周囲に現れて村が襲われたんだとか……それでその時に深い傷を負ってしまい、今はあまり動けない状況らしい。

 なので、代わりにセリさんが村をまとめ上げて、色々な指示や交渉などをしているみたいだ。

 なので今回、村に来た理由は何かの交渉か相談に来たみたいだがずっとはぐらかされてばかりで、理由は言ってはくれなかった


 だから俺はそれがとてもイヤで、こうして知り合ったのだから何かしら協力したいと思いセリさんに言った。


「セリさん。その……良かったら俺も力になりますから、何かあったのなら言ってください……。たとえ力になれなくとも、愚痴を聞くことくらいはできますから!」


 OYAZIは優しく、そして強くセリに話しかけた。

 するとセリは、少し悩んだ表情はしたものの事の詳細を少しずつ話してくれた……。そしてOYAZIは2人を村まで送りつつセリの話しを聞くことにした。








「私達の村は果物と森で取れた薬草や、倒したモンスターの素材等を売って生計を立てていました。けれどあの迷宮ができてこの場所に逃げてこれたのは良いのですが、取れた物を売る場所が無いのです。」

「それはつまり……この村では買い取ってもらえないってことですか?」

「いえ、一応この村でも買い取ってはくれるのです……。けれどその量と価格はジャネイロにおろしていた時より遥かに安く、量も少ししか売れないのです。」


(あぁ、そうか……この村はジャネイロに比べれば人口はかなり少ないから、物を持ってきても消費する人がいないからあまり多い量は売れないのか、しかも転売をしたとしても、この村からジャネイロに物を運ぶコストも考えなきゃならないから、心苦しいかもしれないがこの村の人も通常価格より安く買い叩くしかないって事か……だからといって自分達でジャネイロまで運んだとしてもその手間を考えれば、たいした差が無いからどうにかできないかと、この村の村長に話しに来たのか……)


 だいたいの状況が理解できたOYAZIではあったが、セリ達を助ける為の妙案みょうあんは浮かんではいなかった。

 ジャネイロに行くためには街道を進むしかなく、しかも交通手段は馬か馬車か徒歩の3つしかないのだ。

 最短は馬で行くことだが、馬を育て維持していく経費と持っていける量を考えれば、馬車を選択するしかない。けれどそれでは馬の経費プラス馬車の維持費も加わり現在お金に困窮こんきゅうしているスライムの人たちが直ぐにできる事ではない……


 まぁ幸いな事にスライムは果実と水があれば飢える事は無いので、それだけがせめてもの救いではあるのだが、今後は衣服から果樹園を整備するための道具類やもしもの時のポーションやら医薬品も必要だろうし、村を整備したりする時や自分達でどうしようもできない事が起こった時に冒険者に依頼する費用なんかも考えていかなくてはならないだろう。

 そうすると、後1日や2日でどうこうなるって事態ではないが、数ヶ月以内には何かしら進展しなければ、危ない状況ではある。


(知り合ったからにはなんとか力になってあげたいが……俺に何ができるだろうか? 俺が見返りを求めずタダでジャネイロに赴き代わりに物を売ったとしても、それは一時凌いちじしのぎにしかならないから意味が無い。だからセリさんたちが、できるだけ恒久的こうきゅうてきに生活が安定する方法を見つけたいが、それこそ無理な話しだしなぁ……何か良い案は無いだろうか? せめて現状を打破できるくらいの……)


 あーでもないこーでもないと頭の中で様々な事柄を考えていたOYAZIだが、決定的な答えを出せずに悩んでいた。

 するとそんな2人の会話に飽きたのかアニスはキョロキョロと周辺を見渡し始め、そして何かを見つけたのかじーっとある一点を見つめ始めた。

 OYAZIはふとその視線の先が気になり、アニスが見つめている方を向くと夕日に照らされた川から魚が勢い良くジャンプしている姿が見えた。


 その光景を見た瞬間OYAZIは、ハッとある事を閃いた。


(そうだ……! 移動手段ならあるじゃないか! そして道が無いなら新たに作ればいいんだ!)


 っと、ある打開策を思いついたのでOYAZIは、隣で悩みながら歩いているセリにその案を嬉々として話した。


「!!? 凄いわ、OYAZIさん! その発想は画期的よ。確かに今まで誰も考えなかったのが不思議ではあるけれど、ソレが実現すれば私の村以前にこの辺り周辺の村や町への交通の大革命よ!」


 その案を聞いたセリはとても驚き興奮した様子だったが、強くその案に賛同した。何せそれが実現すれば、今までの交通機関以上の働きをするのは明らかだったためだ。

 しかしもう日暮れ時なので今から行動するには難しくOYAZIは、この後ログアウトするつもりだったので後日OYAZIからセリに連絡するという事にしていったんこの日はそれぞれの村に帰えることとなった。

 そしてOYAZIは、できるだけ詳細まで案を詰めセリは村の人にこの事を説明すると約束しあい後日に村長と話し合いをすることに決めたのだ。


 さて思いもよらない妙案を思いついたOYAZIは、2人を村の入り口まで送り届けると急いで貸し家に戻り、ジャネイロで購入した地図を広げ考え付いた案を纏めるべくペンを走らせた。

 彼が思いついた案とは、川を使った貿易路の開拓だ。一応このイルザォン・ヘッヂオンラインにも地上以外のルートにも貿易路は存在することだ。


 さてこの世界の貿易網を簡単に纏めれば3つしかない。

 

 街道を使った馬車などによる陸路の貿易……

 次にそれぞれの町を繋ぐゲートによる貿易……

 さらに国家間で行われる飛行船を使った航空貿易である。


 それ以外に海上貿易も存在するが、現在海に面した所に町があるのが人間の首都アリエスだけで一応は他国の港町と貿易をしているようだが、それはまだ設定上でプレイヤーは貿易している町に行くことも、何処と貿易しているのかも分からない状況なので、この世界では海や川での船を使った貿易はあまり盛んではないようだ。


 けれど船はしっかりと存在している、ジャネイロ周辺にも大きな川がありそこで船で漁をしている光景はOYAZIも見ている。

 だからジャネイロの近くには船を止める桟橋はあるので、ここから川を下り物資を運搬するのは可能だと考えたのだ。

 目測ではあるが、この村の近くに流れる川はそれなりの川幅はあり全長が20m前後のキャラベル船やスクーナー等の2本マストで運行する船くらいならば、十分すれ違うことは可能だと思う。


 しかもこの川はジャネイロの近くを流れる川へ流れ込む支流の1つであり、常に街道沿いを流れているためモンスターが襲ってくるという事は少ないだろう、まぁ無理やり夜に運行しなければだが……

 そしてそれなりの大きさの船になれば、モンスターを寄せ付けない魔道具の設備を乗せることは可能だろうし、そこまで心配することは無いと思う。


 まっ現状は水中にモンスターはいない様だし、運搬中の船が襲われるのは無いと思っていいだろう。

 それにもし山賊みたいな奴らが襲ってきても、陸から走る船に飛び移るのは容易では無い筈だ。

 無論、多少の警戒はするべきだと思うけれど、それは町や国が考える事で俺が口出しすべき問題でもないだろう。

 現に陸路での馬車等の輸送は国の護衛がいたり冒険者に依頼があったり、街道の賊退治の依頼や町や村の自警団による警戒なんかもあるから、どうするかはそっちに任せれば良いか一応、村長に話す時には提言しておくけどな……


 さらにこの川はジャネイロより上流にあるため、行きだけならば船での移動は馬車よりは早いだろうし、馬を必要としない分管理がしやすいのもメリットだ。

 後はこの川のさらに上流がスライムの村に繋がっているので、彼らの移動手段としても十分有効だろう。


(あと問題なのは、ジャネイロからの帰りくらいだろうが……これは最悪でも帆船にすれば問題はないだろう、風の魔石を利用して風を起こせばいいのだからな……まぁ魔法で動く飛行船があるんだから動力の事はそこまで心配はいらないだろうし、帆船も動力も無理なら5~6人乗りのボートで商品を運んで帰りは容量の多いアイテムBOXにボートをしまって馬車なり徒歩なりで帰ればいいんだからな)


 そんな事を考えながらOYAZIは川を使った貿易路の案を纏め、村長や村の人に分かりやすいように言葉を選びつつ後日のプレゼンテーションの内容を考えた。

 そしてなんとか案が纏まりきると、最終チェックをし終えてその日はログアウトすることにした。







 そして翌日、仕事から帰ると一目散でOYAZIはログインし始めた。


(今日はイルザォン・ヘッヂの事ばかり考えていて仕事が手につかなかったなぁ、いかんいかん……。たかがゲームなのにここまで熱中している自分を客観視きゃっかんしすると滑稽こっけいに思えてしかたがないが……しかしこのゲームは"たかが"なんて言えない。今ではあちらの世界の方がより現実に思えてしまっている自分がいる……。若干だけど怖くもあるが充実しているとも感じているし……まっ何事もほどほどにしなくてはな、最低限ラインだけは超えないように気をつけよう…………)


 自分をいましめつつ彼の意識は光りに包まれ、次第にイルザォン・ヘッヂオンラインの中へと入っていった。

 いや~FF7リメイク決定ですね、本当にリメイクするならPS4買うかなぁ…シェンムーは触ったこと無いのでなんとも言えないですが、気にはなりますね。


 メタルギアも新しいPV公開されたし、発売が楽しみです。早くメタルギアオンラインを再びやりたい!初期のステージのキルハウスとか前作で入らなかったステージ追加されたりしないかなぁ……

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