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濫觴(らんしょう)

濫觴らんしょう

 《揚子江のような大河も源は(さかずき)(うか)べるほどの細流にすぎないという「荀子」子道にみえる》とゆう孔子の言葉から

 物事の起こり、始まり、起源きげんを意味する……






 あれは不慮ふりょの事故だった……プロジェクトリーダーを任され、順風満帆な生活をしていた俺が打ち合わせの帰り道、工事中のビルから鉄骨が俺を目掛けて落ちてきた……。

 運よく生きていた俺だが、意識を取り戻した時には2ヶ月の時が過ぎていて、自分が発案し進めていたプロジェクトは別の者が引き継いでいた。


 俺は半年に及ぶリハビリのお蔭でどうにか普通の生活はできるようになったが、会社にはもう俺の居場所は何処にも無かった。

 一応、今まで築いてきた実績のお蔭で、幸い会社をクビにならずに済んだのだが、仕事一筋だった俺にはショックが大きかった。


 貰っていた給料は、かなり少なくなったが、加入していた保険やら、工事していた建設会社から、それなりの額のお金を貰えたので、貯蓄額はかなりの金額にはなっていた。


 けれど俺の心は満たされる事は無かった。


 まともに外回りも出来なくなった俺は、窓際職の資料室の室長に左遷させられ、ひがな一日資料の仕分けをするだけの代わり映えの無い生活を送り、ただただ腐っていくだけの日々……そんな時に医者の勧めでVRGをするように言われた。


 なんでもストレス発散に効果があるとの事で、保険も効いて最新の物を安く買えるらしいので、久しぶりにゲームをしてみようと思いたったのだ。


 そして俺はこのVRMMOと出会った。

 


「うしっ! 飯も食った、トイレも済ませたし……うん、準備よし! それじゃあ行きますか、"イルザォン・ヘッヂ"へ!!」


 どうも! 俺は今、初めてのVRバーチャルリアリティーを体験しようとしている。一応、世の中にVRが普及したのは、確か5~7年くらい前だったはずだが、俺は今までは仕事が忙しくて、その手の情報は殆ど気にしていなかった。


 なので正確には覚えていない……。


 けれど今では会社を定時で帰れる簡単な部署に回されたので、こうやって遊ぶヒマができたのだ。

 元々俺は子供の頃はゲームはそれなりに好きだった方なので、これは良い機会きかいと思いVRGを始めようと決めた。


 もちろん医者の勧めが切っ掛けではあるのだが、いつまでも陰鬱いんうつな気分で落ち込んでいてもしかたがないので、最初のうちは医者に勧められてもその気は無かったのだが、色々と調べているうちに俺はVRGの魅力にはまってしまったのだ。

 そして今では意気揚々と機器を揃え、調べた中で1番心を引かれネットで話題になっている"イルザォン・ヘッヂ"と呼ばれるVRMMOを購入したのだ。


(しっかし、ゲームするなんて何年ぶりだろう? 今まで仕事、仕事で、趣味とか一切無かったからなぁ、このゲームの記事とかムービー見ているだけでもうテンションが上がったよなぁ、こんな気持ちも久しぶりだ。)


 そんなことを考えつつ、俺はいそいそとゲームを始める準備をした。


 あぁそれと、どうやらこのゲームには特にストーリーがある訳でも無いみたいだ。なんでも様々な種族が存在するファンタジー世界で、第二の人生を過ごす的なモノらしい。

 プレイヤーはこの異世界からその世界に渡って来た冒険者という事になるのだが、ただフィールドや遺跡、ダンジョン等を冒険する以外にも様々な事ができる。


 農夫・商人・薬剤師・料理人・錬金術師・鍛冶師や職人系ete……


 それとこのゲーム……MMOとなっているが、今までに2回ほど戦争的なイベントがあっただけで、大規模戦は基本的に無い様だ。


 ちなみにMMOとはマッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインの略で簡単に言えば複数のプレイヤーが1つの世界で一緒に遊べるオンラインゲームと思えばいい。

 それと、たとえ自分がログインしていない時でも、ゲームの中の世界では時間が経過している等の要素も含まれる。


 その他にこのゲームは、PVPプレイヤーバーサスプレイヤー機能が入っている。PVPとは人と人が行う対戦の事だが、このゲームでは特殊なフィールドが形成されその中で対戦するというものだ。

 さらに戦いの結果、負けてしまいHPが0になって倒されても、死にはせずPVPが終了したら元の場所に出てくるだけのようだ。

 一応、対戦は最大7×7人のパーティーを組んでの戦いが可能で、戦う人全員がPVPを了承しなければ戦うことはできない。しかしこれは称号が貰えるだけで、勝ったからといって相手から何か貰えたり奪ったりはできない仕様らしい。


(まぁ、ゲーム内でのプレイヤーやNPCの殺傷はできないから、喧嘩になったらPVPみたいな流れポイけど、あんまりやる人はいないみたいだな……だいたいの人が新しく覚えた技や魔法を試す時に使うだけで、そこまで気にすることでもなさそうだ)


 だから設定上では、PKプレイヤーキラー自体ができないのだが、どんなものにも抜け道は存在するようで、モンスターを引っ張ってきて……所謂いわゆるMPKモンスタープレイヤーキラーをする連中もいるみたいだ。

 けれどその辺もプレイヤー同士のルールで、最近はかなり淘汰とうたされているらしいので、初心者でも安心してできるみたいだ。


 自分も最近のネットゲームはおろか携帯ゲームすら触れてなかったので、この辺のチェックはかなりした方だ。


(誰も殺伐とした初心者殺しが横行するゲームなんか、したくないからな! てか、一応メンタルの治療にゲームするのに、派手に殺しあうゲームなんかしたくないからなぁ、けど……ちょっとあのFPSファーストパーソン・シューティングゲームはやってみたかったな、弾すら自作できる対戦シューティングゲ-ムってちょっと気にはなったんだよなぁ……)


 しかし結局は、このファンタジーゲームを買ってしまった。だってこのゲーム……"イルザォン・ヘッヂ"は今! 新規入会キャンペーン中で初期スキルスロットが2個追加状態でプレイ可能で、しかもLV20までは経験値補正の得点もついて!さらに特別アイテムもあって、今買わずしていつ買うの!? って感じだったからな。


(まんまと乗せられて、買ってしまった感はいなめないけれど……悔いはない!)


 …………ゴホン……さて、説明に戻るとしよう。


 このゲーム一応はスキルLV制なのだが、どうやらキャラにもLVが存在するらしく、キャラのLVが上がっても肉体強化やHP・MPの加算などは無いようで、10LVレベルごとにメインのスキルスロットが1つ増える仕様みたいだ。







「それじゃあ始めて行きますか……」


 準備も整い俺は、フルフェイス型のVDSバーチャルダイブシステムを被り俺はベットに横になりスイッチを押すと、スーっと意識が薄れ数秒後には真っ白な何も無い空間に立っていた。


 やがて意識がはっきりしてくると、音声案内が聞こえてきた。


「ようこそ! "イルザォン・ヘッヂ"へ、新規の方ですね? パーソナルチェックを開始します。少々そのままお待ちください……」


 そう音声案内が流れると俺の体の回りを青白く光る輪がいくつも包み込み上下に移動し始め、ものの数秒でパーソナルチェックは完了した。


「チェック終了いたしました。ようこそ藤城ふじしろ 秀久ひでひさ様、まずチュートリアルをご覧になりますか?」

「いや、いい……すでに自分で調べたから」

「……わかりました。チュートリアルは後からでもメニュー画面で参照できますので、もし分からない事がありましたら、そちらからご確認ください。それでは次にキャラメイクになります。一度決定された容姿は特殊アイテムを購入しないと変更できませんので、めご了承ください」


 案内がそう言い終わると、目の前に俺そっくりなキャラが出現した。


「へー……こうやって自分を見ながら変更するのか、ってやっぱり性別変更はできないかぁ、ちょっとしてみたかったがそりゃ~無理だよな……」


 VRが世の中に出て以来、性別変更はどのゲームいてもできないようになっている。

 ただし性同一性障害の人は申請して許可がでれば可能だし、18禁のアングラVRでは、できるとうわさは聞いたことがあるが……

 まぁゲームくらい違う性別に成ってみたかったが、違法にするつもりないし、ましてや性同一性障害と偽って取得するまでの情熱はないからな、ここは無難ぶなんにキャラを作っていこう。


「とりあえず、全体的に痩せさせて……身長はいまより5cm増やして175cmくらいにするか、腹筋もすこし割れている感じで髪型は、中でも変更できるから短髪のスポーツ刈りよりちょい長めで、顔はう~ん……よし! ここは美形キャラより渋いおっさんにしよう!」

「さてと髪の色も今のままの黒色で、皮膚は……薄小麦色に日焼けしてる感じにっと……ちょっとガテン系に見えるが、いいかな?」

「名前はう~ん……どうしようとりあえず自分の名前から"ヒデ"は、いるかぁ、それじゃ普通に"ヒデヒサ"は、いるのかぁ……」

「しゃあない、キャラもおっさんポイ見た目にしたんだし名前も"おっさん"で、って! いるのかぁ……じゃあ"おやっさん"も、いる……ならば! ローマ字ならどうだ!? とりあえず"OYAZI"で……よっしゃぁぁぁー!!! いないぜ♪ そんじゃ名前は"OYAZI"で決定と」


(もう、30もすぎて世間ではおっさん呼ばわりされるが、俺はめげない! 世間がおっさんと呼ぶなら突き抜けて俺はOYAZIになってやるぜ! …………でも、あれ……ちょっと早まったかな……?)


 まぁいい、次はスキル選びだな最初は10個しかスロット入らないが、新規のキャンペーンで12個まで選べるからなぁ~どれにするか……






 このイルザォン・ヘッヂが人気の理由は、無数に存在するスキルにある…スキルは基本的には職業系・装備系・技系の3タイプあり、普通は職業系スキルを取ればそれに合わせて他の装備・技を選択していくのがセオリーで、殆どのプレイヤーが特化型にしているみたいだ。ちなみにそれぞれのスキルの効果はこんな感じだ。


 職業系:その職業に準じた能力やアーツを習得できる

 装備系:装備したアイテムの効果やAtk・Def・Int・Mgr・Agl等の上昇

 技系 :能力単体を習得できる(職業に含まれない能力もあり)


 イルザォン・ヘッヂオンラインでの、AtkやDefの意味について記しておこう。


 Atk:物理攻撃力の上昇

 Int:魔法攻撃力の上昇

 Cri:クリティカル攻撃の発生率の上昇

 Str:HP上昇、魔法攻撃によるダメージ軽減

 Def:防御力上昇

 Mnd:MP上昇、精神攻撃系のダメージを軽減

 Dex:遠距離攻撃の命中力上昇及び製作物の成功率・評価を上昇

 Agn:回避力上昇、先制攻撃時にダメージ増加

 Luk:アイテム獲得量上昇、レアドロップ率アップ


 それと、技系スキルは職業系スキルで覚えれる技が、別のスキルとして単体で覚えられるみたいだ。

 しかしそれではもし技系スキルを先に取って、後から職業系スキルで同じ技を覚えてしまったとしたら、最初に取った技系スキルが無駄になるのではないか? と思うところだが……


 どうやら、それぞれのスキルで被った能力やアーツをを習得すると通常よりMPの消費を押えられ、威力や効果が上昇するらしく遭えて被るようにスキルを習得する人もいるんだとか……

 ちなみに趣味スキルと言う物も存在するが、これは戦闘や生産に直結するスキルではなく、初期のスキルはExpを消費することなく取得できるみたいだ。


 そもそも万能型にするにしてもスキル欄が足りず、何かの系統に特化させざるを得ないのが現状らしい。

 例えば職業系スキルでの盾有りの"剣士"をメインにしようとすると、片手剣・軽鎧・盾・身体能力上昇・上半身強化・下半身強化のスキルが必須とされており、これだけで初期枠の7つも埋ってしまう。

 これでは万能型にすためには、魔法も剣も生産もとはとても取る事はできない、だから最大2つの系統でプレイするか完全特化にするかに分かれるというわけだ。



 特に生産系はもっと枠を使うのだ。


 例えば木工技師をメインにしていくと採取速度や品質上昇のためにきこり、加工能力の上昇のため細工師、それ以外は斧・身体能力上昇・上半身強化・下半身強化・忍耐・匠の9つを入れないと高レベルのモノを後々加工できなくなってしまう。

 なので生産系の人は、他のプレイヤーは生産系ギルドに武器や装備の依頼なんかをするみたいだ。


 リアルに考えれば当たり前の事だ。剣を作るにしてもまず鉱石を採掘する"鉱夫こうふ"それを加工する"鍛冶師"剣のつかには木や皮を使うから"木工技師"や"皮師"さらにそれらを縫い合わせたりするため"被服師"のスキルが必要になるのだ。


 だから皆、別々のスキルを持ったプレイヤーが集まっていないと、剣1本すら1人で作ることは難しいみたいだ。

 無論、NPCがつかつば単体で販売しているし、プレイヤー自身も単体販売している人もいるので、絶対に1人で作れないわけではない。


 俺は別にガンガン最前線で戦うつもりは無いし、基本は生産系で色々な物を作れるようにしたいから、それなりに戦える生産万能型を目指すつもりでいた。


「さてと……事前にスキルは目を通しておいたからここら辺は、サクサクっとぉ」


 スキルをどんどん選び、キャラメイクを終了した。そして、できたキャラがこんな感じだ。


 名前:OYAZI

 性別:男

 称号:ルーキー

 レベル:1

 スキル

  料理人・錬金術師・皮師・木工技師・盗賊・薬剤師・鍛冶師・被服師・細工師・樵・軽装備・身体能力上昇



 とりあえず斧を武器にしていくつもりなので"きこり"を入れて、Defアップのため"軽装備"を入れた。一応どんな装備も武器もスキルを取らなくても使用でき装備できるが、スキルがあると扱いやすくなるし重量の軽減ができるので取っておいた方がイイのだ。


 ちなみに"軽装備"は皮・布・鱗・木材・毛皮で主に作られた装備、装飾品に効果があるスキルで軽量なら篭手や盾にも効果がある万能スキルだがそれぞれの単体スキルよりは効果は薄い、まぁ俺の目指すのは広くて浅い何でも屋なのでこれでいいのだ。


「それでは次に初期装備と武器を選んでください」


 スキル選びを完了すると、次のアナウンスが告げられウィンドウには様々な系統の装備と武器が表示された。


 (まぁ、もう決まってるからな、両手斧と軽装備の皮を選んで……うし、頭部は軽装でDefが上がるやつは、ターバンかハチマキか布の帽子くらいか、どれもDefが1って意味あるかなぁ? まあいいか、とりあえずコレでと……)


 装備を選択を終了し、キャラメイク完了ボタンを押した。


「登録完了いたしました。それでは改めて……ようこそ、イルザォン・ヘッヂへ! 貴方様の旅路に幸在らん事を……」


 音声案内が終わると、周囲が光りだして俺は光りに包まれた。

 ある程度ストックが溜まったので、連載を始めてみようかと思いました。他にも連載中の作品があるので、途中で投稿ペースが落ちるかもしれませんが長い目で見守っていただけると幸いです。

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