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修学旅行

過度な期待はしないでください。

ついにこの日が来てしまった。

一番大変面倒なイベント、修学旅行である。3泊4日で2年生のクラス全部を巻き込んで行われるこの行事は、中学・高校で各一回ずつしかない特別な行事である。

しかしネトゲユーザーの俺からしてみれば、パソコンに3日も4日も触れないとか、ただの苦行以外の何ものでもない。『シンクロ禁止ね』と言われた蟹のようだ。


「やべぇって! 空飛んでるって! 雲見えるって!」


そんな俺の気持ちも知らないで、隣の席で外を見てやいのやいの言っている渡辺は、とても楽しそうだった。飛行機の中では、好きな人と座ってもいいってなってるけど、好きな人がいない俺にとってはなんの意味もないことだった。隣に誰もいないのがベストだ。だって両方の肘掛けを使えるし、トイレに行く時だって気を遣わなくても良い。

なのに、渡辺は俺の隣に座ってきて、『窓側がいい』とか言って無理矢理席を交換しちゃったんですよ。これってどうなのよ。

好きな人と座ってもいいって言ってたけど、窓側と通路側を無理矢理変えてもいいとまでは言ってなかったよね。

とは言ってみたものの、特に希望も無いし、窓の外を見たいわけでもないので、反論もせず交換してあげた。俺ってばマジ天使。

しばらくすると雲ばっかりの景色に飽きてきたのか、渡辺の興奮も落ち着いてきて、俺に話しかけてくるようになった。俺はというと、持ってきていたラノベをペラペラと読んでいた。こういうときに積ん読で読んでなかったのがあると便利だ。俺のカバンの中には、あと4冊のラノベが入っている。行きと帰りで1冊ずつ、バスでの移動中用に1冊、夜のひまつぶし用に3泊分で3冊。そう。この修学旅行中にこの5冊を読みきるのが俺の目標でもある。ふふん。

ちなみにこの飛行機は関西国際空港へと向かい、そこから京都へと向かう。

べったべたな京都への修学旅行だ。

余談だが、俺たちの一つ上の学年の現3年生の時は、何故か旅行先が沖縄になったらしく、悲鳴や反対の声が聞こえていたんだとか。もちろん沖縄といえば海だが、他にも戦時中の建物が数多く残るところでもあり、そこへ行って戦争経験者の話を聞くというのがあったらしい。さっき渡辺が言ってた。

もし沖縄なんかになったらどうしていいのかわかんなくなるわ。京都みたいにみどころがあるわけでもないし、『ここが有名!』っていうのが思い当たらない。無駄にリゾート地であって、修学旅行先としてはいまいちだと思う。きっと旅行先が京都に戻ったのは、先生達もそんなことを思ったのだろう。俺が思うくらいだもん。

京都に行くのは初めてだ。でもそれなりの知識はある。

ちょっと裏路地に入ると、ラッタッタって言うと怒る少年や、かっちょいい刺青を彫った零で始まる名前の殺人鬼とか、超でかいマンションの最上階には自分のことを『僕様ちゃん』って言う天才とかが住んでるんでしょ? 俺ってばものしりー。

あとは清水寺とか見ておけばバッチリだ。お土産は駅で八ツ橋とか買っておくから大丈夫だ。問題ない。


「京都ってワクワクするね」

「・・・そのセリフ何回目だよ」


通路を挟んで隣に座っている木村が、俺に話しかけてきた。

昨日の夜にも電話で『ワクワクするねぇ』とレムレスのような言い方で言っていたのだが、これが何回も続くとさすがにウザイ。ウザ可愛いを通り越してただのウザイ。いくら彼女とはいえども、これはウザイ。ザイウー。


「だって京都よ? 京都って言えば」

「京アニの聖地なんだろ?」

「そうよ!」


もうこればっかり。

京都アニメーションの本社があるとはいえども、京都駅から自由時間に行くには遠いし、クラスでの行動時間にそっちのほうに行くわけでもない。

だからどうしようもない。


「行けたとして何するんだよ。中には入れないし、見るだけだろ」

「それでもいいのよ。どうせ寺を見るぐらいだったら、本社を見ておきたいっての」

「それは聞き捨てなりませんな」


と、木村の後ろの席から身を乗り出してきたのは吉川さんだった。


「京都と言えばお寺でしょ」

「まぁ確かに」

「でも俺の中の京都は、13階段とかがいるイメージしかないんだけど」


狐の仮面を被った人がリーダーね。

そしてたまに島とかに行って殺人事件を解決するんだ。


「なにそのイメージ」

「戯言よ」

「戯言だな」


俺と木村の言い回しに、首を傾げる吉川さん。なんやかんや言っても、戯言だけどね。


「とにかく、京都に来たからにはお寺を見ないとダメだよ」

「ダメだよって言われても、寺とか見てもよくわかんないし」

「紗枝ちゃん。お寺はすごいんだよ。ってゆーかカッコいいんだよ」

「かっこ・・・いい・・・?」

「例えば、屋根のつなぎ目なんかはすごいきれいに見えるし、左右対称なところなんかもカッコいいでしょー。それにね・・・」


吉川さん、まさかの歴女。何もこんなところで特殊能力発動しなくてもいいのに。

それから少しの間吉川さんの寺自慢(?)は続き、木村が理解するのを諦めたのを吉川さんが察したところで、その話題は終わった。その時俺は、スネ夫が自慢するときに流ているBGMを頭の中で流していたのは言うまでもない。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


続きはまだ書いてません。

いつになるかは・・・僕次第です。


のんびりと次回もお楽しみに!

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