第6話 お母様が初めてくれた……贈り物なの
「むむむむ……」
「あ、あはは、冗談だよ冗談」
普通に警戒されてしまった。
顔を真っ赤にしながらも、ジト目でこちらを見ている。
自分の身体を隠すように両腕を回して、小さく身を縮めていた。
こちらも、さっきのビンタで大事な体力が2くらい吹っ飛んだのだ。
自分の体の脆さを再認識させられた。
次は気をつけよう……
「――――ところで、ユリアはどんな魔法が使えるの?」
「……見たい?」
そりゃあもちろん。
本場の魔法使いがどんな魔法を使えるのか、知りたくはある。
もし全然僕より戦力になるなら、戦闘は彼女に任せよう。
ユリアは立ち上がり、セーフスポットの広い場所に移動する。
そして、懐から木製の細い棒――――杖を取り出した。
「天に満ちる原初の息吹よ、静なる気より猛き炎へと相を変えよ――――」
おお〜〜。
すごいそれっぽい。
一体どんな魔法が――――
――――――って、数十秒ほど待ってみたが、一向に変化は訪れない。
「う〜〜〜〜〜ん……!」
ユリアが踏ん張るような声を出し、杖を強く握りしめると――――
杖の先からボッと、火が吹き出した。
大体、松明くらいの火の大きさだ。
「……まだ力不足だから……これくらいしかできない……」
ユリアはしょぼんと下を見て俯く。
僕は、今の一連のユリアの様子に少し違和感を感じていた。
本当に、力不足なのか……?
だって魔力230だぜ?
あんなしょぼい魔法しか使えないわけがない……
「ちょっとユリア、その杖見せてもらってもいい?」
「え? うん……」
ユリアは僕に持っていた杖を手渡してくれた。
僕はそれに目を凝らし、鑑定する。
──────────────
【杖】
体力:5 / 5
魔力:0 / 15
──────────────
なるほど。
なんかこれが原因くさいな。
僕はユリアに杖を返す。
「その杖、魔力の許容量が少ないんだ」
「許容量って……何……?」
「何ていうかなぁ……例えるなら、すぐ果てる男の◯◯◯みたいな感じ?」
シーン。
時を止めてしまった。
例えが悪かったか。
「……小さいコップみたいなものかな。たくさん水を飲みたいけど、1回で飲めないから何回も注がないといけないみたいな」
「サクトシは魔力が見えるの?」
「え? ま、まあね」
逆に見えないのか。
そもそも鑑定スキルがない?
鑑定スキルは誰もが持っているものでもないのかもしれない。
もしかするとユリアは、自分のステータスを認識していないのか。
だから自分がどれだけ強いか分からない。
どれくらいの魔法が使えるのか分からない。
「とりあえず、その杖よりも――――」
僕はセーフスポットの木の枝を一本手折る。
その枝の表面をナイフで整えた。
「こっちの方がいいかも!」
簡易的な魔法の杖だ。
だが、元々のユリアの杖よりも、魔力許容量は多い。
だが、ユリアは浮かない顔をしている。
「どうしたの?」
「これ……お母様が初めてくれた……贈り物なの」
ユリアは手に持っている杖を、大事そうに握りしめる。
少し遠くを見て、自分のことを話し始めた。
「私……戦士の家に生まれたんだけど……才能がなくて……お母様に嫌われていたの」
ふむ。
現実世界でもよくある話だ。
僕の両親はある程度放任主義だったけれど、友達の中にも、厳しい家の子とかいたからなぁ。
特に、異世界は西洋中世の設定が多いし、そういう厳格なお家柄とかも多そうだ。
「でも……なんとか皆の役に立ちたくて……魔法の勉強をした。家に魔法の書籍とかなくて……あと、戦士の訓練とかもやらなきゃだから……あんまり魔法を覚えられなかったんだけど……」
ただ皆の役に立ちたくて――――
皆に認められたくて――――
家の訓練の合間、きっと寝る間を惜しんで、努力していたのだろう。
その結果が、ステータスに表れている。
僕にはそれが見える――――
「この杖は……お母様がそんな私にくれた……唯一のプレゼントなの。だから、できればこれを使いたい……」
「そっか」
そういう事情があるなら仕方ない。
まあなに、僕が男らしく戦えばいいのだ。
男はカッコつけてなんぼだからね。
だがそれを実現するには――――
「どうにかして魔力を補給する方法を見つけないと……」
やはり、ユリアから吸うしかないのか?
経口接種なのか?
「サクトシは……どんな魔法が使えるの……?」
「僕? 水魔法が使えるよ」
しかと見よ。
僕の洗練された魔法を……!
僕は両手に一掬いの水を生成した。
「……少ないね」
ほっといてくれ。
というか、松明くらいの火しか出せなかったユリアに言われたくないわけだが……
本気を出せばシャワーくらいは出せるんだぞ。
魔力が勿体無いからやらないけど、生成したら戻せないしね――――
ん?
いや、そっか――――
「ユリアは水魔法使える?」
「サクトシよりは……多く水を出せるよ」
ほんのりマウントを取ってくるのは一旦置いといて、僕は提案した。
「ちょっと、使ってみて欲しいんだけど――――」
* * *
══════════【 SYSTEM 】══════════
スキル「魔力還元」を取得しました。
═══════════════════════════
「「おお〜〜!」」
うまくいった驚きと歓喜で、僕達は顔を見合わせる。
僕が毒薬を作るために、魔力を補給する方法。
ユリアの魔力を直接吸収することは難しい。
そこで考えたのは、ユリアから直接ではなく、ユリアが生成したものを僕が還元するという方法。
すなわち、ユリアの水魔法によって生成した水を、僕が自身の魔力として吸収するのだ。
これによって、魔力の受け渡しができた。
「すごい……サクトシはなんでいっぱいスキル覚えられるの……?」
「さあね。これが僕の能力ってところかな」
その代償として、レベルが上がらないんだけれども。
プラスマイナスで言えばマイナスだ。
だがやはり、僕のこのステータスは普通ではないみたいだった。
「よっしゃ――――これで武器を量産して、このダンジョンを脱出しよう!」
「うん……!」
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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