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第5話 どこから吸えるのかな

 モンスターに毒を盛ったら、女の子が出てきました。


 しかも魔法少女。

 しかも体液でヌルヌルのべちょべちょときた。


 この状況を客観的に見られたら、逮捕されてもおかしくない。


 とはいえ、放置して逃げるわけにもいかない。

 この世界で出会った第一村人(?)なのだ。

 異世界転生者として、助けるのがお決まりだろう。

 

 でも、触りたくないねこれ……

 かと言って、引きずるわけにもいかないし……


 僕はベタつきときつい匂いに耐えながら、女の子を抱っこしてセーフスポットまで連れて帰った。

 

 女の子からなかなかの異臭がするというのも人によっては嬉しいかもしれないけれど、僕は分からなかった。

 

 やっぱり女の子からはいい匂いがしてほしい。

 なんかこう……いちごだったり。

 柑橘系だっていい。


 そんなことを考えながら、僕は少女を連れてセーフスポットの水場まで辿り着く。

 モンスターの体液は、水で洗い流すことができた。


 さて、一通り綺麗になって、改めて彼女を見る。


 

 黒いとんがり帽子の下からこぼれる髪は、夜明け前の空の色をしている。

 長い髪は編まれて肩へ流れ、ほどけた毛先が彼女の頬にかかっていた。

 

 整った顔立ちに、まだ幼さの残る輪郭。

 年齢は10歳くらいかな。

 今の僕と同じくらいだ。


 はっきり言って僕はロリコンではないので、これくらいの年齢の子でもまあいけなくもなくもなくもない感じだけれど、一応範囲外としておく。


 今度はステータスを見てみることにした。


 

 ──────────────

 【???】

 Lv:38

 体力:1 / 34

 魔力:200 / 230

 攻撃:15 /15

 防御:10 / 10

 速さ:10 / 10

 

 ??? Lv:?

 ──────────────


 

 レベルたっか。

 いや、人間のこのくらいの歳は皆こんなものなのかもしれない。


 僕のステータスが異常なのだ。


 だがそれよりも、体力があと1しかない。

 これが0になったら、彼女はきっと死んでしまうだろう。


 彼女自体の様子も、呼吸が浅く、苦しそうな状態だ。



「うーん、何か助ける方法はないものか……」


 

 何かないかと手元を探ってみるが、毒薬しかない。

 これじゃとどめを刺してしまう。


 だが、調合スキルは持っているのだ。

 毒薬を調合できたということは、その真逆の物質――――


 回復薬も作れるということ。



「この毒薬のステータス作用をなんとか逆にできれば――――」



 毒薬は対象の体力を減らす作用を持つ。

 その逆ができれば――――対象の体力を増やすことができれば――――


 僕は毒薬を両手に目を瞑り、イメージを膨らませた。


 体力ステータスを……増やす……!



 ══════════【 SYSTEM 】══════════

  スキル「回復薬生成」を取得しました。

 ═══════════════════════════



「やった! できた!」


 

 両手に持っていた毒薬は紫色から緑色に変わっていた。

 

 改めてステータスを見てみる。


 

 ──────────────

 【サクトシ】

 Lv:1

 体力:10 / 10

 魔力:10 / 10

 攻撃:5 / 5

 防御:5 / 5

 速さ:5 / 5

 

 鑑定 Lv:1

 自己鑑定 Lv:1

 釣り Lv:1

 毒耐性 Lv:1

 毒魔法 Lv:1

  猛毒 Lv:1

 調合 Lv:1

  毒薬生成 Lv:1

  回復薬生成 Lv:1

 ??? Lv:1

 ──────────────

 


 調合スキルの1つ下に、「毒薬生成」と「回復薬生成」が並んでいる。

 とあるスキルを派生させて、新たなスキルを取得することもできるのだ。


 僕はすぐに、倒れている少女の口から回復薬を飲ませた。

 すると、体力が増えていくのが見える。


 そして――――



「――――かはっ、ごほっごほっ!」



 少女は息を吹き返した。


 よかった。

 回復薬がちゃんと効いたようだ。



「大丈夫?」



 優しく声をかける。

 今の僕は、突如女の子を助けにきた白馬の王子様のように映るはずなのだ。


 はずなのだが。



「いや――――いやああああっ!!」



 突然、少女は何かを思い出したかのように怯え始めた。

 そんなに僕、キモい顔してたか……?


 いや、違うか――――


 

「落ち着いて! モンスターはもういないから」


 

 僕は、少女の肩を抑えてなんとか落ち着かせる。

 

 そりゃあモンスターの腹ん中に入っていたのだ。

 怖いに決まっている。


 彼女はしばらく震えていたが、やがて震えは収まっていった。

 危険は去ったのだと、徐々に理解していったのだろう。



「ここは……どこ……?」



 まるで詩を紡いでいるような、透き通った声を発する。

 長◯有希みたいな女の子だ。

 この例えももう通じなさそうだ。

 


「私……死んだんじゃ……ないの?」

 

「どうやら、生きているみたいだね」



 あんなカマキリの化け物に食われたら、そりゃあ死んだと思ってしまう。

 運が良かったのだろう。

 


「大丈夫、ここは多分安全だよ。モンスターは入ってこれないみたいなんだ」



 少女は辺りを見渡す。


 このセーフスポットは先ほどのダンジョンの通路のように、飲み込まれそうな暗闇も押しつぶされそうな緊迫感も存在しない。

 ただ少しの自然と平穏があるだけだ。


 少女もそれが分かって、少しホッとしたようだった。


 さて、僕も聞きたいことがある。



「君はダンジョンの外から来たのかな? どうしてあんなことに……」


「……」



 この先の見えないダンジョンで、僕以外の人間に出会えたことは僥倖だ。

 もしかしたら、外に脱出できる手がかりが見つかるかもしれない。


 少女は少しの間、押し黙った後、口を震わせた。



「私……捨てられたの……突然、怖い男の人に連れ去られて……気づいたら暗いところにいて……そして――――」



 少女は泣き始めた。

 なるほど、彼女にも色々と事情がありそうだ。



「私――――ただ、魔法のお勉強をしていただけなのに……急に強引に引っ張られて、モンスターの前に引き摺り出されて――――」


 

 うんうん、それはその男が悪いね。

 じゃあ――――


 

「――――とっとと、ダンジョンから脱出しないとね」



 僕はニカっと笑顔を見せる。

 彼女はそんな僕を目を丸くして見つめていた。


 そうだ。

 まず女性と知り合ったら、何をするか。


 自己紹介だろう。

 


「僕の名前はサクトシ。水もしたたるナイスガイだぜ!」


「ないすがい……?」


「いい男ってこと!」


「いい男……」



 こんなにピンとこないことある?

 僕がガーンといった表情を浮かべているのがコミカルだったのか、少女は笑顔になった。

 


「ふふっ……私はユリアだよ」

 


 花が咲いたような笑顔だった。

 少しは緊張がほぐれたなら、何よりだ。

 


「じゃあ、ユリアちゃん。君は知らない男の人に無理やり連れてこられたから、このダンジョンにどうやって入ったのか覚えてないってことだね?」


「うん……覚えてない」



 そうだよなぁ。

 出口がどの方向にあるかだけでも分かれば、ダンジョン脱出に大きく近づくのだけれど。


 彼女も必死だったんだから、これはしょうがない。


 

「モンスターは他にもいるの?」


「……いると思うよ」


「じゃあ、そいつらを倒しながらダンジョンを進まなきゃいけないわけだ」



 僕は苦い顔を浮かべる。

 なかなかしんどそうな道のりだ。

 


「……どうやって、マンティロスを倒したの?」


「マンティロス?」



 聞きなれない単語だ。

 

 あ――――もしかして、カマキリ野郎の名前か。


 

「毒を使ったんだよ」



 僕は懐に入れていた毒薬の瓶を見せる。

 禍々しい紫の液体がほんの一滴だけ入っていた。

 


「これがあれば、あのモンスターを倒すことはできるんだけど……僕の魔力が少なくてね、量産が難しいんだ」

 


 いや――――そうだ。

 

 そこまで言って、僕はハッと気づく。

 そして、目を凝らして、ユリアのステータスを再度閲覧した。


 

 ──────────────

 【???】

 Lv:23

 体力:34 / 34

 魔力:200 / 230

 攻撃:15 /15

 防御:10 / 10

 速さ:10 / 10

 

 ??? Lv:?

 ──────────────



 これだけの魔力があれば――――



「ユリアが毒薬生成のスキルを覚えてくれたら、量産できるんじゃないか……?」



 めちゃくちゃグッドアイデアなんじゃない?

 僕は期待を込めて、ユリアの方を見るが――――



「ごめん……それはできない」



 彼女は首を振った。



「私は魔法使いだから、魔法以外のスキルを覚えられないの」



 なるほど、そういうのがあるのね。

 確かに、「魔法使い」と「薬品の調合」はアンマッチなところがないでもないか。


 ――――じゃあ、どうして僕は覚えられるんだろう。

 まだ魔法使いではないからだろうか。


 まあ、それはともかく。

 


「そっか……じゃあ毒薬は結局僕が作らないといけないか。何か、僕の魔力を回復する方法があればいいんだけど――――ユリアは何か知らない?」



 もしかしたら、魔法使いの彼女なら何か知ってるかもしれない。


 彼女は首を傾げて、視線をふわりと宙に泳がせる。

 


「魔力を回復できるポーションがあるって……聞いたことがあるよ」



 ポーション!

 ファンタジーっぽい単語きた。

 

 もちろん、今この空間にはない。



「他には――――人の魔力を吸う魔法があるって……聞いたこともある」


 

 魔力を吸うか……!

 よく言うドレインってやつ?


 今の僕なら、そのスキルも覚えようと思えば覚えられるんじゃないか……?

 

 ということは――――

 


「じゃあ、ユリアから魔力を吸えばいいんだね」


「え……できるの?」


「やってみなきゃ分からないだろ? ほら早く吸ってみよう」


 

 ふむ。

 そうと決まればしょうがあるまい。

 ユリアちゃんから魔力を吸わなきゃならないのだ。



「な、なに……? サクトシ……?」


「いや、ちょっと吸おうかと」


 

 僕はユリアの方に近づく。

 距離を詰めると、なぜかユリアは後退りするのだった。

 


「ちょっとサクトシ……? 目が怖いんだけど……」


「どこから吸えるのかな……やっぱり口か!?」


「え、ちょ……どこ見て――――」


「それとも――――」


「サ、サクトシのえっち〜〜〜〜!!」



 ユリアの平手が僕の左頬にクリーンヒットする。



「あっふ〜〜〜ん!!」


 

 変な鳴き声と共に、僕の体は空中に吹き飛んだ。

 


 

読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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