第4話 お前、僕を弱いと侮ったな?
ダンジョン生活2日目。
あれから色々試して、レベルリセットや魔法について分かったことがある。
まず、レベルリセットの間隔は約1時間。
レベルリセットが発動すると、ステータスもレベル1の状態に戻るわけだが――――
ステータスが減っている場合も元に戻る。
つまり、魔法を使って、魔力を消費しても、1時間後には必ず10に戻っているということだ。
もしかすると、1時間以内に体力が0にならなければ、実質不死身なのかもしれない。
されど10なのでそもそもの耐久力が低いんだけれども。
そして、魔法についてだが、魔法で生み出せるのはステータスの鑑定が済んでいるもののみ。
すなわち、物質がどういうステータスであるかを把握していなければ生成できない。
例えば、核ミサイルを生成しようとしても、想像でこれくらいのステータスかな、では生み出すことはできないのである。
それから、魔法で水などの物質を生み出すことができたわけだが、動植物の生成はできなかった。
理由はおそらくステータスが変動するからだろう。
魚は泳げば、スタミナを消費する。
草木が動くことはないが、日々成長し、新陳代謝を繰り返す。
固定のステータスを再現するだけでは、動く生物は生み出せない。
もしかすると、魔力を送り続けることで、動植物を再現できるのかもしれないが――――
魔力が10しかない僕では、そんな芸当は無理であろう。
そんなこんなで、なんとなく自分のことやこの世界のカラクリの一部分を垣間見ることができてきたわけだが、未だにダンジョンを脱出できるようなスキルも方法も思いついてない。
強靭な肉体も作れず、強力な魔法も使えない。
そんな状態で、一体どうすべきか――――
「まあとりあえず――――獲ったど〜〜!!」
僕は手に持ったものを空中に掲げる。
僕が鷲掴みしている魚は、ピチピチと尾ヒレをばたつかせていた。
══════════【 SYSTEM 】══════════
スキル「釣り」を取得しました。
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おお、こういうのもスキルとしてあるのね。
スローライフ系のファンタジー小説だったら、重宝しそうなスキルだ。
そう――――僕には今、ダンジョンの脱出なんかよりも重要な問題があるのだ。
果物に飽きた。
昨日から食べ物は木に実っている謎の果実しか食べていない。
不味くはないが、さすがにもっと塩辛いものが食べたい。
というわけで、釣りである。
「では早速、捌いていただくとしますか〜〜!」
僕はそのあたりに落ちていた冒険者のナイフで、獲物を調理することにした。
アジのような魚だ。
銀色から青色にグラデーションのかかった鱗に、DHAが詰まってそうな大きな目玉。
これで食べられない魚ということもないだろう。
これでも、女の子にモテるという噂を聞いたそれだけの理由で、三枚おろしを無駄に練習していたのだ。
まだ見せる機会は来てないのだけれど。
期待に胸を膨らませ、魚に刃を入れようとする。
その時だった。
チクッ――――
「――――痛っつ」
突如、鋭い痛みが手のひらを襲う。
ナイフで誤って手を切ったわけではない。
もっと、小さい針のようなもので刺されたような……
僕は痛みの走った手のひらを見てみると――――
紫色の棘のようなものが、刺さっていた。
その瞬間――――凄まじい痛みと痺れが左腕に走る。
「――――――あああああっ!?」
腕が、内側から焼かれるように疼いた。
血管が痛みとともにドクドク脈撃ち、痙攣する。
同時に――――視界が揺れ、世界が傾く。
立っているはずなのに、地面が遠ざかる感覚に、意識が追いつかない。
喉の奥が引き攣り、胃が裏返るような吐き気が込み上げた。
「がはあっ……!」
これって――――まさか毒……?
ただの魚だと思って油断してしまった。
こいつは、こんな必殺の武器を隠し持っていたんだ。
──────────────
【サクトシ】
Lv:1
体力:4 / 10
魔力:10 / 10
攻撃:5 / 5
防御:5 / 5
速さ:5 / 5
鑑定 Lv:1
自己鑑定 Lv:1
釣り Lv:1
??? Lv:1
──────────────
まずい……
体力が減っていく。
4……3……2……とまるでカウントダウンのように――――
これが0になれば、死ぬんだということは容易に想像ができていた。
僕の意識も……段々……朦朧に――――
══════════【 SYSTEM 】══════════
レベルがリセットされます。
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「――――ぷはあっ!! はあっはあっ……!」
突然、意識が浮上して、体が飛び起きる。
急いで僕は自分の手のひらを確認すると、刺さっていた棘は抜けていて、元通りになっていた。
そっか――――
レベルリセットで、体力も毒状態もリセットされたのか……!
「あぶねえ〜〜〜〜」
死ぬかと思った。
今回ばかりは、レベルリセットに助けられた。
まさか、魚が毒の棘を持っていたなんて……
こんな小魚でも、ダンジョンの生物だったということか。
危うく、文字通りの雑魚にジャイアントキリングされて、僕の異世界生活が終了を迎えるところだった。
「――――待てよ……?」
この魚は、基本的には泳いで逃げることしかできないただの魚だ。
捕食される側である。
そんな魚が、捕食者である僕を殺す寸前まで追い込んだ。
これなら――――
僕も、あのモンスターに勝てるんじゃないか……?
══════════【 SYSTEM 】══════════
スキル「毒耐性」、「毒魔法」を取得しました。
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* * *
ダンジョンに蠢く黒い影。
ヒタヒタと、不気味ながらも質量のある足音を立てて闇の中を徘徊する。
『ギチ、ギチギチ……』
大顎を動かして奇妙な鳴き声をあげるのは、「マンティロス」というモンスター。
人型の体に緑色の甲殻がを持ち、鋭い爪と牙を持つ。
虫系モンスターに分類される種族である。
肉食であり、人間を含めたどんな生物もこのモンスターの捕食対象だ。
冒険者でもかなりの警戒をしながら対処すべき魔獣である。
「――――おい! そこのクソ野郎!」
そんなマンティロスのテリトリー、ダンジョンの通路のど真ん中で、誰かが叫ぶ。
マンティロスは、ギョロリと振り向いた。
「あ、女だったらごめんな。でもクソ野郎」
そこには、小さい人間がただ一人で立っていた。
マンティロスはその時、こう思った。
またカモが来た――――と。
冒険者がしっかりと準備をしなければ討伐できない個体。
そんなモンスターに、たった一人の子供が相対している。
無謀という他ない。
しかもこの人間は数日前と同じ個体だ。
スキル「超進化」を使ったところで、怖気ついて逃げいった。
弱いやつだ。
『キシャアアアアアッ!!』
咆哮とともに、マンティロスはターゲットに向けて飛びつく。
逃げる隙を与えないように、一瞬でだ。
前回とは違い、今回はいとも簡単に捕まえることができた。
『ギチ、ギチギチ……』
両手で逃がさないように、けれども潰さないように子供の体を握る。
こういう身の程知らずな奴は生きたまま頭から齧り付いてやるのさ。
大きな顎を開き、人間を捕食しようとした、その時――――
「お前、僕を弱いと侮ったな?」
チクッ――――
突如、鋭い痛みが手のひらを襲う。
小さい針のようなもので刺されたような痛みだ。
マンティロスは痛みの走った手のひらを見てみると――――
紫色の液体が塗られたナイフが、刺さっていた。
『キ、キシャアアアアアッ!! ガアアアアアアアアアッ!!』
マンティロスの体を、凄まじい苦痛が駆け巡る。
炎が皮膚の下――――骨の髄から吹き出すかのような猛烈な痛み。
マンティロスの意識がなくなるのに、そう時間はかからなかった。
* * *
「よかったあ〜〜! ちゃんと効いたわ!」
モンスターが腕を抑えたまま、のたうち回っている。
作戦成功の何よりの証だ。
ダンジョン生活五日目。
今の僕のステータスはこんな感じ。
──────────────
【サクトシ】
Lv:1
体力:10 / 10
魔力:10 / 10
攻撃:5 / 5
防御:5 / 5
速さ:5 / 5
鑑定 Lv:1
自己鑑定 Lv:1
釣り Lv:1
毒耐性 Lv:1
毒魔法 Lv:1
猛毒 Lv:1
調合 Lv:1
毒薬生成 Lv:1
??? Lv:1
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順調にマッドサイエンティストの道を歩みつつある。
毒魔法を覚えてから、僕は如何にその毒を強化するかに尽力した。
モンスターに使ったとして、一撃で仕留められなければ、返り討ちに遭ってしまう。
作成した毒薬のステータスを見ながら、色々と試して効力を高めていったのだ。
また、魔力を物質に使用した場合、レベルリセットされても、その効果は失われず、上乗せされるというのもいい発見だった。
おかげでモンスターにも対抗できる毒を作ることができたのだ。
「問題は――――この毒を量産する方法だな……」
先程使用した一滴の毒を作るのに、五日かかったのだ。
20個作るとして100日。
なかなかしんどい日数である。
そもそも、このダンジョンにどれだけのモンスターがいるか分からないのだ。
20個でも足りない可能性だってある。
いい感じのスキルを習得して、生産スピードを上げられればいいんだけど……
「――――ん?」
僕が次なる問題に向けて思案に耽っていると、影が僕を覆い尽くす。
毒を盛ったモンスターがフラフラとこちらに近寄ってきていたのだ。
そして、僕に向かって、何かを吐きかけた。
『ゲロロロロロロ――――』
「う、うわっ!?」
なんとか僕はそれを避ける。
何か質量のある物が僕のすぐ隣を掠めて、落ちていった。
モンスターはそれを最後に動かなくなったが、僕の視線はそれよりも吐いたものの方に向けられた。
「こ、これは……!?」
モンスターが吐いたのは――――
魔法使いの女の子だった。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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