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第79章:時計塔の解析機と、電子の鳥籠


忘れられた塔へ


地下深くで入手した「8インチフロッピーディスク」。

その巨大なディスクを読み込める機械は、現代のパソコン室にはない。

「……心当たりがある。『時計塔』だ」

加藤校長の案内で、俺たち探索チームは時計塔の最上階へと登った。

そこには、埃除けの布を被った巨大なレトロ・コンピューターがあった。

「動くか……?」

校長が電源を入れると、ヴゥゥン……という低い駆動音と共に、画面に文字が走った。

『SYSTEM: TORIKAGO ver.1.0』

俺は震える手で、フロッピーをドライブに差し込んだ。

魂のファイル

画面に、ファイルリストが表示された。


『FILE_001: SAKURAKO_MEMORY.DAT』

『FILE_002: GARDEN_SYSTEM.SYS』


「……あった。櫻子先輩のデータだ」

俺(古田降太)は震える手でキーボードを叩こうとした。

しかし、画面がザザッ!とノイズを走りらせ、文字化けした文字列が滝のように流れ始めた。

『ERROR... ERROR... MISSING LINK...』

「くそっ、読み込めない! データが古すぎるのか、破損しているのか……」

玄田先輩がモニターを叩くが、砂嵐は収まらない。

その時だった。

「……どれ、貸してみなさい」

後ろで腕組みをしていた加藤校長が、静かに歩み寄ってきた。

「校長? でもこれ、機械的な故障じゃ……」

「いや。……なんとなく、呼ばれている気がするんじゃ」

校長はそう言うと、モニターの前に立ち、ゆっくりと目を閉じた。


1. 10秒間の共鳴


校長は、祈るように、あるいは何かを探るように、深く息を吸った。

1秒。2秒。3秒……。

部屋の空気が張り詰める。

モニターの砂嵐が、校長の呼吸に合わせて脈動しているように見える。

5秒。6秒。

(……先生?)

俺が声をかけようとした時、画面のノイズが一瞬だけ晴れた。

緑色の文字列が再構成され、一つの新しいファイル名が浮かび上がった。

『FILE_000: KATO_KITARO.灵魂 (SOUL)』

「ッ!?」

俺と玄田先輩は息を飲んだ。

櫻子先輩のデータの中に、なぜ校長の名前が?

しかも「灵魂(魂)」なんて、不穏な拡張子がついている。

8秒。9秒。10秒。

校長が、カッ! と目を見開いた。

1. 予感

「……ふぅ」

校長は大きく息を吐き、額の脂汗をハンカチで拭った。

画面は再び、元のファイルリスト(櫻子先輩のデータのみ)に戻っていた。

まるで、幻を見たかのように。

「……古田くん」

校長が、低く、重い声で俺を呼んだ。

「はい」

「……今、ワシの名前が見えなかったか?」

校長は画面を指差した。その指先は、珍しく震えていた。

「ワシ……この中に入ってたか?」

その問いかけに、俺は言葉に詰まった。

見えた。確かに見えた。

でも、それを肯定していいのか分からなかった。もし肯定すれば、校長が「人間ではない何か」になってしまうような、そんな予感がしたからだ。

「……いえ。ノイズで、よく見えませんでした」

俺は嘘をついた。

校長は俺の顔をじっと見つめ、それから「そうか」と短く言って、ニカっと笑った。

「ならいい。……老眼で見間違いをしたかもしれん。忘れてくれ」

校長は笑っていたが、そのサングラスの奥の瞳は、何かを悟ったように静かだった。

自分がこの一連の怪異システムに、ただの部外者としてではなく、「当事者パーツ」として組み込まれている可能性に気づいてしまったのかもしれない。

「さあ、急ごう。櫻子くんのデータを救い出すんじゃろ?」

「……はい!」

俺たちは作業を再開した。

時計塔の針が動く音が、やけに大きく聞こえた。

それはまるで、校長の「人間としての時間」のカウントダウンのようだった。

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