第77章:新学期の極秘指令と、空白の設計図
4月上旬、始動
新学期が始まり、桜が満開を迎えていた4月上旬。
新入生の安倍清和がボランティア部に入部した数日後。
俺、古田降太は、校長室に呼び出されていた。
「座れ、少年。コーヒー飲むか?」
加藤校長は、いつものアロハシャツ姿でソファに座っていた。
新年度の忙しさを感じさせない、飄々とした態度だ。
「今日は何の用ですか? 新入生歓迎会の準備とか?」
「いや。もっと重要な話だ」
校長はサングラスを外し、真剣な眼差しで俺を見た。
「『8番目のアーティファクト:コア』のことだ」
ドキッとした。
1年生の夏以来、手詰まりになっていた案件だ。
進級し、新しい仲間も増えた今こそ、動く時だということか。
「時間は待ってくれん。……今年こそ、本気で探すぞ」
校長は、机の引き出しから、古びて黄ばんだ大きな紙を広げた。
呪われた設計図
それは、この学校の「旧校舎の設計図(青焼き)」だった。
昭和初期の日付が入っている。
「春休みに理事会の倉庫を整理していたら出てきた。建設当時のオリジナルだ」
校長は、設計図の一点を指差した。
そこは、俺たちがいつも出入りしている「園芸部(準備室)」の地下にあたる部分。
その箇所だけ、不自然にインクが滲み、「空白」になっていた。
「ただの汚れ……じゃないですね」
「うむ。ここだけ『意図的に情報を消された』形跡がある。霊的な隠蔽工作だ」
校長は声を潜めた。
「この地下の空白地帯。ここに、我々がまだ到達していない『真の深層』がある」
専門家の召喚
「なるほど。……なら、適任がいますよ」
俺はスマホを取り出した。
「つい先日入部した、優秀な後輩がいましてね」
数分後。
呼び出された安倍清和が、おずおずと校長室に入ってきた。
背後には守護霊の九もいる。
「失礼します……。あの、僕、入部早々何かしましたか?(ビクビク)」
「安心しろ安倍。今日は校長先生からの極秘依頼だ」
俺は設計図を安倍に見せた。
「この図面を見て、何か感じるか?」
安倍は怪訝な顔で図面を覗き込み、次の瞬間、眉をひそめた。
「……うわ、臭っ」
「臭い?」
「インクの匂いじゃないです。『隠蔽』の術式の臭いがします。これ、かなり高位の術者が、意図的に『認識阻害』をかけてますよ」
コアへの道しるべ
安倍の分析は的確だった。
この設計図は、地下への地図そのものが「結界」で守られていたのだ。
「解除できるか?」
「やってみます。九、手伝って」
『あいよー!』
安倍は指で空中に五芒星を描き、九尾の狐が尻尾で図面を撫でた。
「オン・アビラウンケン……解ッ!!」
ボワッ!
図面から黒い煙が上がり、霧散した。
すると、空白だった部分に、赤インクで書かれた「小さな部屋」と、そこへ続く「隠し通路」が浮き上がってきた。
「出た……!」
「場所は……地下広場のさらに下、『配管室』の奥か!」
校長が拳を握りしめた。
「でかしたぞ少年たち! これで『コア』への道が開けた!」
「へへっ、これくらい余裕っすよ」
安倍が得意げに鼻をこする。
「よし。今週末、探索チームを結成して突入だ。花見の前に、一仕事終わらせるぞ!」
こうして、2年生になって初めての、大規模な「コア探索ミッション」が始まろうとしていた。




