第67章:学年末テストの悪夢と、桜の蕾
与市先生の宣告
3月上旬。1年生最後の試練、学年末テストが迫っていた。
放課後のホームルーム。
数学担当の与市星一先生が、教壇で黒板を叩いた。
「いいか、お前ら。義務教育に留年はない。どんなにアホでも2年には上がれる」
先生はニヤリと笑った。その笑顔は、完全に捕食者のものだった。
「だが、**『赤点』を取った者には、春休みを返上しての『地獄の特別補習・パート2』**を受けてもらう。……夏休みのあれよりも、さらに濃密なやつをな」
「「「ひいいいいっ!!」」」
俺(古田)と赤城烈兎は、抱き合って震えた。
あの夏の地下合宿。あれ以上の地獄があるというのか。
春休みは「コア探し」の作戦会議や、進級の準備で忙しいのに、補習になんて捕まっていられない!
「やるぞ赤城! 絶対に回避だ!」
「おう! 俺の直感ですべてをかわしてやる!」
最後の悪あがき
テスト期間中。
俺たちは、図書室に籠もって勉強をした。
メンバーはいつもの4人(古田、赤城、なのは、塩原)。
「塩原さん! この漢文の意味を教えて!」
「赤城くん、そこは『レ点』よ。……古田くん、理科の電流は?」
「……右ネジの法則が、俺の脳内で迷子になってる」
必死だ。
今回は、裏世界(園芸部)への逃げ込みは封印した。
櫻子先輩に「テスト勉強? 頑張ってね(ハート)」と応援された手前、ズルはできない。自力で乗り越えてこそ、胸を張って2年生になれるというものだ。
そして、テスト当日。
俺はシャーペンを握りしめ、問題用紙に向かった。
与市先生の顔が浮かぶ。
(計算しろ……生き残るための計算を……!)
カリカリカリ……。
教室に、鉛筆の音だけが響く。
審判の結果
1週間後。テスト返却。
「古田。……数学、45点」
与市先生から答案用紙を渡される。
平均点は60点。赤点ラインは30点。
「……セーフ!!」
「チッ。ギリギリで生き残ったか。つまらん」
先生は舌打ちしたが、その目は「よくやった」と笑っていた(気がする)。
赤城も、なのはさんも、塩原さんも、全員なんとか赤点は回避した。
「やったー! 春休みは自由だー!」
俺たちは廊下でハイタッチをした。
これで、心置きなく進級できる。
卒業の予感
放課後。
俺は報告のために、旧校舎の裏へと向かった。
校庭の桜の木には、まだ固いが、ふっくらとした**蕾**がついている。
(もうすぐ、春か……)
春は、出会いと別れの季節だ。
俺たちが2年生になるということは、お世話になった3年生の先輩たちが、この学校を去るということだ。
ボランティア部の頼れるリーダー、玄田宇宙部長。
オカルト部を支配する中二病の女王、四方山ヨミ部長。
彼らはもうすぐ卒業し、それぞれの進路へ進む。
校内からいなくなれば、もう頻繁には会えなくなるだろう。
「……寂しくなるな」
俺は百葉箱の前で立ち止まった。
櫻子先輩は、ここに残る。
卒業していく生徒たちを見送り、新入生を迎え、ずっと変わらずここにいる。
「先輩。……俺は、進級しますよ」
俺は百葉箱に手を触れ、小さく呟いた。
今はまだ、会わないでおこう。
終業式の日、通知表(と無事だった数学の答案)を持って、胸を張って会いに行こう。
風が吹き、桜の枝が揺れた。
俺たちの1年間が、もうすぐ終わろうとしていた。




